ミリスお嬢様には逆らえない
福山典雅
序
トリスティアナ王国・国史編纂特級書史に寄せて
余はトリスティアナ王国・国史編纂室の室長ロイドである。
我が国その長き歴史を万世に刻むれば、竜の雲を得たるが如く、傑物万斛と湧きいで、しかるに 曠然たる此の大陸にて、稀有なる栄華繁栄を極めるに至る。
以て静穏安寧たる治世に及ぶ道程、正しく紐解くを鑑みるに、歴史改竄を是とせず、真実のままに有体残したるは国史編纂室が大志の賜なり。
我、六十有余年に及び、この編纂室にて魔光燈の発する灯りを友とし、その晴れがましき叡智栄達を知るに、以て至上の悦び琴線を震わしめ、記し込めたる幾千言、国史全編を尊ぶは偽らざる真意なり。
しかるに、老境に達する時節なれど、感服を越え、動揺覚え、我が心胆寒からしめた後、奥妙なる懇篤を秘すを知るに至り、万感胸に迫る者現れし。
其の者、公爵家御令嬢にして名は、ミリス・ビスタグス嬢という也。
余はかの御令嬢巻き起こしたる神変驚愕の為業、その全貌深淵を記すを悟り得たるは、これ国史編纂の僥倖なり。
感涙を以て迎えし我が筆、望外の喜びを覚ゆ。
嗚呼、尋常の世を厭ひ、堕落し正しきより銷鑠縮栗せし輩多く、 軽慮浅謀なる愚略に溺れし諸貴族、非道悪逆の愚劣なる不届き者。
所業嫌悪を極まりしが、しかるに多くの憤り悲しみ消えぬ憂い生み出したる輩とその睥睨す地平にありて、不撓不屈を越え、雷鳴の如く仙才鬼才轟くミリス嬢が歩み、無上の歓喜重畳を以て余は綴りける。
ここに快然沖融たるトリスティアナ王国・国史編纂特級書史
「ミリスお嬢様には逆らえない」
幕開を大いに告げたる。
此れ、史実を超ゆる誠なり。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます