第6話【神再誕。】
【屋敷】
離れで3匹が儀式を始めた頃、下の屋敷では
ヨト
「つまり?新しいモノとして生まれ変わらせるためにシャイニーエンペラーの身体の一部と魂で種を作ってそれを
銀鈴
「
ヨト
「なんかでも離れの中の気配さっきと全然違うよ?」
銀鈴
「
ヨト
「ふーん?すごいんだ。どうした?カティリア」
カティリア
「え、ううん、な、なんでもないよ…///」
「カティリアくーん。なんか食べ物なぁい〜?」
カティリア
「∑は、はいっ!食べ物ですね!」ビクッ
袮雪
「?どうしたの」
「いや、そっちがどうしたよ」
袮雪
「吹雪に気が散るからどっか行けって言われて。もぉやぁよねぇあの夫婦。いつまでも新婚みたいに仲良くて」╮(´・ᴗ・` )╭
天花
「だっはっはっはっはっwww」
銀鈴
「カティリアさん。申し訳有りませんが、何か食べ物を頂けませんか?」
カティリア
「あ、は、はい!!ただいま!!///」ガタガタッ
銀鈴
「……。御怪我されるといけないので御手伝い致します」
なんだかぼんやりしているカティリアの後を追って銀鈴も炊事場へと向かった。
【炊事場】
カティリア
「すぐに食べられる物は、と。パンと豆のスープぐらいでしょうか。火妖精さん温めていただけますか」
銀鈴
「妖精とは優れた種族ですね」
カティリア
「そうですね。とても優れた隣人です」
銀鈴
「隣人。よい呼び方です」
カティリア
「はい…」(,,. .,, )ソワ…
銀鈴
「私が居ては落ち着きませんか」
カティリア
「!い、いえ!そうではないのですっ…ただ、慣れていなくて…というか、皆さん落ち着き過ぎでは?」
銀鈴
「然うでしょうか?感覚が麻痺してしまっているのかも知れませんね」
カティリア
「あの、銀鈴さんは奥様はいらっしゃるのですか?」
銀鈴
「居りません。結ばれているのは吹雪様と牡丹様だけです」
カティリア
「もし、天花さんが奥様だったらどうでしょう…なんて」
銀鈴
「天花様ですか。然うですね。もう慣れましたが振り回されてさぞ大変でしょうね。私はもっと従順で
カティリア
「へ?」
銀鈴
「おや、お鍋温まったみたいですね」
一人分をよそって袮雪の元へと戻る。
カティリア
「お待たせしました。これしか無くてすみません」
袮雪
「ありがとぉ!全然良いよ!いい匂い〜!いただきまーす!」
袮雪が食べ始めたのを見ながらカティリアは何となく気になった事をぽろりと聞いてみた。
カティリア
「あの天花さんと袮雪さんは結ばれるならどんな相手が良いとか、理想とかってあるんですか?」
袮雪
「え?奥さん?んー…」モグモグ
天花
「オレより強い!金持ち!王気がある!好い男なら尚良し!」(◦`꒳´◦)
袮雪
「あはっw お
カティリア
「…意外です。いや、天花さんはらしいというか。袮雪さんも天花さんみたいな感じなのかと思いました」
袮雪
「え〜?俺どう見えてるの〜?」クスクス
カティリア
「ふふ。すみません。ヨトはどんな奥さんがいい?」
ヨト
「俺?あんまり構い過ぎない奴がいいかな。ほっといて欲しい」
カティリア
「なにそれ」クスクス
天花
「てか急にどうしたよ?そんな話聞いて」
カティリア
「あ、いや、銀鈴さんの理想の奥様が意外過ぎておふたりはどうなのかなって、気になってしまって」
袮雪
「なんて言ったのよお銀ちゃん」モグモグ
銀鈴
「従順で躾甲斐のある方、とお答えしました」
袮雪
「あらぁ」
真反対の答えしちゃって…。
天花
「なんだそれwww」
銀鈴
「私が青春時代、
天花・袮雪
「「………」」(´・ω・`)(´・ω・`)スン…
カティリア
「え?おふたりともどうなさったんですか?」
袮雪
「そっかぁ。お銀ちゃんはそっち行っちゃったかぁ…」
天花
「…オレは
銀鈴
「
袮雪
「あぁいや、俺も化粧臭い女の人は嫌いになったし、ガンガン押してくるのも遠慮したいよ…」
異世界組みの空気がすんとなったのが不思議なカティリアとヨト。
ヨト
「あんたら何の話してんの?」
銀鈴
「子供時代の修行の話です。丁度、ヨトさんの歳の頃じゃなかったでしょうか」
袮雪
「そうかも」
天花
「オレもそうだったかも」
ヨト
「修行?」
銀鈴
「異性に惑わされない為の修行、異性を惑わす為の修行です」
ヨト
「どういうこと?」
吹雪
「…茶屋や遊廓に行って本業の方に手練手管を仕込んでもらうんです。色を使う他の妖に喰われない為に、逆にこちらがあちらを喰う為に」
袮雪
「∑ぶっ!?ふっ、ぶき!?え!?なに!?どうしたの!?!?!?」
吹雪
「あぁ。私もあれも紋を解放しているので陣を壊してしまいました」
袮雪
「やっぱりふたり同時に紋解放すると強烈だな。すぐ敷き直しに行くから部屋戻ってて」
吹雪
「もう少し強めのを敷いてください。わりと早い段階でひび割れたので」
袮雪
「わかったわかった!!わかったから!!あんまりちび達の前でその格好でうろつかないで!!お願い!!;;;」
吹雪
「?わかりました」
不思議そうにしながら吹雪は静かに戻って行った。
普段はしっかりぴっちり着込んでいる着物。今はゆったりした履き物を腰で緩く履き、上裸に羽織を軽く羽織っているだけだった。パンと豆のスープをかき込んで袮雪も離れへと向かった。
カティリア
「…」(,,. .,, )ソワ…
ヨト
「意外とがっしりしてんのね。あの人」
銀鈴
「ですから吹雪様は思い通りに身体を使いこなせた戦い方が出来るのですよ」
ヨト
「へぇ?俺も筋トレしたらできるようになる?」
銀鈴
「
ヨト
「ふーん?でさぁあ?茶屋とかゆうかく?ってなに?」
銀鈴
「おや。まだ続いていましたか其の話」
ヨト
「だって俺もっと強くなりたいし。東国の修行方法とか気になるじゃん」
銀鈴
「然うですか。茶屋は低級の、遊廓は高級の遊女が居る店です。遊女とは身体を使って商売をする方で、つまり致す店です」
天花
「説明がどストレートだなおい」
銀鈴
「他に御座いますか」
天花
「…………。無ぇな!」カッカッカッ
ヨト
「それ、
天花
「おん?まぁな」
ヨト
「女が居る店なんでしょ?」
天花
「あぁ。俺は
ヨト
「身体で商売する男ってこと?」
天花
「まぁそうだな。客は女も居るが男が多いな。なんたって男娼はそこらの女よりよっぽど美しい男が揃ってるからな」
ヨト
「深いなすけべの世界…」
天花
「オレは國で一番の高級遊廓の最高級遊女に習ってたんだ」
ヨト
「あれ、さっきの吹雪ってひとが修行みてたんじゃないの?」
天花
「いやいや。さっきプロに習うって言ったろ。それに吹雪は國中の茶屋遊廓を出禁になった
ヨト
「出禁?なんで?」
銀鈴
「吹雪様は御自身の強過ぎる霊力と精で遊女を潰してしまっていたのです」
天花
「それでも初めの頃は、吹雪も金持ってたから店側も上客だと喜んでたんだ。ただどんな遊女も一回で潰れちまうってんでよ、商品の女壊されちゃたまんねぇから吹雪は出禁になっていったんだと」
ヨト
「一回で?そんな激しいの?てかあの牡丹さんは大丈夫なの?」
銀鈴
「激しいか如何かは分かりませんが。吹雪様と牡丹様は
ヨト
「じゃあ壊れないの?」
銀鈴
「いえ、そんな事は有りません。吹雪様は極端に寄った槍型の男性です。牡丹様と同じく特殊な血を持つ最上位の槍型です。ですので今までにも何度か牡丹様を傷付けてしまった事が有るそうです。ですが、吹雪様は牡丹様を最も愛する方、故に普段は傷を付けぬ様にと接してらっしゃいます。同様に牡丹様も最も吹雪様を愛する方です。吹雪様の意図せぬ強い力を受け止められる様に普段から修行為さって居ます」
ヨト
「んー…愛だの恋だのはわかんねぇな」
自陣を作成しに行った袮雪が頭を抱えて戻って来る。
天花
「なんだ。用が済んだらまた追い払われたのか」カッカッカッ
袮雪
「え?あぁ、うん。まぁ、そうなんだけど。あれ、牡丹の中に他の男が居るのが気に入らなくて、吹雪が無意識に力解放し過ぎて陣破壊してるんだわ」
ヨト
「牡丹さん大好きかよ」
天花
「大好きなんだよ」
袮雪
「こんな、何度も自陣作成してたら俺死ぬわ…|||」
銀鈴
「困りましたね。氷雪系の、
天花
「カミサンに早く出て来てもらうしかねぇなぁ。吹雪意外と気が短いし」
銀鈴
「…何か吹雪様の気を落ち着かせる方法は無いのですか?」
袮雪
「…ん?なんか、あった気がするな…母上が…あれ、父上だったか…?」
うーんと唸りながら遥か昔の記憶を呼び起こす。
母上
『―いいですか、袮雪』
父上
『吹雪が牡丹ちゃんに対して暴走した時は―…』
袮雪
「あー!思い出した思い出した!」
「確か荷物の中に」とか何とかぶつぶつ言いながら荷物を漁る。取り出したのはお茶のセット一式と何やら小さな丸薬、そして煙草と煙管。
袮雪
「あったあった!父上母上ありがとうございます!」
天花
「なんだぁ?」
銀鈴
「おや此の香りは
袮雪
「そうそう。これは幽芳廓でも一番吹雪が好んで飲むお茶なんだ。こっちは母上が吹雪の為に調剤した丸薬。あとは…これ!吹雪が昔好んで吸ってた煙草とお気に入りの煙管」
銀鈴
「茶器も揃っていますね」
袮雪
「これ、幽芳廓から特別に譲って貰ったんだってよ。
銀鈴
「落ち着かれると良いですね」
袮雪
「だねぇ。鬼帝と鬼妃の強い神気が無いときっと神竜様なんて宿せない。ふたりには頑張ってもらわないと」
カティリア
「…っあの」
袮雪
「うん?」
カティリア
「あのっ、ボクにできることがあればなんでもどんどんおっしゃってください!皆さんばかりに負担をかけるわけにはいきませんから。っだから」
袮雪
「ありがとうカティリアくん。今はまだ大丈夫だよ」
カティリア
「でも…」
袮雪
「もし無事に牡丹の中に神竜様が宿ったら、その時は美味しいご飯いっぱい食べさせてあげてよ」
カティリア
「もちろんです!ですが、それで良いのでしょうか…ボク、あまり役に立てていないですよね…。神様代理なのに…」
袮雪
「食事は大事よ?子を宿した母親は特に。二人分の栄養が必要だしね。病弱な神竜様とかもう目も当てられないでしょ」
カティリア
「!それは困ります」
袮雪
「でもそれまでは、無事に種子が宿るように祈るしかないかなぁ」
銀鈴
「きっと御二人共、神気も霊力も惜しみなく注いでいるでしょうから、美味しい食事は喜ばれると思いますよ」
袮雪
「そーそー!でもカティリアくん宛の捧げ物だけじゃ足りないし、負担になるから俺とちび達で食材探してくるよ。その時はカティリアくん手伝ってくれる?」
カティリア
「もちろんです!///」
天花
「…」
袮雪
「どうしたのお姐ぇ?別にお姐ぇの分減らしたりしないよ?」
天花
「ったりめぇーだ。そんなことしてみろ。ボッコボコにしてやるからな」( ・᷅-・᷄ )
袮雪
「あらこわいw」
それから少し談笑をして寝静まった屋敷。浮き島に面する階段に腰掛けて神域の景色を眺める天花。なんとなく感じる違和感について考えていた。
天花
(アイツ、なんであんな笑い方しかしねぇんだろうな)
袮雪
「おー姐ぇ」ヒョッコリ
天花
「…ふたりは?」
袮雪
「寝たみたい。久しぶりのふたりだけの時間だし。そのままそっとして来た」
天花
「そ」
袮雪
「なーんかさ」
天花
「ん?」
袮雪
「カティリアくんて心配になっちゃうよね」
天花
「だな」
袮雪
「ま、見当は付いてるんだけど」
天花
「んじゃオマエに任すわ。オレにはきっとどうしてやる事もできねぇだろうからな」
袮雪
「うん」
天花
「んじゃオレも寝るかね」
袮雪
「それがいいよ。きっと明日は目を覚ましたちび達が遊びたがるから」
天花
「なぁにして遊んでやるかな」
「ふふ」と笑みをこぼしながら天花は寝床へと戻った。
袮雪
「…さて、それじゃあ俺は散歩でもして来るかな」
「一緒に行こう」と振り返るとまだ少し寝ぼけ顔のカティリアが目を擦りながら立っていた。
カティリア
「さんぽ、ですか…?まだ夜明け前ですよ」
袮雪
「そ。俺も神経使う作業ばっかりだから気晴らしにね。カティリアくんはきっと布団に戻るお姐ぇが起こしちゃったんでしょ」
カティリア
「いえ、布団を間違えたみたいで。ボクの布団に入って来てそのまま寝ちゃいました」クスクス
袮雪
(やり方よ)
笑いながらカティリアを手招きして自分の着ていた羽織を着せてやる。
袮雪
「夜明け前で冷える頃だから貸してあげる。行こうか」
カティリア
「はい」
ふたりは他愛もない話をしながら御神洞を出て薄暗い草原を歩く。
袮雪
「ね、カティリアくん。あの木登ったことある?」
カティリア
「木登りですか?経験無いですね」
袮雪
「俺さっきこの木登ったんだけど、景色がすごい綺麗だったんだ」
カティリア
「ふふ。木の上から見る景色はどんな景色なんですか?」
袮雪
「はい!じゃあ一緒に見に行こう!しっかり掴まっててね!」
カティリア
「!?え、わっ!?///」
突然抱き上げられたカティリアはとっさに袮雪にしがみついた。袮雪は一度高く飛び上がると木の幹を蹴り、枝の上まで跳ねて進み、あっという間に見晴らしの良い高さまで登って着地する。そのまま器用に「よっこいせ」とあぐらをかいた。
袮雪
「はい!到着!」
カティリア
「すごい…あっという間にこんな高い所に…///」
袮雪
「俺、木登りも得意なのよ」( ´罒`*)✧"
カティリア
「そうなんですね。っ冷えますね。袮雪さん大丈夫ですか?」
袮雪
「うん?大丈夫だよ。ありがとぉ。俺もっとずっと寒いところで生まれ育ったから平気平気」
カティリア
「そうなんですか?」
袮雪
「そうなの。一年中空は曇ってて雪が降ってて。あ、雪ってわかる?こういうのなんだけど」
カティリア
「わぁ/// これが空から降ってくるんですか?」
袮雪は手のひらにふわふわと舞う雪を発現させる。
袮雪
「そう。触ってみて?けっこう冷たいんだよ」
カティリア
「ほんと!冷たいです!」
袮雪
「これが降り積ってるから気温もすごく低くてね。人の吐く息が白くなるんだよ」
「今度は俺の術でもっとたくさんの雪を見せてあげるよ」と言って笑う袮雪。そうして会話は途切れて穏やかな波の音を聴きながら白んできた空とだんだんと薄くなっていく月、弱い月明かりを優しく返す海を眺めた。海風がふたりを撫でていく。その度にカティリアは微かに身体を縮こめた。
袮雪
(また、我慢してる。全然迷惑なんかじゃないのに)
―ぎゅ…。
カティリア
「!袮雪さん?」ビクッ
袮雪
「やっぱり羽織り一枚じゃ寒かったね。寒いならちゃんと言ってね」
脚の上のカティリアを優しく包むように抱き締める。カティリアは一瞬びっくりしたものの大人しく抱かれていた。
カティリア
「?さっき…」
袮雪
「あれはカティリアくんの事じゃなくて俺の事でしょ。迷惑だなんて思わないよ。俺が連れて来たんだからね」
カティリア
「だ、大丈夫ですよ」
袮雪
「ウソ。さっきから風が吹く度に身体縮こめてる。どうしてそうやって本音隠しちゃうの?」
カティリア
「そんな、ことは…」
袮雪
「上手く取り繕えなくなってる」
カティリア
「…」
袮雪
「ずっと不安だったんだよね。今もそう。膨らんだ不安に押し潰されそうになってるのを必死に耐えてる」
カティリア
「…!」
優しい袮雪の声が温度がカティリアの心を少しずつ和らげていく。そうしている内に話して楽になってしまいたい気持ちと、自分にはそんな資格は無いという気持ちがぶつかってごちゃごちゃになっていく。
袮雪
「夜明け前。まだ皆寝静まってる。それにこの高さだからね。俺にしか聞こえないよ」
カティリア
「…っ」
袮雪
「大丈夫」
カティリア
「………こわい、んです…」
袮雪
「うん」
カティリア
「…ボクは、神様の代用品だから…もう、必要無いって言われるのが…こわいんです…」
袮雪
「どうして必要無くなっちゃうのが前提なの?確かに中にはそういう人間も居ると思うよ?でもさ、カティリアくんを慕ってくれる皆の気持ちは嘘じゃないでしょ?きみを心配して手を差し伸べてくれるヨトくん、きみを我が子と呼んで大切に扱う神竜様、きみを代用品なんかじゃなく神様として接してくれるリクちゃん、少なくともその3人は嘘じゃない」
カティリア
「っそれは!そう、なんですけど…でも…」
袮雪
「"でももし"って考えちゃう自分が嫌い?」
カティリア
「…っ大っ嫌いです…」
袮雪
「それはね、皆一緒だよ。皆その嫌いな自分と戦ってるんだよ。皆カティリアくんと同じ。カティリアくんも皆と同じ。ちゃんと生きてここに居るの」
カティリア
「なにを…」
袮雪
「ごめんね。解っちゃったんだ」
カティリア
「え?」
袮雪
「カティリアくん、生まれてから10年も経ってないよね?」
カティリア
「!」
袮雪
「俺も一応神様だからね。遠目から見るだけでわかる事もあるんだよ。だからの不安と恐怖なんだよね」
頭にそっと載る袮雪の顔。降ってくる優しい声。自分を包む袮雪の温かさ。不安も恐怖も溶かされて涙に変わる。
袮雪
「神竜様の復活の話してた時、凄く不安でこわかったはずなのに、すぐに気付いてあげられなくてごめんね」
カティリア
「…ねゆきさん…っ」
袮雪
「うん。大丈夫。俺はここに居る。きみを見捨てたりなんてしない。天花や銀鈴もそう」
カティリア
「…っ」
袮雪
「ね、カティリアくん。きみがどうやって生まれたのか訊いてもいい?」
カティリア
「っそれは…」
袮雪
「話したくなかったら無理には聞かないよ」
カティリア
「いえ…ボクは、8年前…神竜様が
袮雪
「そう。だから神竜様は我が子って言ったんだね」
カティリア
「はい…」
再び会話は無くなり波音に混じり微かにすすり泣く声が聞こえる。袮雪はカティリアを抱いたままただじっと海を眺めていた。そしてどれ程か、辺りは明るくなり始め水平線が輝き出す。
袮雪
「…夜明けだ。綺麗だね」
カティリア
「はい…」
袮雪
「さ、新しい一日だ。今日も頑張ろう!」
カティリア
「はい…!あの、袮雪さん…ありがとうございました///」
袮雪
「ん〜?ふふ。気にしなくていいよ。俺は人の気持ちを楽にしてあげるのも得意なんだ」
そのまましばらくふたりで朝焼けを眺め、どこかすっきりした様子のカティリアと袮雪はまたゆっくりと散歩しながら
【屋敷】
銀鈴
「お早う御座います。
カティリア
「え!?ご、ごごごめんなさいっ。すぐに支度してきますっ」
銀鈴
「構いませんよ。
袮雪
「そーそー。たまにはゆっくりしなよ。それに、お銀ちゃんのご飯も美味しいからぜひ食べて」
カティリア
「…では、お言葉に甘えて///」
照れ笑いをして身支度をしに部屋へと戻るカティリア。
銀鈴
「貴方は休まなくて大丈夫ですか?随分早くから出掛けていたみたいですが」
袮雪
「このぐらいならへーき。ヤバかったら昼寝でもするよ。んじゃ、離れ行ってくる」
銀鈴
「カティリアさんの不安は解けたみたいですね」
袮雪
「あーね。これで少し気が楽になってくれると良いんだけどね」
銀鈴
(其れにしても、先程のカティリアさんの彼の様子。やり過ぎなんですよ。此の人
呆れながら炊事場に戻ると背後でリクの元気なおはようございますが聞こえた。気になって戻ってみると階段に腰掛けるリクとピケが居た。
銀鈴
「御早う御座います。リクさん、ピケ。今日はこんなに早くから如何したのですか?」
リク
「銀色のお兄さんおはようございます!パパとママと家に帰ったんですけど、ここで暮らしてた時間が楽しすぎて戻って来ちゃいました。カティリアさまにはまだ話してないんですけど…パパとママはいいよって」
銀鈴
「然うでしたか。では、朝ご飯の準備を手伝って頂いても良いですか?」
リク
「はい!///」
リクと話すのに少し屈んだ銀鈴の腕を登ってピケは肩に落ち着いた。その顎の下を撫でてリクを連れて炊事場へと行く。そうしていると他のメンバーがぼちぼち起き出してきた。
◈◈◈
【屋敷 離れ】
―コンコン。
袮雪
「起きてる?」
吹雪
『…どうぞ』
中に入ると寝乱れたまんまの2匹が居た。確かに起きてはいるが。
袮雪
「着物ぐらいは着直そ?ねぇ」
吹雪
「誰も来ないのだからいいではないですか」
牡丹
「アタシお腹空いたぁ」
袮雪
「あーはいはい。先に診てからね」
牡丹
「たぶん宿ってないわよ」
袮雪
「あー…ほんとだ…」
横になった牡丹の下腹部に手をかざす。シャイニーエンペラーの種子は昨日と変わらず眠っていた。
袮雪
「まぁ、そうすんなり行くとは思ってなかったけど。とりあえず朝ご飯運んで来るから身支度してて」
牡丹
「あーお腹空いたぁ〜」
吹雪
「そうですね」
しばらくして袮雪は銀鈴とカティリアと一緒に朝食を運んで来た。
袮雪
「はい!今日はなんとお銀ちゃんの作った朝ご飯だぞ」
牡丹
「あらぁ!久しぶりねぇ!///」
銀鈴
「御二人の御口に合えばよいのですが」
吹雪
「美味しいです」モッモッモッ…
袮雪
「いただきますした!?」(; ・`д・´)
牡丹
「∑ちょっと先に食べ始めないでよ」(⑉・̆-・̆⑉)
カティリア
「銀鈴さん、こちらここに置いておきますね」クスクス
銀鈴
「有難う御座います」
袮雪
「ありがとね。カティリアくん」
カティリア
「∑あ、いえ…っ///」
慌てて出て行くカティリア、それを見ながらため息をこぼす牡丹とジト目で見る師弟。
牡丹・吹雪・銀鈴
「「「人誑し」」」
袮雪
「え?なに?ちょ、三人共?」
銀鈴
「…」
吹雪
「…」モッモッモッ…
牡丹
「アンタ遊び人の癖にたまに鈍いわよね」ハァ…
袮雪
「えぇ、なに。ほんとになに」
銀鈴
「では、私は此れで失礼致します」
牡丹
「ありがとう。やっぱりお銀ちゃんのご飯美味しいわぁ///」(*´◒`*)
銀鈴
「有難う御座います」
一礼して静かに離れを出て行く銀鈴。それを見送って袮雪はカティリアが運んで来たお茶のセットを用意する。
吹雪
「おや、この匂いは」
袮雪
「
吹雪
「そうですか?」
袮雪
「そうよー。こっちの水容れは火妖精が憑いてるからお湯冷めないんだって。おかわりは自分達で淹れてね」
牡丹
「
袮雪
「んーで。こっちは判断任せるよ。母上の丸薬。水はこっちね。あとこれ、煙草。俺も下でご飯食べて来るから。食器は適当に時間見て下げに来るから」
「じゃ」と言って袮雪も出て行き、静かになる離れ。ふたりの食事の音だけが静かに鳴っている。
牡丹
「ご飯のおかわりはどうしたらいいのかしら」
吹雪
「あの捧げ物の量じゃおかわり出来ないですよ。私のを食べなさい」
牡丹
「少食なのも変わらないのね」
吹雪
「別に少食ではないです。お前が美味しそうに食べてる姿が好きなので食べさせt」
牡丹
「!?待って待って待って!!待って!!/// え?結婚して何年よ!?そんなの初めて聞いたわよっ!?///」
吹雪
「訊かれた事無いですから。あと結婚して二千年とちょっとです」
牡丹
「…………。ぷっ…ふふふっ/// ほんとに昔から変わらない…///」クスクス
吹雪
「何がそんなにおかしいのです」
久しぶりの2匹だけのゆったりとした時間。吹雪は自分の分の食事を牡丹の膳に載せて出逢った頃から相も変わらずに愛らしい嫁をぼんやりと眺めた。
◈◈◈
【屋敷 縁側】
朝からわやわやと賑やかな食卓へと祢雪も加わり食事をする。食べ終わったちび3匹とリクが遊びたそうにそわそわとしていた。
袮雪
「遊びたい子はちゃんとごちそうさまして、自分の使った食器を炊事場まで下げてね〜?」
天花
「ごちそうさまでした!!」
袮雪
「∑ぶはっ!!www」
天花
「ほれほれ!オマエ達も遊び行くぞ!」
リク・露草・睡蓮・白藤
「「「「ごちそうさまでしたー!!///」」」」
白藤
「今日は天花さまが遊んでくれるのー!?///」キャッキャッ
天花
「おう!カティリア、ここを出て集落の方まで行ってもいいか?」
カティリア
「えぇ。もちろん構いませんよ。良ければボクもご一緒しても良いですか?」クスクス
天花
「おう!来い来い!また入り口まで、今度は全員乗せてやる!」( ´罒`*)✧"
カティリア
「!ごちそうさまでしたっ!!ちょっと待っていてください!!」バタバタッ
袮雪
「あははっwww カティリアくんまでwww」
駆け足で食器を下げに行くカティリアに銀鈴が声を掛けた。
銀鈴
「後片付けも私がしておきますので、其の
カティリア
「え、でも…。はい!ではお言葉に甘えて!よろしくお願いします!」
銀鈴
「はい。行ってらっしゃいませ」
屋敷の前では金色の狐が伏せをして待っていた。ちび達1人と3匹はすでに背中に乗ってきゃっきゃっしている。そこへカティリアも混ざって、元気良く行ってきますをして2人と4匹は出掛けて行った。
ヨト
「…なに、今の…」
袮雪
「綺麗でしょ?今のがお姐ぇの本来の姿」
ヨト
「あんた達も姿変えてるんだ」
袮雪
「まぁね。ごちそうさまでした!」
銀鈴
「御粗末様でした。御茶を御淹れしますか?」
袮雪
「あ、おねがーい。ヨトくんは?」
ヨト
「え?あ、あぁ…じゃあ俺も」
銀鈴
「はい」
ふと炊事場に戻って行く銀鈴の肩にピケが乗っている事に気付く。
ヨト
「あれ、ピケ、リクについて行かなかったんだ」
袮雪
「お銀ちゃんにむちゃくちゃ懐いてるねぇ」
【炊事場】
お茶の用意をしながら洗い物をしていると、何かが銀鈴の頬を掠めた。そちらを見るとふわっふわのまるで大きな綿毛のような玉が飛んでいる。
銀鈴
「おや、御久し振りです。
雪虫
「ぴ♪ぴーっぴ」
銀鈴
「畏まりました。只今向かいます」
ぽわんと雪の結晶が舞って雪玉はトンボのような羽を生やした少年姿の妖精に変わり、嬉しそうに銀鈴の周りをふわりふわりと舞う。
袮雪
「あれ、雪虫くん?」
雪虫
「ぴ♪」
銀鈴
「御茶を御持ち致しました。吹雪様と牡丹様の御食事が済んだ様ですので食器を下げて参ります」
袮雪
「ほんと?じゃあお願いしちゃおうかな。それにしても。今頃、
ヨト
「ミユキちゃん?」
袮雪
「吹雪と牡丹の子供だよ。まぁーそれはそれは大事に育てられた一人娘ちゃんでねぇ」
ヨト
「へぇ?…ん。美味いなこのお茶」
袮雪
「でしょ?俺の國で一番美味しいんじゃないかなぁ。これ」
【離れ】
―コンコン。
銀鈴
「失礼致します。御膳を下げに参りました」
牡丹
『どうぞ』
銀鈴
「おや、吹雪様は御休みになられたのですね」
牡丹
「珍しいでしょう?久しぶりにゆっくりして、懐かしいお茶も飲んで、煙草も吸って…昔に戻っちゃったみたいなのよ。ふふ」
銀鈴
「左様で御座いますか」
窓を開けて、そこに寄りかかるようにして座る牡丹。その膝には珍しく吹雪が無防備に寝入っていた。その胸に手を載せて愛おしそうに髪を撫でる牡丹は射し込む穏やかな日差しに照らされてとても綺麗だった。銀鈴はその光景に少しの羨ましさを感じながら静かに膳を下げて行った。出る時に戸を少し開けて行ったのか、部屋には心地良い風が吹き抜けて往く。
牡丹
「…いつもお疲れ様です。吹雪様…」
吹雪
「…」スー…スー…
牡丹
(鬼帝紋を解放しても、それでも有り余る霊力の吹雪様がこんなに疲れているわ…神様も食いしん坊なのかしら…)
アタシも鬼妃紋を解放しているのにごっそり持って行かれてしまっている…。
続くようなら調べてもらわなきゃ…。
◈◈◈
いつの間にか眠っていた牡丹。うっすら目を覚ますと、吹雪が窓枠に頬杖ついて煙管を吹かしている。
牡丹
「…ん…吹雪、様…?」
吹雪
「起きましたか。そろそろ昼ですよ」
牡丹
「………。!?」
吹雪
「何ですか」
牡丹
(……膝枕…っ)
吹雪
「私の脚では寝づらいだろうと、枕を載せましたが。やっぱり寝づらかったですか」
牡丹
「ちがっ…ダメ…っ」
吹雪
「牡丹?」
牡丹
「ダメ…っ」
…ゆっくり息をして、落ち着いて…。
思い出しちゃダメよ…!
あぁ、もうっ!気を緩め過ぎた…っ!!
牡丹
「ダメっ。出てこないでっ」
吹雪
「…」ピクッ
部屋中に立ち籠めていく花の香りのような甘い匂い。昔の記憶が蘇り、呼応するように鬼妃紋が
吹雪
「雪虫、ここへは誰も近付かないように袮雪さんへ伝えてください。昼食も後で構わないと」
雪虫は急いで袮雪の元へと飛んで行った。吹雪は匂いが少しでも漏れないようにと戸や窓をすぐに閉める。
吹雪
(
牡丹
「っごめんなさい…ごめんなさいっ」
吹雪
「大丈夫です。お前に惑わされる雄はもうどこにも居ません。私は自分の意思でお前と居ます。誰ももうお前を責めたりしない」
牡丹
「…っ」
吹雪
「…」
腹を抱えてうずくまり、声を殺して泣く牡丹を起こしてやり強く抱き締めてやる。
吹雪
「紋を鎮めますよ。少し我慢しててください」
牡丹
「…ま、まって…このまま」
吹雪
「…」
牡丹
「…不安も、紋も…全部、吹雪様で…塗り潰して…」
吹雪
「加減出来ませんよ」
牡丹
「…いいの…」
涙の止まらない目元を舐めて、口付けをするとそのままゆっくりと雪の中に倒れ込む。袮雪の展開した自陣
◈◈◈
―――――
――――
―――
―…
吹雪
「…雪虫、居ますか」
雪虫
「ぴ?」
吹雪
「袮雪さんを呼んで来てくれますか」
雪虫
「ぴ!」
吹雪
「…牡丹、具合いはどうですか」
牡丹
「……落ち着いた。ごめんなさい」
吹雪
「全く…。慣れない事はするべきじゃないですね」
牡丹
「…ぅ、うれしかった…のよ…///」(⑉・̆-・̆⑉)
吹雪
「そうですか」
「入るよ」と声がして袮雪が入って来る。
袮雪
「!この匂い…。牡丹、身体は大丈夫?」
牡丹
「もう平気。吹雪が鎮めてくれたから」
袮雪
「紋の話じゃなくて牡丹の話よ」
牡丹
「あぁ、それも平気。吹雪が全部雪に撒いてくれたから」
袮雪
「そう、よかった。…お香焚こうか。薄まってるけどちび達には何があるかわかんないし」
吹雪
「お願いします」
袮雪
「!あ、牡丹ご飯食べられる?」
牡丹
「お腹、すいてるわぁ…」グゥキュルルル…
袮雪
「あははっ!よかった!さっきね?お姐ぇとちび達とリクちゃんとカティリアくんがふたりの為にって食材集めに行ってきたんだよ」
牡丹
「え…」
袮雪
「なんか山盛り持って帰って来たよ?w だから遠慮しないでおかわりもいっぱいしてね。ちび達に好きなだけ食べさせてもそれでもいっぱいあるんだ」
牡丹
「あらぁ」
吹雪
「…必要な分だけにしなさいっていつも言っているのに」
袮雪
「今は必要な量だよ。じゃ、食事とお香の準備してくるね」
それからびっくりする程の種類と量の食事をし、袮雪に香を焚いてもらいながら食後のお茶をまったり飲む。
袮雪
「よし、と。大丈夫?匂いキツくない?」
吹雪
「大丈夫です」
牡丹
「ありがとう。大丈夫よ。…ねぇ、袮雪」
袮雪
「うん?」
牡丹
「種子のことなんだけど」
袮雪
「うん。なんか変化あった?」
牡丹
「いや、そうじゃなくて…なんかおかしいの」
袮雪
「うん?どんな感じ?」
牡丹
「紋を解放した吹雪が深い眠りに落ちる程霊力を持っていかれるのよ」
吹雪
「そういえば、なんとなく身体が重いような」
袮雪
「吹雪が?」
牡丹
「アタシもそう。紋を解放してどれだけ霊力に変換してもごっそり持っていかれるのよ」
袮雪
(それで…)
牡丹も弱って紋に負けたのか…。
何かが足りなくて量で補おうとしてるのか…?
袮雪
「…うーん…ちょっとまだ、何かを決めるには情報が足りないな…。ごめん。明日の朝確認してから、その時点での様子を見よう」
牡丹
「そうね」
吹雪
「…」
袮雪
「無理させてごめん。俺がもっと何か方法を識ってれば良かったんだけど…」
吹雪
「袮雪さんが謝る事ではありませんよ」
牡丹
「そうよ。誰も悪くないもの」
袮雪
「…うん。ありがとう」
牡丹
「それよりも!アンタもちゃんと休みなさいよ?陣敷き直したり、今だって維持し続けてるんだから」
袮雪
「ちゃんと休んでるよ」
牡丹
「本当に?」( ・᷅-・᷄ )
袮雪
「ほーんとほんと」
吹雪
「袮雪さん。天花さん達は明日も外へ出かけるんですか?」
袮雪
「え?出かけると思うよ?」
吹雪
「ちょっと確認したい事があるので私も付いて出ます。牡丹は体調が
袮雪
「わかった」
翌日ー。
朝食を終え吹雪は支度をして離れを出るところだった。
吹雪
「では袮雪さん頼みます」
袮雪
「りょーかい」
吹雪
「お前はうたた寝しないように気をつけなさい」
牡丹
「寝ずに待ってろと?」
吹雪
「弱って気が抜けると別の発作を起こすのだから気をつけなさいと言っているんです」
牡丹
「あーはいはい。わかったわよ」
吹雪
「ではいってきます」
下に降りると屋敷の前で原形に戻った天花が背中にカティリアとちび達を乗せて出発するところだった。
吹雪
「カティリアさん、出発前にちょっといいですか」
カティリア
「はい。なんでしょう?」
吹雪
「この地下は立ち入ってはならない場所などはありますか?」
カティリア
「いえ、ありません。どうぞご自由に見て回ってください」
吹雪
「そうですか。引き留めてすみません」
カティリア
「ではいってきます!」
リク・睡蓮・白藤
「「「いってきまーす!」」」
露草
「いってきます!」
天花
「んじゃいくぞー!」
吹雪
「気を付けて行ってきなさい」
天花達を見送って吹雪は地下をあてもなく見て回る。その後ろをヨトがついて回っていた。
吹雪
「貴方は天花さん達と一緒に行かなくて良かったのですか?」
ヨト
「え?あぁ。うん。ついて行って集落の復興作業でも手伝ってこようと思ったけど、守人様の手を煩わせる訳にはとかなんとか言って断られたんだよね」
吹雪
「要は暇なんですね」
ヨト
「うん」
吹雪
「では私の用事を手伝って頂けますか」
ヨト
「いいよ。何すればいい?」
吹雪
「先ずは地上に出ます。乗って行きますか?」
ヨト
「!おぉ。天花さんとはまた違った」
雪の混じった風を纏って原形に戻った吹雪。狐によく似た青みを帯びた真っ白な毛皮の化け物。ヨトは見下ろしてくるその化け物に近付くとそっと毛皮を撫でた。さらさらふわふわ。好奇心に勝てなかったヨトは伏せた吹雪の背中によじ登った。
ヨト
「わ、高ぇ」
吹雪
「毛は掴んでも痛くはありませんから、しっかり掴まっていてくださいね」
ヨトが掴まったのを確認した吹雪は浮き島を軽く飛び越えると地上への入り口へ続く洞を駆け上がって行く。あっという間に地上に出た吹雪。ヨトを降ろして人型に戻るとさっさと歩き始める。
ヨト
「どこに行くの?」
吹雪
「森の方へ。
ヨト
「れいけつ?って何?」
吹雪
「自然の気が溜まっている場所です」
ヨト
「へぇ?自然の気が溜まってる場所…」
ちょっと考えてヨトは歩き出した。吹雪は黙って後をついていく。復興作業で賑やかな集落を抜け森へと入り、ぽかっと開けた場所で立ち止まる。
ヨト
「…れいけつってこういう場所?」
吹雪
「そうです。ここは少し陽の気が強いみたいですね。ヨトさん。ここには何か食べられる物はありますか?」
ヨト
「え?そうだなぁ…山菜が少し生えてるぐらいかな」
吹雪
「それは採取しても大丈夫な物ですか?」
ヨト
「うん。大丈夫だよ」
吹雪
「そうですか。すみませんが採取してもらっても良いですか。私はまだこちらの植物に詳しくないので」
ヨト
「いいよ。他の場所も行く?こういう場所ならいくつか思い当たる場所がある」
吹雪
「では案内して頂けますか」
ヨト
「うん。じゃちょっと山菜摘んでくる」
吹雪
「お願いします」
ヨト
「ねぇ、その服息苦しくないの?」
吹雪
「これですか。特に息苦しさは感じないですね。特殊な糸で織られた布なので」
ヨト
「ふーん?」
吹雪は顔半分、鼻や口を覆われている。それは首も覆い袖や胴の部分と繋がっている特殊なインナーだった。
吹雪
「これは私の過剰な力を抑える為の装備なのです」
ヨト
「そうなの?」
吹雪
「私の力は強過ぎて生まれた瞬間に両親や兄弟を呪い殺してしまう程なのです。成長する中で自身の呪いの様な力を抑える術を少しずつ手に入れるのですが、14の時に抑えきれずに暴走させてしまい大切な者達を傷付けてしまいました。その時に丁度集落に来ていた鬼神様が授けて下さったのです」
ヨト
「呪い?そんなに強い力を持ってるの?」
吹雪
「はい」
ヨト
「呪いって、何?」
吹雪
「鬼帝紋と呼ばれる痣を持つ者は強大な力を持つのです。ですが、紋を持つ者は必ず何かが欠けている。そのせいで私も昔はよく除け者にされていました」
ヨト
「へぇ。俺たちも呪われた種族だから、なんか似てるな」
吹雪
「そうでしょうか」
ヨト
「俺たちも元々は神竜だったんだってよ。それが呪いで人間にされた。神竜にも人間にもなりきれない半端者。元が神竜だから魔力保有量も多くて、人間になったことで呪文が唱えられるようになったし、魔法陣も描けるようになったから色んな魔法が使える。と、山菜あらかた採ったよ。次行こ」
吹雪
「ありがとうございます」
吹雪とヨトはしゃべりながら霊穴を巡ってそこで食材を集めた。御神洞の入り口に戻ると天花達が居た。天花達は復興作業を手伝いながら食材を少しずつ分けて貰っていたらしい。沢山の食べ物を持っている。
吹雪
「またそんなに沢山。食べ切れる必要な分だけにしなさいと言っているでしょう」
カティリア
「まぁまぁ。保存のきく物もありますし、吹雪様と牡丹様にはたくさん食べていただきたいですし」
吹雪
「…袮雪さんもそう、言ってましたね」
天花
「そっちだって食材持って来てただろ」
吹雪
「これは霊穴で集めた物。土地の気が強い物です。牡丹には今土地の気が足りていないのだと思って」
天花
「ほーん」
吹雪
「ヨトさん、荷物を持たせてしまって申し訳ないですが、地下に戻るまでまた持っていて頂けますか。私はまた原形に戻るので」
ヨト
「いいよ。また乗せてくれるならね」
吹雪
「勿論構わないですよ。では」
天花
「お!じゃあ地下まで競走しようぜ!さぁ乗った乗った!」
吹雪
「何言ってるんですか。勝負になる訳ないじゃないですか」
天花
「なんだと!?ぜってぇ負けねぇからな!?」( ・᷅-・᷄ )
吹雪
「では行きましょう」
天花
「∑あ!おい!待てやぁぁぁぁ!!!」
音も無く風のように走る吹雪に対して力強く大地を蹴って走る天花。天花に乗っているカティリアとちび達はアトラクションのように揺すられているが、吹雪は違った。ちっとも揺れないのだ。背中に乗っているヨトはすげぇと感心していた。きっと頭の先から爪の先まで神経を尖らせて体全体を使いこなしているのだと思った。ヨトの中の吹雪の株がガン上がりである。そして先に地下へ着いたのは吹雪だった。人型に戻って服を払っていると少し遅れて天花が到着した。
吹雪
「相変わらずドタドタ走るのですね。意識して体を使いなさいと何度も言っているでしょう。その様では私に勝とうなんて何千年掛かっても無理ですよ」
天花
「ちくしょう…」:( •ᾥ•):
ヨト
「…ねぇ、あれ、奥さん?なんか様子が」
吹雪
「…だから気を付けろと言ったのに」
ヨト
「え?」
吹雪
「ヨトさん、集めて来た食材をください。付き合って頂いてありがとうございました」
ヨト
「いや、俺は別にいいんだけど」
ヨトから食材の入った籠を受け取って屋敷へと向かう。そこには理性を失って原形に戻りかけながら暴れる牡丹とそれを必死に抑える袮雪と銀鈴が居た。
牡丹
「ア"ア"ア"ガァァァッッ!!!!!!!」
銀鈴
「私では抑え切れそうに有りません」
袮雪
「もうちょい頑張って!!俺もキツい!!」
吹雪
「全く。お前は留守番も出来ないのですか」
袮雪
「!吹雪。助かった…はぁ…」
吹雪
「私はここですよ牡丹」
牡丹
「ガァァァッッ!!!!」
吹雪を視認した牡丹は袮雪と銀鈴を振り払って真っ直ぐ吹雪に飛び掛って抱き着いて、その首筋に牙を突き立てた。
吹雪
「二人共手数を掛けました。銀鈴、これを牡丹の昼食に出してください」
袮雪
「いや、いいけど…お前首筋流血してるぞ…」
銀鈴
「此は…随分と土地の気が強いですね」
吹雪
「霊穴で集めて来た物です。では、私は牡丹の世話に戻りますので」
銀鈴
「畏まりました。では、此方御預かり致します」
牡丹を抱き上げて木の上の離れへと戻って行く吹雪。
白藤
「袮雪おにいちゃん…牡丹さま大丈夫?」
袮雪
「ん?大丈夫だよ。吹雪が戻って来たからね」(⸝⸝⸝ ´˘`)ノ゙ヨシヨシ
銀鈴
「では私は昼食の準備をして参りますので此で」
袮雪
「お銀ちゃんもありがとう」
銀鈴
「いえ」
袮雪
「俺もちょっと休んでくる」
顔色も悪くふらつくのを踏ん張って耐えている袮雪。その様子に銀鈴は懐から朱塗りの細い筒を取り出して栓を抜いた。すると中からちょろりと小さな狐によく似たモノが顔を出して筒から飛び出し、次には人間の女性に姿を変えた。
銀鈴
「
駿麗
「はい。お師様」
袮雪
「いいよいいよ。昼寝するだけだから」
銀鈴
「然ういうのは鏡で御自身の御顔を見てから言って下さいませ」
袮雪
「えぇ?そんなに顔色悪い?寝たら治るよぉ」
銀鈴
「駿麗、此の奥の座敷に連れて行って寝かせて下さい」
駿麗
「かしこまりました。では、袮雪様」
袮雪
「わかったよぉ。優しくしてね駿麗ちゃん♡」(人´꒳`)♡⃛ꕤ
銀鈴
「駿麗に手を出したら赦しませんよ」
袮雪
「はぁい。皆せっかく楽しく出掛けてたのにごめんねぇ。ひとまずは落ち着いたから安心してね」
カティリア
「本当に大丈夫ですか…?」
袮雪
「大丈夫大丈夫。ちょっと疲れが溜まって色んなものに負けちゃっただけだから。すぐに元に戻るよ」
カティリア
「なら、良いのですが…」
袮雪
「ありがとうカティリアくん。じゃあちょっと休んでくるね」
駿麗に付き添われて屋敷の奥に消える袮雪を見送って全員が不安に包まれたまま立ち尽くした。
―パンッ。
天花
「ほい!じゃあ昼飯の準備すんぞ!せっかく牡丹の為に食材持って来たんだ!お前たちの気持ちを込めた美味いもん食えばすぐに良くなるさ!さぁやるぞ!」
露草
「はい!牡丹さまに早く元気になってほしいです!」
【屋敷奥の座敷】
袮雪
「あー…けっこう、キツい…」
―ふらっ。
駿麗
「!袮雪様」
人目が無くなった所で意識が飛んだ袮雪はその場に倒れ込んだ。仰向けに寝かせて呼吸を確認する。
駿麗
(呼吸が少し浅くなっていますね。あとは意識の混濁…まずはお薬を飲んで頂かなくては)
持って来た
駿麗
「…まだ離れの陣を維持していらっしゃる。少しお休みになっていただきたいのですが」
袮雪
「…ぅ…え」
駿麗
「なんでございましょう」
袮雪
「……はは、うえ」
駿麗
「袮雪様…」
何かを探すように動く袮雪の手を握ってやると安心したように寝落ちていった。
【炊事場】
天花
「さぁて。やるとは言ったが俺は何をしたらいい?カティリア、銀鈴、なんか指示をくれ」
露草
「わ、わたしもお願いします」
睡蓮
「レンもー!」
白藤
「ボクもー!」
ヨト
「俺も」
カティリア
「ふふ。はい。では、天花さん、睡蓮さん、白藤くんはリクちゃんと一緒にお野菜を洗って来てください。銀鈴さんと露草さんはテーブルと食器の準備と、できたらお料理も手伝って欲しいです。ヨトはボクと一緒にお魚の下ごしらえを手伝ってね」
天花
「んじゃあやるか!ほい!解散!」
野菜や山菜を各々持って裏口を出た所の水辺で野菜を洗い始める。
銀鈴
「カティリアさん。少々宜しいですか」
カティリア
「はい?なんでしょう」
銀鈴
「彼の水辺に生えている蓮の花を少し摘んでも良いでしょうか」
カティリア
「え?あぁ、シーンの花ですね。構わないと思いますが、あの花はシャイニー様の化身なのです。花を摘んでどうするのですか?」
銀鈴
「然うでしたか。やけに光の気が強かったのは然ういう事だったのですね。シャイニー様の種が芽吹かない原因は土地の気が足りないのではないかと思うのです。ですから、吹雪様も土地の気が強い場所で食材を集めたのだと思います」
カティリア
「そう、ですね」
銀鈴
「シーンの花と言いましたか。彼の花を牡丹様に召し上がって頂こうかと思いまして」
カティリア
「食べるのですか!?食べ…え?食べられない、ことはないと、思いますが…。食べた人が居ないのでちょっとわからないですね…」
銀鈴
「試しに食べてみないと判りませんが、まぁ大丈夫だと思います」
カティリア
「……ふふふ。銀鈴さんも意外とそういうところあるんですね」クスクス
銀鈴
「然ういう所、ですか?」
カティリア
「えぇ。大雑把というかなんというか。銀鈴さんはもっと慎重なイメージがあったので」
銀鈴
「長く生きてると今迄の経験からある程度は予測がつくと言いますか」
カティリア
「なるほど」
銀鈴
「ところでカティリアさん。何か刃物を貸して頂けませんか」
カティリア
「はい。えぇと…これでいいですか?これよく切れるので気を付けてくださいね」
銀鈴
「有難う御座います。では露草さん其方の籠を持って来て下さいますか」
露草
「はい!よいしょっと」
カティリア
「ところで銀鈴さん。シーンの花はどうやって食べようと思ってるんですか?」
銀鈴
「
露草
「銀鈴さま、てんぷら、とはどのようなお料理なのですか?」
銀鈴
「粉と卵と冷水を混ぜて衣を作って、其れを食材に付けて油で揚げるのです。揚げたての天麩羅は衣がさくさくとしていて美味しいですよ」
露草
「わぁ!美味しそうです!///」
銀鈴
「シーンの花は分かりませんが、蓮の花の天麩羅は花の香りが仄かに香ってとても良いですよ」
カティリア
「とても楽しみです!っと、牡丹様のお食事でしたね。いけないいけない」
銀鈴
「構いませんよ。皆さんの分も御作りします」
カティリア
「やった!///」
銀鈴
「では花を摘んで参りますね。行きましょう露草さん」
露草
「はい!」
カティリア
「いってらっしゃい!花を摘む時に水に落ちないでくださいね」
露草
「はーい!」
ヨト
「おいカティリア。言われた通り魚塩で揉んだぞ。次どうすんだ」
カティリア
「あ、今行くよ。次はねぇ」
◈◈◈
【浮き島】
水辺へとやって来た銀鈴と露草。銀鈴はおもむろにシーンの花びらを摘んで取り口に入れた。
銀鈴
「……ふむ。毒は無い様ですね。美味しいかは別として食べられるでしょう」
露草
「あ!銀鈴さま!このお花どうですか?大きくてたくさん食べれますよ!」
銀鈴
「此の花は少し大き過ぎますね。余り大きいと筋が固くて口に残ってしまいます。
露草
「なるほど。大きければいいというわけではないのですね」
銀鈴
「えぇ。茎を切るので花を支えていてくれますか」
露草
「はい!」
―さく。
露草
「わぁ!いい匂いですね!」
銀鈴
「はい。とても良い香りです。次は彼処の花を御願いします」
露草
「はい!これですね!」
銀鈴
「小振りとは言え大きな花ですから二輪も有れば十分でしょう。では戻って調理をしましょう」
露草
「はい!あの、銀鈴さま」
銀鈴
「何ですか?」
露草
「わたしにお料理を教えてくれませんか?」
銀鈴
「えぇ。構いませんよ。其れでは炊事場に戻りましょう」
露草
「はい!///」
【炊事場の裏】
炊事場の裏の水辺では天花、リク、睡蓮、白藤が野菜や山菜を洗っている。
リク
「お野菜さんは優しく洗ってね」
睡蓮
「やさーしく、やさーしく」
白藤
「やさーしく、やさーしく、あ!元気になーれ!元気になーれ!」
睡蓮
「あはは!元気になーれ!元気になーれ!」
天花
「ちゃんと手ぇ動かせよ」カッカッカッ
睡蓮と白藤の歌にリクも参加して地下空間に歌声は響いていく。ふと楽しそうにちび達を見ている天花の手に何かが触れた。手元を見ると白い大魚が数匹、天花を見ていた。
天花
「ん?なんだ?……そうか。すまないな。リク!オレちょっと出かけてくる。あと頼んだ。あ、この包丁借りてくぞ」
リク
「え?天花お姉さん?…!?ちょ、お姉さん!?」
「じゃ!」と言うと天花はざぶざぶと水の中に入って行き、大魚の後を追って泳いで行ってしまった。大魚に案内されたのは地下の端の方にある浮き島。そこの水際にひときわ大きな白魚が居た。
天花
「オレを呼んだのはオマエか。…本当にいいんだな。…そうか。ではありがたくその命頂戴しよう。そのまま動くなよ」
そう言って天花は包丁を振り上げた。
『ー神竜様をお頼み申すー』
◈◈◈
【炊事場裏】
白藤
「あ!天花さま帰ってきたー!おかえりなさーい!」
天花
「おう。戻った」
リク
「て、天花お姉さん!?そのお魚さんはっ」
天花
「ん?こいつか」
リク
「死んでる…天花お姉さんがやったの?どうして!?そのお魚さんはこの地下の大事なお魚さんなのにっ」
カティリア
「リクちゃん?大きな声出してどうしたの?」
リク
「カティリアさま!天花お姉さんが!」
カティリア
「天花さん?……っ天花さん!!そのお魚はどうしたんですか!?その傷、天花さんが!?」
銀鈴
「カティリアさん、
カティリア
「銀鈴さん…っ」
銀鈴
「……貴女は本当に何を為さっているのですか」
天花は小脇に先程の大きな白魚を抱えていて、それをたくさんの大魚が囲んでいた。
天花
「おう。コイツに呼ばれてな。自分の命はもう尽きる。だからこの身は神竜様の復活に力を貸してくれている夫婦に捧げて欲しいってな。ちゃんと苦しまねぇようにしてやったぞ」
カティリア
「このお魚は百年様。この地下で百年の年月を生きたシャイニー様の眷族の一匹です。確かに、最近はなかなか姿を見かけなかったのでどうしたのかなって思ってたのですが…死期が近かったのですね…」
天花
「カティリア。許してくれとは言わない。まぁ、オマエに確認しなかったのは悪かったと思う。だが、コイツの意思は尊重してやりたい」
カティリア
「…わかっています。百年様、ありがとうございます。大切に食べさせていただきます。安らかにお眠りください」
天花
「じゃ、後は頼んだ銀鈴。カティリア、
カティリア
「え?えぇ構いませんが。どうするのです?」
天花
「百年様にお礼をしなきゃ失礼だろ?ちょっくら準備して来る。火の精にはオレの服を乾かしてもらうだけだ。じゃ、そういう訳で」
銀鈴に百年様を手渡して水から上がると髪や服を軽く絞り、竈から火の精を一匹つまみ上げるとそのまま地下を出て行った。
カティリア
「苦しまないように、と言っていたということは天花さんが行った時にはまだ息があったのでしょうか…」
銀鈴
「きちんと急所に刃を入れて締めているので即死だったと思われます。一瞬ですので百年様は痛みも苦しみも無かったでしょう。天花様の力ならばもたつく事も有りません」
カティリア
「だと良いのですが…」
銀鈴
「では私は御祈りの準備をして参ります」
カティリア
「お祈りしてくださるのですか?」
銀鈴
「勿論で御座います。たった一つの大切な命を捧げて下さったのですから、その御礼はきちんとしなければなりません」
カティリア
「ありがとうございます。その、お祈りの時には一緒に居てもいいですか?」
銀鈴
「はい。では準備出来ましたら御呼びしますので少々御待ち下さい」
カティリア
「はい」
リク
「カティリアさま、お野菜洗うの終わりました」
カティリア
「あぁ、はい。ありがとうございます。炊事場は今人が多くて狭いので皆さん縁側で待っていてください」
リク
「はーい!行こ!睡蓮ちゃん!白藤くん!」
ヨト
「カティリア?魚全部中取って血洗ったぞ。次は?」
カティリア
「ありがとう。後はボクがやるからヨトも休んでて」
ヨト
「わかった。あー…手が臭ぇ…」
カティリア
「炊事場の台の上に石鹸があったでしょ?あれ臭い消しのハーブが入ってるから、あれで手を洗ったら少しはましになるよ」
ヨト
「ん。洗ってくる」
◈◈◈
銀鈴
「露草さん」
露草
「はい?わ!おっきなお魚さんですね!」
銀鈴
「私はちょっと袮雪様の様子を見て来ますので、此方の濡れ布巾で此の御魚の体を拭いてもらえますか」
露草
「はい!わかりました!」
銀鈴
「重い上に滑るので気を付けて下さいね」
露草
「はい!」
【奥座敷】
駿麗
(やっと呼吸が安定しましたか。汗も引きましたね)
銀鈴
「駿麗、袮雪様は
駿麗
「お師様。お薬を飲んで頂きまして、呼吸も安定しました。もうしばらくしたら目を覚まされるかと思います」
銀鈴
「然うですか。如何して手を?」
駿麗
「あ、これは…袮雪様、私を
銀鈴
「然そうですか」
よくもまぁ袮雪様も牡丹様も吹雪様も
銀鈴
(
駿麗
「本当はもっとちゃんとお休み頂きたいのですが、意識を失っても離れの陣を維持していらっしゃってて…」
銀鈴
「牡丹様のお身体を心配為さってるのでしょう。酷い発作を起こされて居ましたから」
駿麗
「そうですね」
袮雪
「…ん…れい、ちゃん?」
駿麗
「はい。お気づきになられましたか。具合いはいかがでしょう」
袮雪
「だいぶ良くなったよ。ありがとう。やっぱり麗ちゃんの薬はよく効くね。あれ?手ぇ握っててくれたの?」
銀鈴
「此の子を惠雪様と間違えたのだそうですよ。きちんと休みを取らないから記憶が混乱する程疲れるのですよ」
袮雪
「あらら。それはごめんね」
銀鈴
「昼食迄其の儘休んで居て下さい。私は炊事場に戻ります。駿麗、動かない様に見張っていて下さいね」
駿麗
「承知しました」
袮雪
「まだ動けないよ。大丈夫だから」
銀鈴
「然う言って無理をするのが貴方です。信用出来ません」
袮雪
「えぇ?ひどぉーい」
苦笑いする袮雪に内心ほっとしながら銀鈴は炊事場に戻って行った。
【炊事場】
露草
「あ!銀鈴さま!言われた通りにお魚さん綺麗にしましたよ!」
銀鈴
「有難う御座います。では、百年様は私が御運びするので其方の板を持って付いて来て下さい」
露草
「?はい。これですね」
訳が分からないまま銀鈴について行くと、地下の吹き抜けの真下の浮き島へとやって来た。一旦百年様を寝かせると銀鈴は近くのシーンの花の葉を何枚か摘み、板の上に敷いてその上に百年様を寝かせた。そして
銀鈴
「有難う御座います。準備は出来ました。屋敷へ戻りましょう」
露草
「はい。これは、何かの儀式ですか?」
銀鈴
「はい。命を捧げて下さった百年様の為に天花様が御神楽を舞ます」
露草
「!そうなんですね」
銀鈴
「では戻って天花様を待ちましょう」
露草
「はい」
屋敷に戻ってカティリアを呼び、屋敷の縁側で天花を待つ。しばらく待っていると天花が戻って来た。その姿にカティリアは目を丸くし言葉を詰まらせた。戻ってきた天花は華やかな巫女衣装を身にまとって、鮮やかな色とりどりの帯の飾りが付いた神楽鈴を手にしている。そして、百年様が置かれた浮き島に渡るとその身体に礼をし、鈴を鳴らして舞が始まった。息を飲むような美しい舞。
カティリア
「…すごい…綺麗ですね…あれ、何か天花さんにまとわりつくように煙が…」
銀鈴
「百年様の霊です。天花様の鳴らす鈴の
カティリア
「百年様の霊…あ、本当ですね。だんだんお魚の形になって」
どこからか現れた煙は大きな魚の形になり、天花の舞に合わせるようにその周りを泳ぎ始めた。
天花
「悪ぃな。ほんとはもっとちゃんと送ってやりてぇんだが道具がこれしか無くてな」
百年様
『とんでもない。こんなに美しい舞で送ってもらえるなぞ私は幸せ者だ。なんという美しい舞、なんという美しい音…』
天花
「…では行くぞ。昇れ!!彼方の空まで!!どこまでも果ては無く!!」
百年様
『神竜様を宜しくお願いします』
天花
「任せとけ!安心して往くがいい!」
手にした神楽鈴と扇を天高く仰ぐと百年様の魂は大魚からその姿を龍に変えながら空へ昇って往った。
白藤
「わぁー!龍神さまだー!///」
ヨト
「すっげ…」
カティリア
「百年様…ありがとうございます」
天花
「よし!お見送りも終わったし食おうぜ!」
いつの間にか百年様を手にした天花が屋敷まで戻って来ていた。その姿はいつもの格好に戻っている。
カティリア
「え?天花さん、服はどうしたんですか?」
天花
「ん?あぁ、あれな。あれは術で見てくれだけ作ってたんだ。オレはずっとこの格好だったぞ。それより腹減ったわぁ。銀鈴、メシは?」
銀鈴
「此から天麩羅を揚げて、百年様を捌きますのでもう少々御待ちください」
天花
「…まだなのか。ん?牡丹、袮雪、もう大丈夫なのか?」
牡丹
「えぇ、もう大丈夫よ。ごめんなさいね」
袮雪
「俺もへーき」
露草
「牡丹さま、もう大丈夫ですか?」
牡丹
「大丈夫よ。心配させたわね」(⸝⸝⸝ ´˘`)ノ゙ナデナデ
露草
「よかったです!袮雪お兄ちゃんももう大丈夫ですか?」
袮雪
「うん!もうぜーんぜんへーき!」
白藤
「ほんとー?」
袮雪
「ほーんと」
睡蓮
「∑あ!レンも抱っこしてほしい!」
袮雪
「いいよ。おいで」クスクス
睡蓮
「抱っこー!」
牡丹
「露草は?」
露草
「え?」
牡丹はただ露草を優しい眼差しで見つめて微笑んで、その手は優しく露草の頭を撫でる。
露草
「…いいんですか…?」
牡丹
「勿論よ。いらっしゃい」
露草
「はいっ///」
牡丹
「露草は随分背が伸びたわね」
リク
「…」(*ºoº*)
天花
「よし!リクこっち来い!オマエはオレが抱っこしてやろう!」( ´罒`*)✧"
リク
「!/// うんっ///」٩(*´◒`*)۶
銀鈴
「何度も申し訳有りませんが、牡丹様、吹雪様、具合いは宜しいので御座いますね」
牡丹
「えぇ。大丈夫よ。アナタにも面倒掛けたわね」
吹雪
「私は別に何ともないです」
銀鈴
「左様で御座いますか。では、本日の昼食は此処で皆さん一緒に食事にしませんか」
牡丹
「あら、そうね。そうしようかしら」
銀鈴
「では其の様に。支度をして参りますね。露草さんは如何しますか?料理しますか?」
露草
「あ!はい!お料理教えてください!」
銀鈴
「はい。では炊事場へ」
露草
「はい!いってきます牡丹さま」
牡丹
「行ってらっしゃい。火とか刃物とか気を付けなさいね」
露草
「はい!楽しみにしててくださいね!///」
牡丹
「えぇ。楽しみにしてるわ」クスクス
カティリア
「ボクも続きやりに戻ります」
炊事場に戻った1人と2匹は調理を再開した。カティリアが煮物や煮魚を調理している間に銀鈴は露草に魚のおろし方を教えている。
銀鈴
「先ずは百年様を濡らして鱗を取ります。頭も戴くので
露草
「はい!…んっと、こうですか?」
銀鈴
「はい。手に気を付けて下さいね」
露草
「はい。立派な鱗ですね!真っ白で真珠のようです!」ゴリゴリゴリ…
銀鈴
「然うですね。此は漢方に成るかも知れませんね。後で駿麗に渡しましょう」
露草
「はい!」
百年様と格闘する事数十分。綺麗に鱗が取れた。今度は捌いていく。こちらも綺麗に3枚におろしお造りを作る。頭を落とす以外は露草が1匹で頑張った。頭は銀鈴が切り分け塩を振り塩焼きにする。中骨も同様に塩焼きにした。カティリアはひと足先に器に盛り付け縁側に運んでいる。出来上がったお造りと塩焼きを先に運び、今度は天ぷらを揚げる。こちらも露草が頑張った。吹雪が集めてきた食材と百年様の鱗を少々、銀鈴と一緒に摘んで来たシーンの花などなど大量に揚げた。そして揚げたての天ぷらを食卓に並べて昼食の完成だ。
牡丹
「あらぁ!お造りに天ぷら?豪華ねぇ!///」
銀鈴
「此方の御造りと天麩羅は露草さんが一人で作りました」
牡丹
「本当?すごいじゃない!頑張ったわね!」
露草
「はい!///」
銀鈴
「おや、駿麗が居ませんね。呼んで来ます」
袮雪
「あ、俺呼んで来るよ。面倒見てもらったしね」
銀鈴
「然うですか?では、御願い致します」
袮雪
「うん」
さっきまで寝ていた奥座敷に行くと駿麗はぽつんと座っていてぼんやりと外の方を見ていた。
袮雪
「麗ちゃん!お昼ご飯だよ!おいで!」
駿麗
「え?ですが私は」
袮雪
「良いの。おいで。お銀ちゃんが呼んでるよ」
駿麗
「お師様が?では」
連れ立って縁側に戻る。
駿麗
「お呼びでしょうか。お師様」
銀鈴
「駿麗、貴女も一緒に昼食にしましょう」
駿麗
「ですが」
銀鈴
「構いません。貴女も大事な家族なのですから」
駿麗
「…ありがとうございます。では、ご一緒させて頂きます」
カティリア
「では、いただきましょう!」
全員
「「「「「いただきます!!」」」」」
白藤
「銀鈴さま、このサクサクはなんですか?」モグモグ
銀鈴
「其れは天麩羅です。沢山有りますが出来れば牡丹様と吹雪様に食べて頂いて下さいね」
白藤
「はーい!」
雪虫
「んぴ♪」
袮雪
「ん?天ぷら食べる?ちょっと待ってね…はい。どうぞ」
雪虫
「ぴ♪」サクサクサクサク…
袮雪
「お銀ちゃんこの花ってそこらに咲いてるやつ?」
銀鈴
「えぇ。然うで御座います。シーンの花という名で、シャイニー様の化身なのだそうです」
袮雪
「∑化身!?食べていいの!?お銀ちゃん時々とんでもない事するよねw」
カティリア
「ボクが許可をしましたので、もしシャイニー様に怒られるようなことになればボクだけ怒られますよ」クスクス
袮雪
「いやいやw ちゃんと皆で怒られよう。それにしても何で食べようと思ったのさ」
銀鈴
「初見の時から随分と神気にも似た気が強い花だと思っていまして。牡丹様にはきっと土地の気が足りないのではと思い、召し上がって頂こうと思ったのです。霊穴で食材を集めて来た吹雪様もきっと同じ考えを持ったのではないでしょうか」
吹雪
「そうですね。種が芽吹かないのはこちらの世界の何かが足りないのではないかと」
袮雪
「なるほどねぇ。土地の気が足りない、か」
にしては殻ががっちりし過ぎてる気がするんだよなぁ…。
袮雪
「カティリアくん、ヨトくん、食事が終わったらちょっと離れに来てもらってもいいかな」
カティリア
「あ、はい。わかりました」
銀鈴
「後片付けは私に御任せ下さい」
カティリア
「!いえ、置いておいていただければボクがやりますから」
銀鈴
「カティリアさん」
カティリア
「!は、はい」
銀鈴
「貴方は神様の代理です。本来私よりも位の高い御方。対して私は一介の使い魔。有象無象の内の一に過ぎません。私に遠慮等為さらないで下さいませ」
カティリア
「ですが、あなた方は影法師様の御使い様です」
銀鈴
「其れは天花様と祢雪様に御座います。私は先程も申し上げた通りの使い魔。
カティリア
「え、えぇ…」
袮雪
「まぁまぁ。お銀ちゃんはさ、そういう生き物なんだよ。誰かに仕えるのが芯に染み付いてるんだ。カティリアくんも扱いに困ると思うけど、お銀ちゃんの好きなようにさせてあげてくれるかな」
カティリア
「わ、わかりました。ではよろしくお願いします」
銀鈴
「はい。御任せ下さい」
露草
「なら、わたしもお手伝いします」
銀鈴
「はい。御願いします」
露草
「はい!」
◈◈◈
【離れ】
牡丹
「はぁーお腹いっぱい。たくさん食べたわぁ」
吹雪
「そうですね。体調は変わりないですか」
牡丹
「そうねぇ。種は相変わらず眠ってるわ。早く起きてくれないかしらねぇ神様」
―コンコン。
袮雪
『入るよ』
吹雪
「どうぞ」
―からり。
袮雪
「種の様子確認しに来たよ」
カティリア
「失礼します」
ヨト
「…」
なんで俺まで…?
袮雪
「はい。じゃあ牡丹は横になって」
牡丹
「はぁーい」
袮雪
「ん。…んー相変わらずがっちり閉じてるね。カティリアくん、ヨトくん視てみてくれない?」
カティリア
「でしたら、ボクよりも守人のヨトの方がいいかもしれません。ヨト、お願いできる」
ヨト
「え、あぁ、うん」
吹雪
「触れたら殺します」
牡丹
「よしなさいよ」( ・᷅-・᷄ )
ヨト
:「お、おぉ…」:
こわ…。
集中した。とにかく集中した。種を視るのもそうだが。絶対に牡丹に触れないように気を付けた。牡丹の下腹部に手をかざす。微かにシャイニーエンペラーの気が感じ取れる。しかし分厚い殻に阻まれて上手く種が探れなかった。もう少し深く潜ろうとするとチリっと一瞬魔術回路に焼けるような痛みが走った。そして―
ヨト
「っ!?」バッ
袮雪
「どうしたの?」
◈◈◈
【種の中】
シャイニーエンペラー
(参ったな…こんなに深くにまで魔法を張り巡らせている…恐ろしく用心深いというかなんと言うか…)
この程度の魔法すら破れないとは…何とも情けない…余、泣いちゃう…。
シャイニーエンペラー
「それにしても、早く何とかしなければあの
シャイニーエンペラーは体育座りをして項垂れていた。
◈◈◈
【離れ】
ヨト
「っぶねー…」
カティリア
「ヨト?」
ヨト
「ヒノワがタダでくれるとは思ってねぇけど…ヒノワの魔法が掛かってる。たぶん俺やカティリアが触れると種が消失するようになってる」
袮雪
「!」
ヨト
「…あまり守人を舐めんなよ」ボソッ
再び集中して手をかざすヨト。それにカティリアが慌てる。
カティリア
「待ってヨト!ボクらが触れると種が」
ヨト
「ちょっと、今話しかけないで。ヒノワの魔法に掛からないように種視てるから」
カティリア
「っごめん」
ヨト
「…」
どこだ…何が原因でこんなに殻が分厚くなってる…どうして…。
目を閉じ、呼吸すらも忘れる程に集中して原因を探る。
ヨト
「……そうか。そういうことか…。これはじわじわ時間掛けて土地の気を集めても意味が無い。逆に殻を厚くするだけだ」
袮雪
「どういう事?」
ヨト
「これはテストだ」
袮雪
「テスト?」
ヨト
「これはヒノワが気に入った相手によく使う魔法だ。目的はヒノワの中のある一定ラインを越えられるかどうかを試すもの。試されているのはあんた達影法師の遣い」
袮雪
「で?結局どうしたらいいのかな?」
ヨト
「言ったろ。一定ラインを超える。つまりそのラインを超える力を一気に種にぶつければいい」
袮雪
「ふーん?…それはいいんだけど。なんでヒノワは俺達がこうする事がわかっていたような行動を取ってるのかな。それが癪だなぁ」
ヨト
「確かに」
袮雪
「まぁいいや。雪虫くん、お姐ぇとお銀ちゃん呼んできてくれるかな」
雪虫
「ぴっ♪」
吹雪
「やる事が単純明快で良かったです」
ヨト
「こわいこわい。顔がこわいよ」
吹雪は牡丹を見下ろしながらバキバキと首や関節を鳴らしている。キレる5秒前の顔。程なくして天花と銀鈴が顔を見せた。
天花
「…ふん。なるほど。力をぶつけて殻を破ればいいんだな」
袮雪
「そゆこと。お銀ちゃんは離れが吹き飛ばないように結界お願いね。カティリアくんとヨトくんは危ないから下で待ってて」
カティリア
「わかりました」
ヨト
「集落ごと吹き飛ばさないでくれよ」
袮雪
「その為のお銀ちゃんよ。じゃ、お銀ちゃんお願い」
銀鈴
「畏まりました。では、〈―絶界陣―〉」
離れの中は世界から分断され、如何なる干渉も受付けなくなった。
袮雪
「〈―自陣作成:
離れの中は深々と雪が降り積もる冷気と霊気、神気に満ち溢れた雪景色へと姿を変えた。
吹雪
「呼応せよ、鬼帝紋」
紋を開放した吹雪は自然霊の皇となった。
牡丹
「本気ね吹雪様。呼応せよ鬼妃紋」
紋を開放した牡丹は自然霊の皇妃となった。
天花
「オレの熱で殻なんぞ焼き切ってやらぁ!我が
女神の力を一部開放した天花の右手には陽の力が集まった。
天花
「喰らいやがれ!!!」
袮雪
「ちょ!!お姐ぇ強い強い!!〈―暴雪―〉」
牡丹
「ちょっとちょっと優しくしてちょうだいよ」(⑉・̆-・̆⑉)
吹雪
「ぶっ壊す」
―うおおおおおぉぉぉぉ!!!!!
カティリア
「皆さん大丈夫ですか!?うわ!なんでこんなに蒸してるんですか!?」
袮雪
「大丈夫大丈夫。ちょっと蒸してて暑いけど」
天花
「あちぃー。オレ外出てるわ。はぁーやれやれ」ヨッコイショ
銀鈴
「私は
カティリア
「………シャイニー、様…っほんとに」
「こ、殺されるかと思った…」:(´◦ω◦`):ガクブル
部屋の中央を見て脱力してへたり込むカティリア。次にはわんわんと泣き出した。牡丹の隣には体育座りをして顔を青くしている成人男性。銀鈴にめちゃくちゃお小言を言われている。
カティリア
「シャイニー様ぁっ!」
シャイニーエンペラー
「!おっと。泣くな我が子よ。余は辛うじて無事だ。辛うじて!ギリギリな!」
カティリア
「うわぁぁぁぁんっ」
シャイニーエンペラー
「お前は本当に泣き虫だな。ふふ」
袮雪
「はぁ。無事成功だねぇ。良かった良かった」
吹雪
「牡丹、身体は無事ですか」
牡丹
「無事!ピンピンしてるわ!それよりも!!どうして誰もアタシを褒めてくれないわけ!?今のこの短時間に妊娠、出産、育児をこなしたのよ!!褒めなさいよ!!」。°(°`ω´ °)°。
袮雪
「ご苦労さま。ありがとう牡丹」
シャイニーエンペラー
「うむ。余はまた生まれいでて嬉しいぞ。ありがとう母上」
牡丹
「よし!まぁでも半分は素材を寄越したあのヒノワって女のお陰よねぇ」
袮雪
「そのヒノワのお陰で苦労もした訳だけど」
ヨト
「カティリア?どうした?失敗したのか?うわ、あっつ。なにこれ」ヒョッコリ
シャイニーエンペラー
「ヨト。そなたにも礼を言わなければな。余の一部をよく持ち帰ってくれた」
ヨト
「!成功した、のか…シャイニーエンペラー」
シャイニーエンペラー
「うむ!」
ヨト
「…でも、なんか属性が…変わってない?」
シャイニーエンペラー
「きっと姉上の陽の力が強かったのだろう。陽の加護が付いたな」
ヨト
「姉上?あんた兄弟なんて居たのか」
シャイニーエンペラー
「陽の者だ」
ヨト
「だから誰って」
銀鈴
「天花様の事に御座います」
ヨト
「なんであの人が姉上なのさ」
シャイニーエンペラー
「天花は我が母上の妹でもあり子でもある。故に同じ母を持つ者である余は一番下の子であり弟である。よって天花は我が姉上になるのだ」
ヨト
「わかったようなわからないような…。まぁいいや」
シャイニーエンペラー
「さて、少し休めたからな。余はちょっと野暮用に行ってくる。ヨト、我が子を頼む」ヨイショ
ヨト
「野暮用?」
シャイニーエンペラー
「うむ。余が生まれたからな。この世界には不要な物が一つある。滅して来るのだ」
牡丹
「あんた生まれたばっかりなんだから無茶するんじゃないわよ」
シャイニーエンペラー
「わかっている母上。では行って来る」
牡丹
「いってらっしゃい。遅くならないうちに帰るのよ」
シャイニーエンペラー
「うむ!」
牡丹に人懐こい笑顔を見せるとシャイニーエンペラーは移動魔法を展開して消えた。
◈◈◈
ヴィルムート大陸、トルグスメニア国
【アパレルシア王城】
―
【天帝】メラルク・シンルード(ランクS級)
「…では天子の後任及び師団員250名と奴隷200名の振り分けを決める」
【皇帝】カンナギ・シンルード(ランク特S級)
「後任には
【大公】ラゼート・ルス・キリム(ランクS級)
「あらら。また皇帝様は勝手に判断されたんですかぁ?少しは私にもくだされば良かったのに。けひひ」
メラルク
「確かに。なぜその分配にしたのだ」
カンナギ
「大公のゾンビランド建設に手を貸す気は無い。大将軍と中将は今以上の数を扱える能力はありません。准将は今の良い状態を崩したくないので、元帥、将軍、宰相の3名に振り分けました」
メラルク
「なるほど。しかし気になるのは天子の後任だ。何故Cランクの元帥を推薦したのだ?最高位創魔師はSランクから選出する決まり」
カンナギ
「現在のSランクは宰相、大将軍の2名のみ。しかし、宰相は能力はありますが気分で作戦を実行しています。大将軍は独断、単独行動が多い。とても天子の席にはそぐわない。対して元帥は忠誠心も高く、作戦行動の正確性、師団員と奴隷の管理の高さ、どれもが高く評価できます。よって例外的にCランクの元帥を推薦しました」
【元帥】ティナート・アランデラ(ランクC級)
「皇帝は私を過大評価し過ぎです。私にはそんな能力はありません」
カンナギ
「そんなことは無い。キミは能力ある優秀な人材だ」
ティナート
「…では、少し考える時間をください」
カンナギ
「良い返事を期待してるよ」
メラルク
「では、この件は皇帝に一任しよう」
カンナギ
「ご理解頂きありがとうございます」
ラゼート
「あーあ…まぁた皇帝様の好きにさせちゃったぁ。ひひひ」
【大将軍】ミコト・シンルード(ランクS級)
「ねぇ皇帝様ぁ、こいつ殺していい?臭いしハエ連れて歩いて目障り」
ラゼート
「出た出た。助けてお兄様ぁ。けひひ」
ミコト
「今すぐ消してやろうか」
【宰相】ヒノワ・シンルード(ランクS級)
「…大将軍に賛成だわ。醜い。せっかくの神代の美しい身体が台無しだわ」
ラゼート
「美しいこの身体が羨ましいですかぁ?けひひ」
カンナギ
「そろそろ口を閉じろ大公。そんなに口を出したければ自分の力で最高位創魔師の席に座ってみせろ。オディリアの魔法障壁を解いたのは誰だ。神代の王族の墓の呪いを解いたのは誰だ。エンペラーを殺して持って来たのは誰だ。自分の立場を理解出来ても出来なくても黙っていろ」
ラゼート
「…」
「うむ!やはり余の肉体は美しい!しかし、逆鱗が無くなっているな。確かここに一枚あったはずなのだが。よく当たる位置にあって痛かったのだよな!」
静かになった広間に突然響いた声。全員が一斉にメラルクの方を見た。そこにはメラルクの背後に鎖で繋がれたシャイニーエンペラーの遺骸を見ている男が居た。音も無く突然そこに現れたのだ。
男
「ふむ。魔法で肉体を維持しているのか。よい!その魔法諸共滅してくれる!」
神官
「!貴様、シャイニーエンペラーか!何故生きている!貴様は死んだはずでは」
ラゼート
「やめろ!!その素材に触れるなぁ!!」
ラゼートが叫ぶのと同時、男、シャイニーエンペラーの右手が異常な熱を持って火の粉がちらつき始める。
シャイニーエンペラー
「これはもうこの世界には不要なり!滅せよ陽の熱よッ!!」
ゴォと言う音と共にシャイニーエンペラーの遺骸は業火に焼かれ塵も残らず消え去った。
神官
「なんだその力は…光魔法ではないな。貴様は一体」
シャイニーエンペラー
「余はもうただの光を司る者ではない。陽の加護を受けた太陽神と言っても過言では無い、この世界で唯一貴様らの思い通りにならなくなった存在よ!」
神官
「太陽神だと?ふざけた事を!」
シャイニーエンペラー
「心して聞くが良い!神を騙る不届き者よ!
神官
「待て!」
神官が伸ばした手が触れるより早く、シャイニーエンペラーは移動魔法を展開して消えた。
カンナギ
(…予言の使者は上手くやってくれたようだな。エンペラーの属性が変質しているのは予想外だったが…)
ミコト
「今のがシャイニーエンペラーかぁ。いい男だったな」ペロリ
カンナギ
「おやめなさい」
ヒノワ
「さすが神竜。美しい見目だったわね」
カンナギ
「宰相まで」
ヒノワ
「ところで皇帝。天子が管理していたルービィシニアンなのだれけど。誰が管理するのかしら。やっぱり後任の元帥?」
カンナギ
「いや、元帥には今まで通りヴィルムートだけを管理してもらう。負担を増やしたくない。元帥の後任に任せるか、俺が管理しようかと思ってるが」
ヒノワ
「なら
カンナギ
「宰相に?能力的には頼めるけど…」
ヒノワ
「何か問題が?」
カンナギ
「んーまぁ良いでしょう。ではルーヴィシニアンの管理は宰相に任せる」
ヒノワ
「ありがとうございます」
ラゼート
「皇帝様もお姉様には逆らえないんですねぇ。ひひひ」
カンナギ
「学ばないなお前は」
ラゼート
「はいはい。黙りますよぉ」
カンナギ
「以上で本日の議題は終了ですが、何かございますか天帝」
メラルク
「うむ。以前から気になっていたのだが」
カンナギ
「組織支給のローブなら着ませんよ」
メラルク
「…」
カンナギ
「違いましたか」
メラルク
「いや、そう。なんで着てくれないのだ」
カンナギ
「デザインが好きじゃない」
ヒノワ
「魔女感が無いのよね」
ミコト
「ダサぁい」
【中将】ツクヨ・シンルード(ランクA級)
「かわいくないんだもん」
【将軍】アルバディス・ドラコチュアン(ランクA級)
「動きづらいんですよね」
【准将】デュオライ・ドラコチュアン(ランクB級)
「あと重くて暑いんすよ」
ティナート
「申し訳ありませんが、私も好まないですね」
ラゼート
「そうですかぁ?ワタシはこれ好きですけどねぇ」
ミコト
「お前は衣装に興味無いだけだろ」
ラゼート
「これは心外ですねぇ。そんなことないですよぉ?けひひ」
メラルク
「(´・ω・`)」
カンナギ
「他の師団員は着てるんだから良いじゃないですか。幹部は皆それなりの実力者です。そのぐらいの自由は良いのでは」
メラルク
「しょうがないのぅ…」
カンナギ
「では以上で終了します。解散」
幹部が帰って行った広間でメラルクはちょっと泣いた。実の子達の容赦ない言葉にちょっと傷付いた。組織支給のローブはメラルクがデザインしたものでかなり気に入っていた。
神官
「…私はあのローブ良いと思いますよ」
メラルク
「神官様…」
◈◈◈
ルノマの集落
【御神洞 屋敷】
シャイニーエンペラー
「戻ったぞ!」
カティリア
「あ、お帰りなさいませ。シャイニー様」
シャイニーエンペラー
「うむ。おや、随分静かだな。誰も居ないのか?」
カティリア
「皆さん集落の復興作業の手伝いに行かれました。ボクはシャイニー様へこの事をお伝えするのに残っていました」
シャイニーエンペラー
「そうか。では参ろうか!」
カティリア
「え?どこへです?」
シャイニーエンペラー
「勿論、集落の復興作業だ。余の大事な集落だからな。民を守るのは当然であろう」
カティリア
「…はい!そうですね!ボクも集落のみんなのお手伝いしたいです!」
シャイニーエンペラー
「うむ!では共に参ろう!」
シャイニーエンペラーとカティリアは並んで一緒に集落へと向かった。集落では住人達と天花達が手分けして復興の作業をしている。元々石と粘土で造られた家々はそんなに崩れてはいなかったので、激しく崩れた所だけを重点的に直していく。
シャイニーエンペラー
「そんなに大きな被害は無かったようだな。安心した」
住人①
「!その、お顔のお印は!もしかしてエンペラー様ですか!」
シャイニーエンペラー
「うむ!このルノマを治めるシャイニーエンペラーだ!」
住人②
「おぉ!シャイニー様!お久しゅうございます!しかし、失礼ながら、あなた様はお亡くなりになられたはず…そのお身体も奴らに奪われてしまって…」
シャイニーエンペラー
「そうなのだがな。極東からの御使いが余を再度生まれさせてくれたのだ」
住人②
「そうでございましたか。しかし再びお姿を拝見できて嬉しいです」
シャイニーエンペラー
「うむ。余もそなた等に再び会えて嬉しいぞ。そなたは熱心に供えの品を持ってよく余の元へ祈りに来ていたな。名は、確か…ヒルバ…そのような名だったな」
ヒルバ
「おぉ!覚えていてくださいましたか!ありがとうございます!」
シャイニーエンペラー
「忘れるわけなどあるものか!皆大事な我が子よ!」
住人③
「しかし、極東からの御使い様とはあの天花、という方達でしょう。そんなにすごい方達に集落の復興など手伝わせていいものか」
ヒルバ
「確かに」
シャイニーエンペラー
「良いのだ。彼らはこの世界を調律しに参った者達。これもその内のひとつだ。安心して任せるが良いぞ」
ヒルバ
「シャイニー様がそう仰られるなら…」
シャイニーエンペラー
「うむ」
ヒルバ達に別れを告げて他の住人達を見回る。皆大きな声では言わないがこそこそとカティリアの話をした。神竜様が復活なされた今、もうカティリア様のお役目は終わったのだと。一通り集落を回ったシャイニーエンペラーとカティリアは御神洞の屋敷へと戻って来た。
カティリア
「…」
シャイニーエンペラー
「カティリア。我が子よ顔を上げよ」
カティリア
「!は、はい。なんでしょう」
シャイニーエンペラー
「確かに余が再び生まれた事でお前の役目は終わった」
カティリア
「っはい…」
シャイニーエンペラー
「だがな。終わったのは余の代理という仕事だ」
カティリア
「え…?」
シャイニーエンペラー
「お前には次の役目がある。それは姉上達、天花達をルクスースの王の元へ送り届ける事。その次は天花達にお前の力を貸す事。その後は、そうだな。余の元へ戻り余の身の回りの世話をする事。もちろん余の元に戻らなくても良い。世界は広いのだ。お前の好きにするといいさ」
カティリア
「シャイニー様…」
シャイニーエンペラー
「な。こんなにもお前にはやる事がある。その命尽きるまでお前はお前だ。何者にも[[rb:穢 > 汚]]される事の無い者だ。集落の者の中にはお前より強い者に縋り信仰を変える者も居るだろう。だがそれはお前には関係の無い事。酷い言い方だがな。お前はお前の道を歩むが良い。誰もお前に役目を強制したりはしない。まぁ、かく言う余がお前に代理等という役目を押し付けたのだから、余には何も言う権利は無いがな」
カティリア
「ありがとうございます。シャイニー様。ボクは、生まれてきて良かったと思います。…とても、幸せです」
シャイニーエンペラー
「カティリア…。お前の人生これからだぞ!」
カティリア
「はい…!///」
天花
「たでーまー。あー疲れた」
カティリア
「おかえりなさい。もう今日の分は終わったんですか?」
天花
「いや?神竜が帰って来たって聞いたから戻って来た」
カティリア
「そうでしたか」
シャイニーエンペラー
「丁度良かった。余も姉上達に話があったのだ」
天花
「おん?なんだ?」
シャイニーエンペラー
「余の名についてだ」
天花
「あぁ無いと不便だもんな。でもオマエシャイニーエンペラーが名前じゃねぇのか?」
シャイニーエンペラー
「それは人間が神竜の王に対して付けたあだ名のようなもの。神竜にはそれぞれ真名が存在する。原初の母より
「ならぬ」
シャイニーエンペラー
「ん?」
天花
「誰だ?」
女性の強い声がして全員がそちらを見る。屋敷の前には一人の女性が立っていた。漆黒の闇に塗られたような美しい髪。光を受け付けない瞳。左目の下には隈のような模様と左頬にシャイニーエンペラーの額にあるのと同じ印があった。
シャイニーエンペラー
「ダークネス。久しいな。ルノマまでどうしたのだ」
ダークネスエンペラー
「貴様の気配が急に濃くなったのでな確認しに来てやった。空の果てで光が弾けて散った。他のエンペラーにも伝わっている。貴様、本当にシャイニーか?変質している様だが」
シャイニーエンペラー
「なに、誕生の瞬間に陽の加護を少し受けただけの話よ」
ダークネスエンペラー
「ふん。禁は犯していないようだが…そも、貴様どうやって生き返った。誕生と言ったか?」
シャイニーエンペラー
「そこな母上が余を産み落としてくれたのだ」
ダークネスエンペラー
「母上?貴様の一族は総て殺されたと聞いたが?」
シャイニーエンペラー
「それはそうだが。極東より参った遣いの者、医神の兄上の秘術によって母上の胎内に宿り生れ落ちた。自らを育み産み落とした者を母と呼ぶのは道理であろう?」
ダークネスエンペラー
(極東よりの遣い?あの御方の手の者か…)
天花
「おい、シャイニーエンペラー。話が見えないんだが、誰だそいつは」
シャイニーエンペラー
「あぁ、こやつは闇を司る神竜。ダークネスエンペラー。余の妻だ」
天花
「妻ぁ?」
牡丹
「あら、アンタお嫁さんなんて居たのね」
ダークネスエンペラー
「光と闇、対になる存在故に夫婦と同一視される様になったのだ。実際の夫婦ではない。そも
シャイニーエンペラー
「なんだ。そなた余は好かぬか」
ダークネスエンペラー
「素直なところは嫌いではないな」
シャイニーエンペラー
「ならば良いではないか」クハハッ
天花
「で?結局名前がどーしたって?」
シャイニーエンペラー
「そうであったそうであった。余の真名を姉上達に明かそうとしていたのだったな」
ダークネスエンペラー
「ならぬと言った。我等の真名がどれ程重いものか理解しているだろう。守人以外に明かさぬ理由を理解しているだろう。我等は世界を創る者。何者にも手を貸さぬ。我等の力は世界の為のモノ。どれかひとつに加担する様な事があってはならない。我等は純粋無垢なれば真名を知られれば簡単に捕まってしまう。故に仕える守人に対してのみ信頼の証として明かすのだ」
シャイニーエンペラー
「勿論理解している。だからこそこの者等に明かすのだ。そもこの者等は余の力を頼らずともそれぞれが一騎当千の力を有している。心配は要らない。この者等は我等神竜が治せずにいる世界の歪みを正す者。我等の代わりに泥を被るのだ。故に余は信頼の証に真名を明かす。これは余の最大の礼儀だ」
ダークネスエンペラー
「…そこまで言うのならば最早止めなどしない。精々後悔の無い様にな」
シャイニーエンペラー
「うむ。すまぬな。ヨトついでだからこれを成人の儀式としよう。それからリク、そなたは特別だ。誰にも内緒にするのだぞ?」
そう言って人差し指を口元に当てて人懐こく笑うシャイニーエンペラー。
リク
「ないしょですね!わかりました!あ、でもそんなに大事なものならリクはおうちに帰ったほうが…」
シャイニーエンペラー
「仲間外れは良くない。それにそなたも余が無事生まれるようにと色々してくれたのであろう?」
リク
「!っはい!」
カティアレイス
「では、改めて。我が名はカティアレイス。溢れる光という意味だ。ちなみにカティリアは小さな光という意味だ。まぁ、名は明かしたが先程ダークネスが言った通り他所に知られる訳にはいかないのでな。今まで通りシャイニーエンペラーと呼んでくれ」
天花
「ふん?カティリアは名を知られてもいいのか?」
カティアレイス
「我が子は神竜では無いからな。名で縛られる事も無い故よいのだ」
天花
「ふーん?まぁ、オマエの名は受け取った。じゃああれだな!オレも名を明かすべきだな!」
カティアレイス
「天花が名ではないのか」
天花
「それはまぁオマエと同じ。あだ名ってヤツだな。オレは天咲花姫が本名だ。オレの名前は別に隠してねぇから好きに呼んでくれ」
カティアレイス
「ほう。良い名だ。姉上にぴった、ぴったり…か?姫のイメージから随分かけ離れているが?」
天花
「残念だが姫なんだ」カッカッカッ
ダークネスエンペラー
「では吾は帰る。邪魔したな」
カティアレイス
「あぁ。ダークネス。会いに来てくれて嬉しかったぞ。この時期に土地を離れて良かったのか?」
ダークネスエンペラー
「構わぬ。貴様の方が大事だったからな。それに吾の守人は優秀だ。一日やそこら土地を離れたとて問題は無い」
カティアレイス
「そうか。次会えるのは
ダークネスエンペラー
「言われるまでも無い。おい、人間…ではないな貴様等。まぁいい。世界を修復するのならば貴様等は必ずルクスースに寄るだろう。そこは吾の土地だ。ルクスースの王に会うのならばその前に吾の所へ来るがよい。話を通してやろう。無事にルクスースへ辿り着ければ、だがな」
天花
「なぁに。すぐに辿り着くさ。オレ達は最強だからな!」カッカッカッ
ダークネスエンペラー
「ほう?自ら最強を謳うか」
ヨト
「このヒトたち最高位創魔師をひとり倒してる。無事にルクスースに行けるよ」
ダークネスエンペラー
「最高位創魔師を?奴等の言葉を借りれば貴様等は最低でも魔術師ランクS級以上という訳だ。成程。貴様等の評価を少し変えなくてはな」
天花
「まぁ、そーいうことになるか」
ダークネスエンペラー
「もし、無事にナルテマの集落まで辿り着けたらの話だが。その実力を認めて吾も名を明かしてやってもよい。そして他の神竜の名も集めるがよかろう。それは神竜の信頼を集める事と同義。世界を救うのならば神竜は手を貸すだろう。それに我等には神から取り戻さねばならぬモノがある。敵は同じという訳だ」
天花
「ま、味方は多い方がいいわな。カミサンに歯向かうなら尚だ」
ダークネスエンペラー
「ふん。健闘を祈る。ではな」
移動魔法を展開して音も無く消えるダークネスエンペラー。
カティアレイス
「高圧的な態度をしているが根は悪い奴ではない。許してやってくれ」
天花
「構わんさ。それよりさっきから言ってるルクスースってなんだ」
カティリア
「ルクスースはこの世界で唯一
天花
「最強の王サマ?ふーん?ソイツ男?」
カティリア
「え?えぇ。スメラギ王という方でまだお若かったと思います」
天花
「
カティリア
「まずはルノマを調律して頂いて、次にルドリアを通ってマゴノリアを目指します。そこからルクスース行きの船が出ているのでそれに乗ってルクスースに行きます」
カティアレイス
「ルノマならもう大丈夫だ。すぐに
カティリア
「ですが…」
カティアレイス
「カティリア。ルノマの民は強い。大丈夫だ。それにお前、内心わくわくしているであろう?余には分かるぞ?険しい戦いになるだろうが旅を楽しむといい」
カティリア
「そ、そんな…ボクは…」
カティアレイス
「隠すな隠すな。姉上達を宜しく頼むぞカティリア」
カティリア
「は、はい!あ、ですが、食事はどうしましょう…ヨトは料理出来ないですし…」
カティアレイス
「それも大丈夫だ。リク、そなたできるな?」
カティリア
「∑えぇ!?」
リク
「わ、わたしですか?まだひとりでは作ったことなくて…」
カティリア
「そうですよ。リクちゃんはまだ修行中です」
カティアレイス
「カッカッカッ!ならばこれも修行と思えばよい。リク、歳は幾つになった?」
リク
「え?10歳です」
カティアレイス
「ならば出来よう。なぁに下手でも失敗しても構わん。修行だからな!但し怪我だけはしてくれるな?それにリクが世話をしてくれないと困る。男二人では何も出来ない。カティリアが
リク
「……わかりました!がんばります!」
カティリア
「リクちゃん…」
リク
「わたしもカティリアさまのお役に立ちたいです!///」
カティリア
「ありがとうございます。でも本当に大丈夫ですか?」
カティアレイス
「なんだ?パワーアップした余が信じられぬか?」
カティリア
「そ、そういうわけでは…すみません」
カティアレイス
「ルノマと神域の行き来しか出来ぬ余の代わりに世界を見て来てくれカティリア」
カティリア
「シャイニー様…」
カティアレイス
「そういう訳だ。明朝には発つがよい。世話になったな」
天花
「わかった」
袮雪
「じゃあちび達は今日が最後だからリクちゃんと思いっきり遊んでおいで」
露草
「遊びましょリクちゃん!」
睡蓮・白藤
「「あそぼー!!///」」キャッキャッ
リク
「うん!///」
夕飯までめいっぱい遊んで楽しく食事をして、寝静まった夜。天花は月明かりに照らされた水面とシーンの花を見ながら酒を呑んでいた。
カティアレイス
「…美しいだろう?この狂った世界にもこうした美しい景色がある」
天花
「そうだな」
カティアレイス
「神は寂しい御方なのだ。故に狂った。眷属…いや、違うな。写し身たる余には痛い程気持ちが伝わってくる。…あの御方を頼んだぞ姉上」
天花
「おう!お姉サマに任せなさい!全部マルっと救いあげてやるよ!」カッカッカッ
カティアレイス
「ふはっ!頼もしい!頼もしいついでに我が子、カティリアの事も宜しく頼む」
天花
「色んなアソビを教え込んでやるw」(o´罒`o)
カティアレイス
「おいおい。悪い事は吹き込んでくれるなよ?」カッカッカッ
静かに更けていく夜。天花とカティアレイスは酒を酌み交わしながらいつまでも笑い話をしていた。
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