ACT.5.5(間隙を縫う独白)

 EUREKA——我、発見せり。

 風呂から飛び出したアルキメデスの発見は浮力の原理。

 現実から飛び出した僕が見つけたのは、結局の原理。

 原理? そんなものじゃない。

 ついに、とうとう、とどのつまり——結局。

 そこから逃げるコトなど出来なくて、ヒトのいるべき場所はやっぱり現実以外の何処でも無くて。

 結局僕は父母を殺し、

 結局僕は逃避も叶わず、

 結局——

 こうして現実に戻り、カタンとしての生を全うする。

 思う通りに運ばないコトに溢れた世の中で、またいつものように異常な日常に返るんだ。

 変わるコトなど何も無い。永遠にこのままでいたかった。現状に執着していたかった。

 それは叶わないコト。

 結局、

 最悪の結果を爆走する未来の上に乗っている。



 父さんは何を言おうとしたのかな。

 呪詛でも吐こうとしたのかな。それにしては、随分安らかなカオしていた。

 夢を見たのかな。

 死ぬその寸前に、お母さんの夢を見ることが出来たのかもしれない。

 だから笑っていたのかな。

 まるでお祖父ちゃまの死に顔のように安らかだった。



 ……小さな頃は、

 御伽噺が好きだった。

 悪役達はちゃんと懲らしめられて、なんの取り柄もないハズの女の子はお姫さまになれた。みんなみんな最後には幸せになって終わって、それが凄く凄く嬉しくて、

 御伽噺が好きだった。



 ……いつ頃からか、

 御伽噺が嫌いになった。

 悪役は悪役、たったそれだけのレッテルを貼られてあとはどんなひどい目に合ったとしてもそれはそれで因果応報扱いされていた。振りかざす倫理や正義なんか全て他人が決めたもので、それが正しいのかどうかなんて考えることもない癖に自分が正しいのだと思い込んで、そうして『幸せな結末』を強引に造っているから、

 御伽噺が嫌いになった。



 夢を見たの、どんな夢を見たの?

 訪れなかった幸せな家族。

 お母さんとお父さんと、それから自分。

 『家族』がなんなのか考える事も考えつかず、幸せだけを満喫して、自分の意思のみで生きる——そんな自分。

 夢を見たの、どんな夢を見たの?

 目の前で体温を失っていく死体。

 安らかな死に顔をたたえて、最期の言葉は聞こえないままで。

 目の前で大切な人が死ぬのは二度目だった。



 どこにいけばイイのか教えて下さい。

 どこへ帰ればイイのか教えて下さい。

 心の帰ることが出来る場所を、

 どこか安心を与えてくれる場所を、

 ……おしえてください。

 どこになら、いても良いんですか?

 本当は、

 誰にも内緒だったけれど、

 自分にも内緒にしていたけれど、

 知っていたんだ——だって僕は賢いから、なんてね。



 誰より救われたいのは、僕でした。






「……結局、僕は自分の父親も殺してしまった。しようがないんだよね、理っていうのは曲げるべき物じゃない。人間が勝手に決めた決まりなんかとは違って、『決めた』んじゃなくて、必要だからこそ『決められていた』モノが理なんだもの。それを守れなくては社会の不適合者だから、とか、そういうものじゃない。法が先にたって問題があとを付いて行くような物じゃなく、守らなくちゃ危険だっていう問題が先にたっているものだから、それは遵守しなくちゃならない——ごめん、ちょっと難しいかな……僕もよく解ってない」

「……そうでもないわ。ごめんなさい、暇つぶしになんて聞いていい話ではなかったのね」

「あ、そんなのはイイんだよ……ちゃんと吹っ切れてるんだ、今は」

「『今は』?」

「うん、実は後日談もちょっとだけあって——あぁ、ホントに恥ずかしいのはココからなのかな?」

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