第32話 豪運の乃彩

「あれ? 乃彩さんそのネックレスどしたんですか? 買ったんですか?」


 旅館に戻ると姉さんが暇そうにベッドに腰掛けて足をぶらぶらさせていた。

 勝手に飛び出して勝手に暇そうにしてるって一体なんなんだこの人。


「ふふーん龍斗が私にプレゼントしてくれたの! 綺麗でしょ」


「そうなんですか! 良かったですね乃彩さん。まさか、龍斗が女の子にプレゼントをあげる日が来るなんて思いもしなかったわ」


「メチャクチャ僕に失礼だろ……プレゼントくらい……するだろ」


 思い返してみれば、誰かにプレゼントを送った覚えがない。

 考えてみれば図星では?

 いやいや、そんなことはない。

 今日から乃彩にプレゼントを贈ったからな。

 うん。


「どんどん声が小さくなってるぞー全く、素直に認めれば良いのに。可愛げがないな〜」


 姉さんに揶揄われて少しムッとしてしまうけど、乃彩の表情は凄く嬉しそうで首につけたネックレスを愛おしそうに撫でていた。

 そんな表情を見せられてはいつもみたいに軽口は言えないし、あのプレゼントは本当に乃彩に感謝を伝えたくて買ったものなんだからそこまで必死になって照れ隠しなんかしなくてもいいのかもしれない。


「ていうか、姉さんはいつ戻ってきたんだよ」


「ついさっきだよ? 結構ブラブラして飽きちゃったから帰ってきたの。二人も楽しんできたみたいだね」


「まあな。じゃあ、僕は自分の部屋にでも戻ってようかな。夕飯まではもう少し時間があるだろうし」


 今の時間は五時過ぎだから、夕飯の六時までは時間がある。

 久しぶりにはしゃぎすぎて疲れたし。


「ダメでしょ。せっかくこうやって三人で旅行に来たんだから、トランプでもしよう!」


 姉さんの唐突な誘いに断ろうとするが……


「いいじゃん! やろうやろう」


 乃彩もノリノリのようで今更断れるような雰囲気でもなくなってしまった。

 それに、せっかくの旅行なんだからこういう時くらいは三人で全力で楽しむのもいいかもしれない。


「わかった。何するんだ?」


「じゃあ、定番のポーカーにしよう!」


「……どこが定番なんだよ」


 こういう時は普通ババ抜きとか七並べとかそう言うのをやるもんじゃないのだろうか?

 こういう変なところも姉さんらしいと言えばらしいのかな。

 まあ、やるのなら全力だ。

 例えお遊びといっても勝負は勝負。

 絶対に負けるわけにはいかないのだ。


 ◇


「……なん、だと?」


「龍斗絶対に勝ちを確信してたでしょ。ダメだよ? ポーカーフェイスは守らないとさ」


 僕の手札は2の4カード。

 対する乃彩はロイヤルストレートフラッシュ。

 ポーカーに置いて最強の手札で僕の4カードは捻りつぶされた。


「相変わらずポーカー強いですね。絶対に龍斗が勝つと思ったのに」


「なんでそんなに引きがいいんだよ……」


 この手で勝てないならもう手の打ちようがない。

 と、なんやかんや僕たちは白熱したポーカーを繰り広げて気が付けば六時になっていた。

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