祈りは硝煙に、花は血に咲く
ダン、ダン、ダン――と、連続して発砲音が響き渡る。
全ての銃弾が相手の眉間を正確に撃ち抜き、瞬く間に3人の屈強な男たちが即死する。
「あら、武闘派と聞いていたけれども、案外と大したことがないのね」
余裕の笑みを浮かべつつ、少女は悠然と歩みを進める。
そんな光景を見た配信のコメント欄は更に加熱していた。
『すげぇー! たった数秒で3人も殺しやがった!!』
『ほぼ全員ヘッドショットだぜ!? やばすぎww』
『いやもう、なんちゅうか……やべぇなこれ……』
『やっぱつえーよコイツ!』
『ハンドガンでヤクザのアジトに突っ込むとか頭おかしいw』
『いやほんとそれなw』
『これで14人目か? 連続ヘッドショット記録更新中!』
『3人目で心臓ぶち抜きで即死させて、それ以降は全部眉間撃ち抜きしてっぞ』
『怖すぎワロタwどんだけ精密な射撃だよww』
『いや、これ現実だよな? ゲームじゃねぇんだよな?』
少女の背後を飛ぶ自動追尾ドローンが、まるでFPSゲームのような映像を映し出す。
彼女の右側前方には、加速的に流れるコメント欄が電子投影されていた。
それを横目で確認しながら、少女は静かにリロードを済ませる。
「みんな、コメントありがとね♡ ちなみに3人目の男の人は角度的に眉間が狙えなかったから、心臓を撃ち抜くことにしたの。本当は全員ヘッドショットで殺したかったんだけどね♪」
『こっわwwww』
『いや、戦闘中にコメント読む余裕あるのスゴすぎw』
『ELたそ、見てる~~?』
『淡々と急所を狙って殺してるのが逆に怖い……』
『つーか今、普通に銃弾避けなかった?』
「ふふっ♪ みんなのコメントはちゃんと全部見てるわよ♪ ちなみに銃弾を避けるぐらい、初歩中の初歩よ♡」
『初歩wwww』
『銃弾避けるのが初歩とかwwwww』
『普通無理だろwwww』
『コメント全部読むのも、弾避け出来るのも、動体視力良過ぎでワロタwwww』
『嘘みたいだろ? 超高速で流れるコメント全部見えてるとか、信じられないんだが』
『コメントも全部読めるとか超能力者やんw』
『もう人間やめてるだろwww』
少女はくすりと笑い、銃口を軽く下げた。
「……さて、残りはあとどれくらいかしら?」
コメント欄の喧噪とは裏腹に、現場には静寂の中、硝煙の匂いと濃い血の香りだけが残る。
配信画面の隅には”8万7千視聴中”の文字。
その数を見ても、少女の表情は一切揺らがない。
歓声でも称賛でもない。
――彼女はただ、殺戮そのものを愉しんでいた。
そのとき、バンッと扉が弾け飛ぶ。
「いたぞ、あの女だっ!!」
現れたのはスキンヘッドの男を筆頭に、5人のスーツ姿の男たち。
それぞれの手には黒光りする拳銃が握られている。
「このガキが……嘗めた真似しやがって!」
「ぶっ殺してやる!!」
「ここまでだ、大人しくしな!」
銃口が一斉に向けられる。
だが、少女はまるで退屈そうに息を吐いた。
次の瞬間――パァンッ!
乾いた銃声。
スキンヘッドの眉間に銃弾が突き刺さり、男は糸が切れたように崩れ落ちる。
「これで15人目♡」
「あ、兄貴!?」
「く、くそっ!!」
「この女ぁっ!!」
怒号と共に銃弾の雨が降り注ぐ。
しかし、少女の体は風のように揺れ、すべての銃弾を紙一重でかわす。
絹糸のような綺麗な髪が銃弾の風圧でわずかに揺れただけだった。
「16、17、18人目」
引き金が三度。
3発の銃弾が、3つの眉間を正確に貫く。
「ひ、ひぃっ……!?」
最後の1人が尻餅をつき、震えながら後ずさる。
「あら? もう終わりなのかしら?」
両手に拳銃を携えながら、少女が男にゆったりと近付いていく。
それはさながら死神の行進のようだった。
「ま、待ってくれ! 降参だ! 命だけはどうか助けてくれっ!!」
男は両手を挙げて命乞いをする。
だが、少女の瞳はどこか遠くを見ていた。
硝煙の向こう、左目のあたりがふっと疼く。
その微かな痛みが、誰かの名を思い出させるように――。
「だぁーめ♡ ばいばーい♡」
額に銃口を当て、引き金。
――脳が砕け、血が床に散る。
返り血が頬を伝うが、彼女の微笑みは揺るがない。
「19人目♡」
『おぉおおおおーー!!』
『痺れるぅううう!!』
『ヤクザさんたち、可哀想すぎるwwww』
『容赦なさすぎだろ、この子wwww』
『流石は殺戮天使様だぜ!』
『さすエリ!』
『いやぁ、それにしても一瞬で5人も殺るなんてやるじゃん』
『ヘッドショットにこだわりを感じるな』
「あっ、別にヘッドショットが好きな訳じゃないわよぉ。その方がとても丁寧に殺してあげられるでしょ?」
彼女は頬についた血を指でなぞり、ゆっくりと拭った。
赤い滴を見つめ、嬉しそうに微笑む。
「殺すだけなら、ライフルで雑に殺ってもいいの。けどぉ……花は芝刈り機で刈るより、
『ヤクザを花に例えんなww』
『感性イカれてて草ww』
『つまり、ただのサディストってことでは?』
『サイコパス確定www』
『いや、もう神話の領域だろw』
『てか、ほんとに皆殺しにするつもりなのか?w』
『そこまでここのヤクザさん、誰かに恨みを買ってたの?』
『これって依頼? 報酬とかどれくらい?』
「あぁ、それもそういうのじゃないの。誰かしらの恨みは買ってるでしょうけど、別に私がここのヤクザさんたちを殺すように頼まれたとかではないわぁ」
『ん?』
『は?』
『えっ?』
『はい?』
「ここの人たちがいるとね、ある人にとってちょっと良くないの。だから、今の内に全員始末しておこうと思ったの♡」
『えーっと、つまり?』
『ここの組、ELちゃんに勝手に因縁を付けられた模様』
『誰かにとって不利益だから殺しておこうってことじゃね?』
『それにしてはやりすぎなのでは?w』
『というか誰かって……誰?』
『ある人?』
『誰のために殺してんだ?』
『伏線きた?』
少女は小首をかしげて微笑む。
「ふふっ、それは――内緒♡」
『うわ、出たよ殺戮天使の意味深台詞w』
『誰かの為って言ってるのが逆に怖いw』
『まじで何者なんだよ……』
「ということで、まだまだどんどん殺っていくから……何かリクエストとかあれば応えていくわよぉ。だ・か・ら……いーっぱいコメントして頂戴ねぇ♪」
『了解しました!!』
『りょ』
『イエッサー!』
『グロくいこう!』
『じわじわと!』
『芸術的に!』
『当方、相手をいたぶるように殺すのを希望』
『↑ドSニキこわE』
『↑鬼畜過ぎて草生え散らかしてる件』
『コメ欄まで狂気で草wwww』
「あらあら……それじゃあ、みんなの期待に応えてあげるわぁ♡ ふふっ♡」
そして少女は再び歩みを進めた。
硝煙の中を、優雅に、無邪気に。
あっさりと殲滅するのではない。
誰も逃がすことなく、1人残らず確実に始末する為に。
断末魔の叫びと乾いた銃声。
そして女神という名の死神が放つ足音と笑い声だけが建物内に響き続ける。
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