人気女性配信者”殺戮天使EL”の過激で危険な動画配信~裏配信界の女神は今日も愉悦に微笑む~
八木崎
刹那に微笑む、死へ誘う女神
『こんばんは』
『おっすおっす』
『皆さん、おばんです』
『こんキルル~。今日も派手に暴れてくれるんかなぁ』
『初見です』
『おっ、初見さんいらっしゃい』
とある配信サイトのコメント欄にて、何十人、何百人もの視聴者による挨拶が飛び交う。
配信開始前だというのに、既に視聴者の数は数千人を記録し、その数は更に伸び続けている。
視聴者たちが注目しているのは1人の配信者の存在だ。
その名も『殺戮天使
チャンネル登録者数はゆうに50万人を突破しており、それはサイト内ではトップクラスの数字だった。
――DarkTube。それは表のネットからは絶対に辿り着けない闇の遊戯場。ダークウェブ上の配信サイト。
殺戮、拷問、潜入、実戦、人体実験等々、世界の禁忌をエンタメ化した、歪んだアンダーグラウンドコンテンツの巣窟。
そんな過激で特殊な世界で脚光を浴びる存在こそが『殺戮天使EL』なのだ。
真っ暗な待機画面を前にして、配信を見に来た誰もが期待と興奮を募らせていく。
『今日の配信も愉しみー』
『今回はどんな配信なんかなぁ』
『wktk』
『早く始まらないかなー』
『てか、同接ヤバくね?』
『即2万超えとかスゲーよな』
『前回の配信も凄かったからな!』
『最高だったよね』
『観てないやついる? グロいけど、神回だから観ろよなー』
『てか、まだ始まんないんかよー』
『はやくしてくれぇえええ!!』
待ちきれないとばかりに流れるコメントたち。
中には過激な発言をする者たちもいて、場は徐々に熱狂していく。
待ちきれないと言わんばかりに視聴者たちのボルテージは上がっていく一方だった。
同接人数は更に増え続け、今では5万3千人を超えている。
それだけ多くの視聴者が注目しているという事だ。
そんな中、ようやく待望の時間がやって来る。
待機画面から切り替わり、画面に現れたのは十代半ばほどの少女だった。
『始まった!!』
『キタ━━━(゚∀゚)━━━━!』
『ELたそ~~~!!』
『待ってましたッ!』
『えりちゃーーーん!!!!』
『うひょぉおおおおおおおお!!!!』
歓喜の声と共に無数のコメントが流れ始める。
瞬く間に大量のコメントが表示されていく様は圧巻の一言であった。
そして多くの歓声に応えるように、少女は口を開く。
「ふふっ、こんばんはぁ。それから、みんなお待たせ。見に来てくれて、ありがとねぇ♡」
蠱惑的な笑みを携えながら、甘い口調で言葉を紡ぐ。
まるで恋人に話しかけるような優しく甘い声音は聞く者を魅了した。
そんな少女の外見はというと、愛らしさと異質さを兼ね備えている。
明るいピンク色の髪を黒いリボンで結び、ツインテールにしてまとめている。
肌の色は透き通るように白く、きめ細かい。手足は華奢でほっそりとしている。
服装は喪服のような色合いのゴシックドレスだ。
所々にフリルやレースがついており可愛らしいデザインとなっている。
そして何よりも印象的なのはその眼だ。
宝石のような碧眼の右目、その反対には……無骨な眼帯が着けられている。
全体的に可愛らしく纏まっているが、その眼帯だけが奇妙な違和感を生み出していた。
しかし、逆にその眼帯が少女の愛らしさを際立たせているようにも思えてくる。
だからこそ、そういった少女の魅力に視聴者の誰もが虜となっていた。
「前回の配信が確か……3週間前だったかしら? 今日は久しぶりの配信になるけど、今回もたっぷり愉しんでいってちょうだいねぇ♪」
『はーい!』
『楽しみすぎるぅうう!!』
『もちろんだぜェエエッ!!』
『相変わらず可愛い~♡』
『顔ちっさ!』
『めっちゃ綺麗……』
『衣装似合ってるぞおおおおおお!!!!』
「あはっ♡ どうもありがとね♪ そう言ってもらえると嬉しいわぁ♪」
『やっぱりかわいいよなあ、この子』
『マジ天使すぎてヤバいんだが……』
『癒される~。流石は裏配信界の女神ですわ』
『ところで今日は何をするの?』
『kwsk』
『前回は暗殺するまで帰れない雑談配信だっけ?』
「そうねぇ。今日の配信は……ふふふ、そう簡単に口にしたら、面白くはないわね」
少女はそう言うと、自らの唇に人差し指を押し当ててみせる。
まるで小悪魔めいた振る舞いを見せる少女。
その仕草はとても魅惑的で艶めかしくも見えた。
『焦らすねえ』
『一体なにするんだ!?』
『気になるゥウウウッ!!!』
『焦らし上手! いいゾ~これっ!』
「じゃあ、今日の配信内容を発表する前に、ちょっとしたゲームをしましょっか?」
少女がそう言うと同時に、カメラが少女から離れ、別の景色を映し出す。
そこはどこかの街中、ビルの屋上の風景だった。
ビルの下からは眩いライトによって照らされており、夜にも拘らず明るすぎる程だ。
その光景を見て視聴者たちは察する。
この撮影の舞台はどこかの繁華街であり、そこでこれから何かを撮ろうとするのだと。
しかし、肝心の何かが映らないため、視聴者たちには何が起こるのか分からなかった。
「今から撮影用の自動追尾型ドローンを使って、街の風景を流しまーす。そ・れ・で……私がここで何をしようとするのか、当ててみてね♪」
そして映像を映しているカメラ――ドローンがその場を離れ、空撮を開始した。
賑やかで活気のある街並みが映し出される。
高層ビルが立ち並び、ネオンの看板が輝いている。
そんな街中では普通に人が行き交っており、夜の街を彩っていた。
人々が楽しそうに談笑しながら歩いていく光景、それは平和な日常そのものと言えるだろう。
『ここってどこなの?』
『看板の文字が日本語だし、日本のどこかじゃね?』
『けど、こんなところで何をするのかしら?』
『分かった! 街で無差別テロ起こすんだろ!?』
『ちょっwwww流石にそれはないだろwwww』
『いやいや、この中にいるターゲットをサイレントキルするに違いない』
『うーん、分からん』
『ほら、さっさと答え合わせしろよ』
「くふふ♪ そう焦らないの♡ もう少し待っていれば、じきに分かるわよ♪」
それからドローンはビルの合間を飛び回りながら、街中を俯瞰的に捉えていく。
やがてとある建物の前へと辿り着き、その場で滞空し始めた。
どうやら目的地に到着したらしい。
『なんだこの建物?』
『どっかの企業ビルか?』
『あー、分かったわ。さてはこの建物に侵入して、要人を暗殺するつもりだな』
『じゃあ、今日はスニーキングミッションに配信になるんかな?』
「んー、ちょっと惜しい意見もあるけどもぉ……正解はそうじゃないのよねぇ」
『じゃあ、正解はなんなの?』
『もったいぶらないで教えてよぉ~』
『というかこの建物がなんなのか、それをまず教えてよ』
「あら、確かにそうね。正解を言う前に、この建物が何なのか説明した方が良さそうだわ」
両手をポンッと軽く叩いた後、少女はそのまま言葉を続ける。
「実はここ……
『葉柱組?』
『俺、知ってる。日本の関東一円の極道を束ねる巨大極道組織、
『じゃあ、ヤクザの本部ってこと?』
『つか、葉柱組って相当な武闘派じゃなかったっけ? 規模的にもそれなりにデカい組だったはずだし』
『そんなやつらの根城に何する気なの?』
『まさかカチコミにでも行くんじゃないだろうな……』
「ふふっ、ご名答~♪」
画面がドローンの空撮から切り替わり、再び少女の顔が映る。
両手にハンドガンがそれぞれ一丁ずつ握られていた。
彼女の表情はいつもの甘さのまま──だが、瞳の奥にうっすらと黒い光が差した。
「でね、今日の配信は……ここに乗り込んで、あそこの連中を全員――ぶっ殺してくるわぁ」
その一言にチャットが凍りかけるが、すぐに狂乱の嵐が戻ってきた。
『マジで?ww』
『ファーーーーwwww』
『頭おかしくて草不可避なんだが』
『ガチで草。神回確定!』
『なんでわざわざ敵のど真ん中に乗り込む必要があるんですかねえ……?w』
『こいつ……狂ってやがる……!』
『おいおいおい! ガチなのか!? マジかよ!?』
『やべえ、これは絶対に見届けなきゃ!!』
エリスは軽く肩をすくめ、ハンドガンを弄る。
「上手くいったらチャンネル登録と高評価、忘れないでね♡」
そしてカメラを掴むと、少女は笑いながら走り出した。
背後の夜景が揺れ、彼女の下に戻ってきたドローンは、女神の狂笑を追い続けるのだった。
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