第2話

 数分後、キッチンの前に、4人の女が集まっていた。そこそこ大きな冷蔵庫と、水道の下の棚に、調理器具や調味料、インスタント食品などがある。

「男子は、そこで座って待ってて」

 りながそう言った。

「旨そうな、カレーだな」むねみつが感嘆とした声をあげ、「たんとお食べ」りながそういう。料理しているところを男子たちはちらちらと見ていた。

「りなちゃんって料理も得意なの?」

「うん。私きょうだい多いから、私が基本料理してるんだ」

「何人きょうだいなの?」

「4人。私と妹と双子の弟」

「そうなんだ...」

「でも、あかりちゃんも料理するんだよね」

「そうだね。私は自分の分しかやらないから。きょうだいはいないしね」

「へー」

「おかわりもらえる?」

「よしおくん、大食いなんだね」

「そうだね」

「よしおくんって普段何食べてるの?」

「鶏肉とブロッコリーとたまごかな」

「やっぱり。鍛えてるもんね。大谷翔平もそんな食事なの?」

「そんなわけないでしょ。あの人金持ってるから」

「まあ、そうだよねー綺麗な奥さんもいるしね。私もそういうお嫁さんになりたいな」

 りながそういうと、男たちの瞳孔が少し開いた。

 昼ご飯を食べ終えると、りなが提案した。

「せっかくだし、暗くなるまで、このあたりを散策しようよ」

「いいね」

「いつまでここにいるか分からないしね」さらはがそう言った。

 あたりは、白い砂浜があり、少し遠くに行くと、定食屋や、お土産屋などがある。観光地と言うより、宿泊地と言った感じで、ペンションを離れると、別荘があったりもする。

 自然豊かで、都会の喧騒を忘れたい人にはうってつけの場所だった。

「海綺麗だね」りながそういい、「明日天気いいかな」とさらはが続ける。

「明日天気よかったら水着でここ来ようよ」

「いいね」

 海を離れて、町中に入る。

「色々あるんだね」

 最初の方は、集まって歩いていたが、徐々に、塊を作り出す。

 りな、あかり、よしお、むねみつが固まり、さらは、ひな、れく、かいと、で固まる。

「お土産にチョコなんて買ったら、絶対とけちゃうよね」りながそういうと、よしおが「そうだね」と言い、「お土産と言えば、クッキーだよね」あかりが言うと、「いやあ、饅頭じゃない?」と、むねみつが返した。

「え、饅頭なの?おじさんぽくない?」りなが言う。

「そう?」むねみつは、不思議そうな顔をした。

「広島の修学旅行でも、もみじ饅頭だし、東京の修学旅行でも、東京バナナだったよ」

「東京バナナって饅頭じゃないよ」あかりが言った。

「え、饅頭じゃないの?ってか、饅頭って何?」

「なんか、生地にあんこが入ってるやつでしょ」

「何の生地だよ...」

「え、何ていうのあれ...」

 ひなは、れくに話しかけた。

「れく君って、彼女何人いるの?」

「何人ってどういうこと?一人もいないからここにいるんだよ!?」

「えー、ほんとに?バスケしてるし、耳にイヤリングしてるから、てっきり、彼女何人もいると思ったよ」

「そんな風に見えるの?」

「うん、だってかっこいいもん。さらはもそう思うよね」

「うん。髪型もかっこいいしね」

「そ、そうかなあ。あはは」

「俺はどう見える?」かいとが話に割り込んだ。

「えー、ってか鼻毛出てるよ」

「え!?」スマホの内カメラで自分を見ると少し鼻毛が出ていた。急いでそれをしまう

「かいと君ってがさつなんだね」

「B型っぽいね」

 さらはとひなはそう言った。

「ちゃんと、身なり整えてきたの?」

「え、整えたけど」

「もしかして、鼻の下延ばしてたんじゃないの?」

「あ、ひなちゃんのおっぱい見てたんでしょ」

「最低」

 かいとは、黙り込んだ。

「ああ、黙っちゃった」

「気まずい」

「れく君って、絶対モテモテでしょ」

「だからそんなことないって」

「今まで彼女何人いたの?」

「二人...」

「絶対嘘だ」

「清楚ぶらなくってもいいんだよ。ロールキャベツ系男子じゃないでしょ。ステーキ系男子でしょ」ひなはそう言った。

「ステーキ系男子って何よー。焼肉系男子でしょ」

「肉食系と草食系なら知ってるけど、ステーキ系も焼肉系も知らないよ」

「自分で言いだしたんでしょ」

「かいと君は、れく君のことどう思う?」

「え、かつ丼系男子かな」

「あー、チー牛の対義語的な」

「それだけで、チー牛の対義語ってわかったひなちゃん天才だね」

「でも、かつ丼って脂っぽくない?」

「うん、かつ丼はないかな」

 じゃあ、何だったらいいんだ。かいとはそう思った。話の中心はいつの間にか、れくとなっていた。

 よしおとかいとは絶望的な気持ちになった。

 なぜなら、この旅は、カップルが成立しないと帰れないからだ。

 従来の恋愛リアリティーショーでは、2泊3日等期限が設けられていたり、カップルが作る可能性が絶望的な男子は、ご帰宅いただくなどの事があるが、この度は、それがない。日本では、考えられないが、オセアニアでは常識であった。

 しかし、二人は会話に入ることができず蚊帳の外になっていた。

「えー、れく君から告白したんだ」ひながそういった。

「贈り物って相手があっての者だから。独りよがりに選ばれたものを送られても、困るんだよね」あかりの声に、りなが同意する。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る