ポケットの中のSOS
あおじ
①
年末、いつもより早めに帰省した俺は実家の炬燵でだらだらとしながらみかんを頬張る。
特に面白くもない年末特番を垂れ流すテレビをぼうっと眺めていると、水仕事を終えた母が「寒い寒い」と呪文のように唱えながら炬燵へと入ってきた。
そして母は唐突に言ったのだ。
「そうそう、
母のその一言にぼんやりとしていた頭が覚醒する。
夏江ちゃんとは、近所に住む同い年の
それにしても自殺とは、穏やかではない。夏江とは中学位からあまり話さなくなり、それぞれ別の高校へと進学し、俺は大学進学を機に家を出たので彼女のことはほとんど知らない。
だけど、小学生の頃の夏江はいつもにこにこと笑っていて、溌剌としたじゃじゃ馬娘といった感じであったからどうしても"自殺"とは結び付かない。
「夏江ちゃん、何か悩んでたのかしらねぇ? スーパーとかで見かける時、いつも暗い顔をしてたから」
暗い顔、それを聞いてふと思い出す。小学5年生の夏休み明けから夏江はすっかりと大人しくなってしまい、あまり笑わなくなってしまったことを。
それは何故だったか、目を閉じて遠い記憶を辿り思い出す。ああ、そうだ。夏江の母親が再婚したのだ。
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