②
夏江の父親は夏江が母親のお腹の中にいた時に交通事故で亡くなった。
夏江は母親に女手一つで育てられていたが、俺たちが小5の時に母親は再婚をして夏江には新しい父親が出来たのだ。
新しいといっても、夏江は実父を知らないので母親の再婚相手である継父が初めての父親になるのかもしれない。"初めての父親"というのも妙な言い回しだが。
「私にもね、お父さんが出来るのよ!」
夏休み前、夏江はクラス中にそう触れ回り、それはそれは嬉しそうにしていた。当時、当たり前のように父親がいる俺には彼女が何をそんなに喜んでいるのかあまり理解出来ていなかった気がする。
そして彼女は夏休みが明けると、まるで別人のようになってしまった。
暗い顔で俯き、口数は減り、あんなに大好きだった体育の授業を休みがちなったのだ。そのあまりの変わりようにクラスメイト達は口々に「大丈夫?」「何かあった?」と言って彼女を心配したのだが、夏江は口角を上げてにっと笑うと、
「うん、大丈夫だよ! 全然平気だよ!」
と元気よく言ったのだが、今思えば笑顔が引きつっていた気がするし、あれは空元気だったのかもしれない。
大人になった今なら分かる、急に血の繋がっていない家族が出来たのだから色々と気まずくなるのは当然だと。きっと夏江も環境の変化に戸惑っていたのだろう。
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