18、『俺はメイくんの相方になったぞ‼』

「今日も『メイくん』は可愛いな」

『雪柳メイ』の配信アーカイブを追いかけながら、俺はほんわかと心を和ませた。

 メイくんのファンになったのは、初めて配信を観た時からだ。

 キャラクターの見た目が可愛かったのはもちろんだが、俺の心を鷲掴わしづかみにしたのは、その喋り方と声だった。


 ――幼馴染の『かえで』に、とても似ていたのだ。



   18、SIDE:ガク/『俺はメイくんの相方になったぞ!!』


 幼馴染の『かえで』は、小学生低学年まで毎日ずっと仲良くしていた子だ。

 同じ歳で、何するにも一緒で、学校が終わってからお互いの家ですごしたり、二人でどこか行ったりと、べったりだった――俺の初恋だったんだ。


 その子とは、気づいたら自然消滅みたいに連絡が途絶えて、お互いに連絡を取り合おうにも連絡先もわからなくなっていたけれど。

 

「さて……」

 気を落ち着かせ、少し緊張しながらチャットアプリを開く俺の名前は零。


 東海林しょうじ れい

 大学生で、V tuberだ。

 アバターキャラクターは『黒山羊くろやぎガク』。山羊だけど猫耳と尻尾のキャラクターなのは、気にしてはいけない。


 Vtuber仲間が集まるコミュニティに参加するV tuberであり、なんとそこには『メイくん』も参加しているのだ。


 当たり障りのないチャット交流から始まり、名前を覚えてもらい、いよいよ今日、通話を誘うのだ!


「メイくん、もしよかったら、今通話いい? ……っと」

 ドキドキしながらメッセージを送ると、メイくんは軽いノリでオーケーしてくれた。


個通個別通話する仲になれたぞ……!! や、ヤッタァ!)

 喜びガッツポーズをしながら、そんな自分を抑える。

 あまりテンションを上げ過ぎると『何この人キモッ』とか思われてしまうかもしれない。

 そんな事になったら、悲し過ぎる……!


「ふーっ」

 深呼吸をして、通話をかける。

 メイくんは素の声も可愛い。あまりキャラ用に声を作るタイプではないらしい――、


「俺とコンビでやらないかな……っ? キャラデザも猫同士だし、歳も近くて活動時間も同じくらいだし、ど、どう?」


 断られたらガチで凹んでしまう――決死の覚悟で誘えば、メイくんは軽い感じで『いいですねえ!』なんて応えてくれた。


 か、軽っ……?


 そんなノリで相方作っちゃうんだ、メイくん?

(勇気出して誘ってよかった……これ、他の奴が誘ったらホイホイ誘われるがまま相方になられてた……っ)


 冷や汗をかきつつ、軽く打ち合わせをして通話を終えて、じわじわと喜びが高まってくる。


「お、俺、メイくんの相方になったぞーー!!」

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