2、呼び捨てに進化して『てぇてぇ』しても、いいですか?
「ねえ、どう思うぅ?」
再開した配信画面で『
俺のアバターは可愛い。
喋り方も意識して少し可愛くしている方だけれど、疲れるから声はそんなに作ってはいない。
俺の声は元々ちょっとハイトーンなので、このキャラアバターには適してるんだ。
性格は……ピュアとは言い難いかもだけど。
天使みたいなキャラって難しい。
普通が一番だと思う。
だって、ずっと動かすキャラだもん――。
2、呼び捨てに進化して『てぇてぇ』しても、いいですか?
「ガクさんがね、休憩中に、ストーカーとかダメだよって言ったんだ……」
休憩中の話をすると、ファンが喜んでいる。
『二人は休憩中もべったりなんだね!』
『配信裏てぇてぇ……』
コメントに手応えを感じつつ、俺はわざと
アバターで喋るときは、自分半分、キャラ半分――『
「ボクは、ガクさんをずっと見ていたいなって。おんなじゲームして、何してるか近くで見たいって思っただけなのに……」
可愛いメイのアバターが猫耳をピコンっとさせてしょんぼりすると、ファンのみんなが励ましてくれる。
――これでさっきの発言はフォローできたんじゃないかな?
「いいか、俺が前衛するからな〜、メイくんは、俺を回復な。オーケー?」
「オーケーだよ、ガクさん。ふふ、たのもしい!」
――てぇてぇをしなければならない。
うまくてぇてぇすると、切り抜き職人が切り抜きを作ってくれるのだ。
ファンの絵師さんが絵を描いてSNSにタグ付きで投稿してくれたりもする。
するとどうなるかというと、人気が出る……!
人気が出るとどうなるかというと、視聴者数が伸びる。
伸びるとどうなるかというと、動画配信サイトからお金がもらえる――その額が増えるっ!
活動費用が増えると、バイトも減らしてますます活動に熱を入れられるし、配信環境も整えられるし、あと将来のために余ったお金を積み立てNISAとかしてみたり――良いことばかり!
やっぱり、ないよりはあったほうがいい。
ガクさんのモチベも上がるだろうし……。
「あのね、ガクさん」
――俺は全力でてぇてぇするぞ、ガクさん!
「ボク、ガクさんと遊べて嬉しいな……っ」
全力でピュアボイスを心掛ければ、コメントは大変盛り上がってくれた。
……ガクさんは――?
「……」
「ガクさんん?」
ちょっと反応が鈍い。
――あれっ、回線落ちかな……?
「か、回線落ちかなぁ? ガクさ~ん?」
呟いたところに、ガクの声が返される。
「俺も――メイと遊べて嬉しいよ!」
すごく、きらきらした感じの王子様ボイスだ!
女の子がきゃあきゃあ言うやつだ! お金が取れそうな声だ……!
あっ、『メイくん』から呼び捨てになったね。
これは打ち合わせだともっと先のはずだったけど……、コメントをちらっと見たら、すごいお祭りになっていた。
『呼び捨て!!』
『呼び捨ててぇてぇ!』
――これは手応えあり!
俺はにっこりして、その喜びを声に表した。
「ボク、呼び捨てにしてもらえて嬉しいっ! ボクも呼び捨てにしても、いい?」
「もちろん!」
この配信のひとときは無事切り抜かれ、
翌日、俺たちはリアルで打ち合わせをし直すことにしたのであった。
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