第2話 これ、そんなに需要ありました?

 「可愛い〜!」


女性陣にオモチャにされていく男性陣。その中にはもちろん僕もいたわけで。


「やっぱ神守くん似合うねぇ」

「でしょ!? 私、天才!!」

「一度でいいから見てみたかったんだよねぇ。文化祭、万歳!」


カツラを被せられ、メイクを施され、僕はただ苦笑いを溢す。きゃっきゃと賑わう女性陣の後ろでは、既にメイクを終えた男子たちが僕のことをブツブツと呟きながら見つめていた。


「似合ってんの神守だけじゃね?」

「俺らもやる必要あったか?」

「どうするんだよ、このバケモノ共」

「……いや、お前も大概バケモノだぞ?」


まさかこんな形でクラスメイトと交流することになるとは思わなかった。僕のせいで巻き添えを食ったと言われると、返す言葉もない。


「それじゃあ、計画通りによろしく〜」


平和に終わるはずの文化祭だったが……、どうやら、波乱の展開になりそうだ。


 ***


 「い、いらっしゃいませ、ご主人様……」


僕の姿を見た途端、養父・霧玄さんはフリーズしていた。


「あ、あのっ、ご注文は……」

「……あぁ、すまない。何万円だ?」

「そんな悪徳商売していませんよ……」


思い出した。この人も大概だった。


「優司は可愛いねぇ〜。困った顔も良いよ〜」


従者の一人である悠麒さんは、パシャパシャと僕を撮っている。と、その横で


「あの、早くどいてくれませんか? 私もその角度の優司くんを撮りたいんですけど」


舞衣さんもまた、負けじと僕を撮っていた。


「はぁ〜? こればっかりは譲れないね。主の勇姿を見届けるのが僕の役目だ」

「優司くんの勇姿を見届けるのは妻の役目ですけどぉ?」

「まだ妻じゃないだろ、お前」

「もう妻みたいなものですぅ〜!」

「引っ込めガキ!!」

「そっちこそ引っ込みなさいよ、ジジイ!!」


二人とも、キャラを忘れて喧嘩している。勘弁して欲しい……。


「ほらっ、神守くんに釣られた!」

「ぐふふ、これで儲けられるわね……!」

「言っていることが悪徳商人なのよ」


クラスメイトたちは陰でコソコソとしていて、僕を助けてはくれない。……仕方ない。少し、仕掛けてみるか。


「け、喧嘩はやめて欲しいな……?」


コテンと首を傾げ、恥じらいながらも“お願い”をしてみる。すると


__バシャバシャバシャバシャバシャ!!


二人はものすごい勢いで僕を撮り始めた。


「放っておけ、優司。関わるだけ無駄だ」


霧玄さんは優雅にお茶を飲みながら……大金を机に積んでいる!? どこから出したんですかそれ!?


「ちなみに護衛はついているのか? こんな姿で一人は危険だろう。式神は必要か?」


あの……僕、男なんですけど……。あと式神は自分でも出せます。いりません。こんな数十体も出さないでください。ここ、学校ですよ。


 そんなことをしていると、どこからか悲鳴が聞こえてくる。


「きゃあああぁぁぁぁぁー!?」


その声を聞いた途端、僕らは無意識に声のする方へと駆け出していた。


「大丈夫ですか!?」

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