追憶の星は白夜に耀く

プロローグ


 ――その昔、邪悪な竜と、その竜を信仰するヴェリタスの一族がこの島を支配していました。

 

 竜の瞳は千里先をも見渡せる七色の虹彩で、天候を操り、島の空を黒い影で覆います。竜から魔力を分け与えられたヴェリタスの一族は、他民族を虐げ、我が物顔で振る舞っていたのです。

 

  天空の守護者である星の女神ウラトリアはそれに深く心を痛めていました。女神の涙は星の川に流れ、暗黒の夜空を少しずつ灯していきました。


 ある星降る夜のこと、一艘の船で島にやってきた青年は、浜辺で女神に祈りを捧げました。


「もし貴女様が私に祝福を下さるのなら、私は悪きものを打ち滅ぼし、恒久の平和をこの地に捧げましょう」


 彼の祈りに応えるように、海に流れ星が落ちました。青い光は海を二つに裂き、彼の前に道を開きます。海の底に突き刺さった星は、聖なる剣へと姿を変えていました。


 その剣を手にした瞬間、シグルズの髪は星明かりに染まったように光り輝き、竜の爪も通さない強靭な肉体を手に入れました。

 

 星の女神の愛し子となった勇者、シグルズは遂に邪悪な竜を討ち滅ぼし、島はヴェリタスの一族の支配から解放されたのです。


 こうしてシグルズは初代国王となり、このレクトノガード王国が建国されたのです――。


 レクトノガード王国 建国記

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