それは自己表現と言う名のエネルギー
ふぅ、終わりの会が終わったの! これで今日のお勉強たいむは終わりなのです!!
「リディアおねえちゃん、カレンおねえちゃん、あーそぼ!」
「はーい」
「何して遊ぶ?」
「んー、何でもいいの! 二人と一緒なら何でも楽しいの!」
ルミは一緒にいるだけでとってもとっても嬉しい気持ちになれるの! ルミは
「か、可愛すぎる……! えへへへ♪」
「純真無垢な好意をぶつけられると、照れちゃうね~」
ルミが抱き着くと、リディアおねえちゃんはルミの頭をなでなでしてくれたの。カレンおねえちゃんはルミのほっぺをぷにぷにしてくれたの! とっても幸せなの!
「あっ、そういえば! カレンおねえちゃん、お散歩スポットは見つかったの?」
「えっ? あ、ジョギングコースのこと? 候補は見つかったよ」
カレンおねえちゃんは最近お散歩をはじめたの。楽しそうだったから、ルミも一緒に歩いてみたら、すっごく面白かったのです!
だけど、前のお散歩スポットはここから遠いから、
「へえ、どこなの? アカデミア内?」
「そう、アカデミア内にジョギングコースがあるみたい。噴水広場から始まって、ぐるっと一周する感じ」
「おおー! 楽しそうなの、早速お散歩するの!」
「すっごく広いの! まるで公園に来たみたいなの!」
「そうだね、なにせここは世界最大級のアカデミアだからね!」
「はあ、はあ。ここの建物は有名な建築家がデザインしたもので。はあ、はあ、はあ。見ているだけで楽しいね」
カレンおねえちゃんに賛成なのです。
ここの建物はどれも
三人で楽しく散歩していると、後ろから「いっち、に。いっち、に」って声が聞こえてきたの。
なにかなーって思って、くるって見たら、知っている人がいたの!
「ルミ様、こんにちは!」
「「「こんにちは!」」」
「どっかーんの人! 久しぶりなの! 何してるの?」
「心身を鍛える為に走り込みをしています!」
「なるほどなの、またゲームしようなの!」
「「「ひぃっ! し、死ぬ気で頑張ります!!」」」
「「「が、頑張ります!」」」
この人達は「マジックゲーム」っていうスポーツをしている人なのです。マジックゲームっていうのは、えーっと、魔法を使ってばとるする遊びなの! すっごく面白いの!
この人達と初めて会ったのは、一年前だったと思うの。ママから「最強無敵の魔法使い集団を名乗っている不届き者がいるから、倒してくれる?」っておつかいを頼まれたの!
ルミはぱーふぇくとだから、ひとりでおつかいだって出来ちゃうの! ルミは「おやすみごよーなの!」って言って、本当のさいきょーとは何か教えてあげたの!
それから何回かばとるしたけど、ぜーんぶルミが勝ったの! えっへんなのです!
どっかーんの人達は「ではまた!」と言って走り去ったの。
「逃げるように去って行ったわね……」
「はあ、はあ、はあ。あれは完全に心が折れてるね。はあ、はあ、はあ」
カレンおねえちゃんが、すっごく辛そうにしているの。
時計を見ると――もう一時間も散歩しているの! カレンおねえちゃんの限界をとっくに過ぎているの!!
「カレンおねえちゃん、大丈夫?! とってもしんどそうなの!」
「今日はこのくらいでやめておく?」
「だ、大丈夫! もう少し……。ぜえ、ぜえ、はあ、はあ」
「だめ! これはめーれーなの!!」
「は、はい!」
◆
ルミは回復魔法を使うべきか悩んだが、結局使わなかった。
カレンが最近ジョギング(
王城に戻ったルミ達は、魔法でさっと汗を流してからカレンをベッドで休ませることにした。ベッドで横になるや否やすとんと眠りに落ちたカレンに、ルミはそっと口づけしてから部屋を後にした。
それからルミは母親に今日の報告をして、お城で働く使用人や料理人などに挨拶して回って、などの用事を済ませた。それが終わると再び自由時間だ。
「リディアおねえちゃん、リディアおねえちゃん!」
「はーい、なあに?」
「リディアおねえちゃんの歌を聴きたいの!」
「うん、分かったよ。何を歌う?」
「いつもの!」
「はーい。それじゃあ『天の欠片と祝福の花畑』を歌うね」
リディアの歌声は水晶のように透明で、星の瞬きのように繊細で、春のような温かみが籠っている。
彼女の歌声には聞く人を幸せにする力がある。それは魔法や奇跡ではなく、彼女の生まれ持った素質と凄まじい努力によって生じたものである。
彼女の
それは二人が
ステージでリディアは『天の欠片と祝福の花畑』を歌っていた。当時の彼女の歌は、率直に言うとそれほど上手ではなかった。実際、リディアの歌を聴くために立ち止まる人はほとんどおらず、一瞬立ち止まった数名も程なくしてその場を去った。
しかし、ルミは確かに見たのだ。リディアの中に眠る光を。その光は、歌の上手下手とは別の次元に存在する、「自己表現」にかけるエネルギーだ。自分が持つエネルギーを他者と分かち合いたい、そんな思いが彼女の歌には込められていた。
「とっても、とっても良かったの!」
「ルミ様だー! 聞いてくれてありがとう♪」
「
その日以来、ルミはリディアのファンになった。
初めリディアは「なんか子供に懐かれた」と思っていたが、純真無垢な好意をこれでもかとぶつけられ、いつの間にかリディアもルミの事が好きになる。その頃には、大人たちの間で婚約の準備が進んでおり、なんやかんやあって二人は婚約した。
◆
「リディアおねえちゃんの歌を聴けて、ルミはとっても幸せなの! リディアおねえちゃん大好き!」
「えへへ。私もルミちゃんに喜んでもらえて、とっても幸せだよ! ルミちゃん、大好き!!」
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