ライブ①
バンド名が『The Breath Takers』に決まってからも、活動内容自体は特に変わらなかった。
ほのちゃんがバンドメンバーに曲を送り、各メンバーがそれぞれのパートを考えてくる。
さらに僕は歌詞を考え、バンドメンバーに共有する。
週末にスタジオに入って全体で調整していく。
そうしている内に8月は終わりに近付いていた。
気づけば7曲ほど出来上がっていた。
そして暑さも落ち着いてきたある日、ほのちゃんが次なる目標をチャットグループにて打ち出したのだった。
ほの「ライブに出ませんか」
曲が幾つか出来上がってきたら、今度は人前で披露する。
当然の流れだと思った。
ほのちゃんはとあるリンクを送ってくれた。
ほのちゃんの知り合いが新宿でライブハウスを借り、イベントを開催するとのことだった。
数バンドが出演する予定らしいが、お客さんも含めてほとんど知り合いになる見込みらしい。
「The Breath Takers」の初陣としても身の丈に合ったライブだと感じた。
ライブは2か月後、だと思っていたのも束の間で、スタジオ練習を数回行うとすぐに本番当日がやってきた。
緊張はする。
だが、確実に良い曲は作れたし、練習もしっかりやってきた。
自信を持ってライブハウスに入場すると、最悪の事態が起こってしまった。
正直、新宿と聞いた時から危惧はしていた。
何故事前に確認しなかったのか。
いや、おそらく可能性から目を背けたかったのだろう。
その『最悪』いや、『災厄』は一直線に僕を目掛けて走ってきた。
「おおー!!我が弟よ~♡」
姉だ。
名前はリサ。
髪は緑とピンクで服装は鋲ジャンにダメージジーンズ、ゴツゴツのブーツ。
見た目はかなりパンクだが、中身は残念を具現化した様な姉だ。
彼女はバンドで食ってくと言い残し、高校卒業と同時に家を出た。
なんだかんだで10年以上活動出来ているし、界隈では有名だそうだ。
というか、自分もバンド好きだから嫌でも名前が入ってくる。
そんな自由奔放な姉のせいで、親の目を気にした僕は正反対に育ったと考えている。
まあ、今となってはどうでもいいが。
最近は新宿で主に活動しているから、ライブを見に来いという執拗な誘いを断っていたところだ。
「我が弟よ~♡元気だったか~?なかなか顔を見せに来ないからお姉ちゃん心配してたんだぞ~?」
僕は耳元で叫ぶ姉を引き剝がす。
「やっとライブを見に来てくれたと思ったら、共演まで出来るなんて~♡お姉ちゃん嬉しいよ~♡」
「別に姉ちゃん出るなんて知らなかったし…」
僕が姉の元から立ち去ろうとすると、その先にはバンドメンバーがいた。
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