ライブ②

バンドメンバーの3人は呆気にとられていた。


姉とのやりとりを見られた…


僕は恐る恐る3人の元へと向かった。

すると、彼女たちの反応は思っていたものとは違ったのだった。


「さっきの方って…チェリーズのリサさんですよね…?」


ほのちゃんが尋ねてくる。


「ビジンってお姉さんいたの!?ってかお姉さんってリサさんなの!?」


あっちゃんが続けて尋ねてくる。


そっちか…

まあ姉のブラコンぶりに目が行ってなくて良かったとしておきたい。


「そうです…」


僕はため息をつくように答えた。


「すごーい!」


あっちゃんが驚く。


ほのちゃんと菜奈さんも感心している様子だ。

やはり姉はバンド好きには名が知れている様だ。


「まあ、その話は後にしようよ…まずは僕たちのライブでしょ?」


「確かにビジンの言う通りだね。まずは私たちの出番に集中しましょう?」


流石は菜奈さんだ。

僕があまり話したくないことまで察知してくれたみたいだ。


しかしそこで、あっちゃんが鋭い指摘をする。


「でもリサさん、チェリーズが出るってことは今日のライブ結構激しめなのかな?」


たしかにそれはそうだ。

姉がボーカルを務めるチェリーズは所謂『ポップパンク』といったジャンルに分類されるバンドで、僕たちとは少し毛色が違う。


「そんなこともないよ!」


また誰かが来た。

姉と声が似ていたのでギョッとしたが、違った。

良かった。


そこにいたのは、初めてお目にかかる女性だった。


僕と同い年位で、バンド内で一番小さいほのちゃんよりも小柄な女の子だった。

髪は茶髪のおかっぱで、黄色のワンピースが似合う可愛らしい子だ。


「マキ…!」


どうやらこの人がほのちゃんの友達、このライブの主催者らしい。


「皆さんがほののバンドメンバーさんですね!初めまして!ほのちゃんの友達のマキといいます!」


明るくていい子だ。

こちらも自己紹介を済ませると、マキちゃんは続けた。


「今日は私の知り合いのバンドの中で、単純に見たいなって思った人たちをジャンル関係なく呼んじゃいました!もちろん皆さんもそうですよ!ほのが遂にバンド始めたって聞いた時は嬉しくて仕方なかったんですから!」


どうやらマキちゃんはバンド界隈の中でも顔が広いらしい。

確かに色んなジャンルのバンドが集まっているみたいだ。


「マキ…今日は呼んでくれてありがとうね…頑張るね」


ほのちゃんはマキとかなり仲がいいようだ。

距離感がほのちゃんにしてはかなり近い。


とにかく、呼んでもらった以上、他のバンドに負けない様に頑張らなければ。

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