結成①

ほのちゃんの突然の来訪から3日が経った。

僕はローテーブルに両肘をつき、頭を抱えていた。


目の前にはペンとノート。

歌詞が思いつかない。


「どうしよう…」


思わず独り言を言ってしまう程には、追い詰められていた。

すると視野の片隅にあったスマホの通知が見えた。


ほのちゃんからだ。

個人宛ではなく『バンド名未定』というグループ宛だった。


一気に心拍数が上がった。

歌詞問題で薄れていたが、他のメンバーが誰なのか気になってはいた。


通知をタップすると、まずメッセージ内容が目に入る。


ほの「次の日曜でスタジオ予約しました。時間と場所は以下の通りです。~~~」


スタジオとは音楽スタジオのことで、バンド練習が出来る場所だ。


次の日曜?明後日じゃないか!

早くない?まだ歌詞書けたなんて言ってないぞ?


そう思いながらも、僕は気になるグループメンバーの一覧をタップした。


『ほの』

『NANA』

『アオイ』


一人はすぐに分かった。

『NANA』は菜奈さんだ。


サークルの1つ上の先輩で、ベースが1番上手かった菜奈さんだ。

とても優しく、カッコいい先輩で、お世話になった。


そういえば大学を卒業してから会っていない。


問題はもう一人だ。


『アオイ』


そんな人いたっけ…?

アイコンの写真も何かのキャラクターでヒントにならない…


まあいいか。当日になれば分かる。

勝手にサークルの人だと思っているけど、そもそも知らない人かもしれないし。


とにかく歌詞だ。

明後日にはスタジオだ。


仮でもいいから、何かしら用意しなければ。

僕はスマホをそっと置き、再びペンを手にした。

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