第3話 なにもかも

俺は夜の路地裏を追われている。


どうせ世界が消滅するなら、昔俺を虐めてきたあいつに一泡吹かせてやろう、なんて考えてしまった。

土壇場の思いつきの、素人の復讐なんて、やっぱり失敗してしまう。


なんとか振り切って、ビルの屋上にのぼった。追手の足音は聞こえなくなったが、時間の問題かもしれない。


もう、何もかも壊れっちまえ、と頭を抱えたそのとき、爆発音が何発も聞こえてきた。

目を向ければ、色とりどりの花火が大量に打ちあがっている。


特等席で、ひとりだけで見る、花火。

散々な目にしか遭わない人生だったけれど、最後がこれなら甲斐があったのかもしれない。


そうしてしばらくして降ってきた隕石が、どいつもこいつも、俺のことも、まとめて消し去ってくれた。


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なにもかも壊れてしまえ ただしあの花火の光は例外とする

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