三十五夜 強くにゃらニャイト
三年間の停戦協定をたった一年足らずで破って、ローニャ帝国がニャールブルク城砦を攻めて来た! 夜に言う
『トロイの
三日目の夜、ローニャ帝国から美しい牝猫を象った木猫が贈られてきたんにゃ。
二日酔い、いや、三日酔いして呂律も回らにゃいドカン王国の兵士は、にゃんの疑いもにゃく、その木猫を受け取った。受け取ってしまったんにゃ!
木猫の中には少数精鋭のスパルニャ部隊が潜んでいて、宴が開かれている中央広場まで運ばれると、
うおおおおおおお!
空をつんざくようなにゃ雄叫びとともにスパルニャ部隊が飛び出したにゃ。
「て、敵襲にゃ〜! ひっく! おえっ」
しかし、ドカン王国の兵士は交代制だったにもかかわらず、ほとんどの兵士が三日酔いで使い物ににゃらにゃかったにゃ。
あっと言う間に制圧されたニャールブルク城砦にゃったが、ボクのお母さん、ミア・クリスは諦めが悪かったにゃ。
スパルニャ部隊が制圧したニャールブルク城砦にニャロ皇帝直々にやって来たんにゃ。そしてそこで開かれていた宴をそのまま利用して、勝利の美酒を飲み始めたにゃ。
ニャロ皇帝は嬉しそうに目を細めて『キサマが歌姫か、何か歌え。踊り子たちは踊り、他の女子供は酌をしろ』とボクのお母さんはボロボロの舞台の上に立たされた。
そこでお母さんが歌った歌は『
眠れ我が仔猫よ
愛しの我が仔猫
可愛い我が仔猫
泣くな我が仔猫よ
この夜は悪い夢
悪い夢のまた夢
いつか
夜の闇を切り裂く光が
月の陰からあらわれる
それは温かな風となりて
この無慈悲な夜を包み込む
眠れ我が仔猫よ
私だけの可愛い
リルニャイト・メア
お母さんが歌い終わる頃、ほんのひと時の静寂が訪れた。
ある者は眠り
ある者は咽び泣き
ある者は沈黙を受け入れた
それはお母さんが作ってくれた最期のチャンスだった。
お母さんの視線が真っ直ぐにボクの方へ飛んで来た。
『お逃げなさい、私の可愛いリトルニャイト・メア』
確かにそう聴こえた。
ボクは首を振った。お母さんと離れるくらいなら、死んだ方がマシだったからだ。
だが、お母さんはボクにいつも言い聞かせてくれていた言葉が頭の中を過ぎった。
『生きていれば、必ず良いことがある。今はどうにもにゃらにゃいことでも、きっとにゃんとかにゃる時が来る。だからメア、例え私ににゃにがあったとしても、あにゃただけは生きのびにゃさい』
お母さんはもしかすると、この日のことが視えていたのかもしれにゃい。
ボクがお母さんの月の光にならにゃいと! この夜に風を起こさにゃいと! ボクがニャイトににゃらにゃいと!
気づいた時には、ボクは駆け出していたにゃ。
お母さんは諦めてはいにゃい。
ボクがお母さんの希望とにゃらにゃいと! お母さんの夢を悪夢ににゃんてさせにゃい!
あふれる涙はそのままに、ボクは自分が
◇ ◇ ◇
今のままじゃダメにゃ。
テンテのお兄さんは雷神と呼ばれた元ニャイト、イヴァン・グロズヌイだと言ってたにゃ。つまりテンテはニャイトににゃれる過程を知っているかも知れにゃいにゃ。
ひとつ気がかりにゃのは、やはりあのニャイトの成れの果てだと言うイヴァンさんの症状。あれはいったいにゃんにゃのか。テンテにもはっきりとはわからにゃそうだったにゃが、下手すればにゃにかしらのリスクを負うかも知れにゃいにゃ。
怖くにゃいと言えば嘘ににゃる。けど、後戻りはする気はにゃい。月夜の加護がどんにゃだかも知らにゃい。けど、この夜を戦い抜くにはニャイトの力が必要にゃ。
にゃぜにゃら。
ローニャ帝国にはセブンニャイト最強と謳われるアルテニャがいるにゃ。ニャイトの力がにゃいことには、ニャロ皇帝はおろかアルテニャにも届かにゃいにゃろう。
憎きニャロ皇帝。アイツの息の根だけはこのボクが止めてやるにゃ!!
テンテ⋯⋯。
ボクはテンテに逢えて良かったですにゃ。
「テンテーは、ボクの心の闇を照らす光です。霞がかる暗雲を晴らす風です」
テンテーは、やもするとボクに戦うことを望んでいにゃいのでしょう。ですがボクは強く、にゃりたいのです。お母さんの為に、自分のために、強く、強くにゃりたいんですにゃ。
にゃからテンテ。
「はぁ⋯⋯」
この胸の苦しみは、言葉ににゃらにゃいモヤモヤとした気持ちは⋯⋯。
ボクはテンテの手をとって握りしめると、テンテの寝息を確認して、そっと──
──口をつけた。
この熱い想い。
そっと胸の奥にしまっておきますにゃ。
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
⚠️作者から
これで一章はおわりとなります。
二章まで少しお待ち下さい。
二章は登場猫物が変わります。物語は繋がっておりますが、お話ごと(夜ごと)に主人公は変わります。
お楽しみに。
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