三十四夜 嘘をつくつもりはニャイト
「ニギャ─────────ッ!!」
「にゃんにゃコレ!」
「とんでもにゃくうまゃーにゃ!」
「のっくちゅ、うみゃー♡」
「オルガさん、私たち、本当にコレいただいても良いのでしょうか?」
「いいでちゅにゃ」
オルガが育ててきた孤児たちも含め、マーニャやミニョンのマヌル族の姉弟もマリアさんの孤児院に引き取られることににゃった。モニャが何故か先輩面しているが、頭を撫でられると途端に甘えん坊ににゃるところは変わらにゃい。
「にゅふふ♪ もっとにゃでてもいーでちゅにゃ」
リリーさんがモニャの頭をグリグリと撫でた。モニャは目を細めて気持ちよさげにゃ。
ジオジオのパンと港街牧場のフレンチトーストはとても好評なようにゃ。定期的に届けてもらうにゃね。
「ノックス、本当にこんにゃにいいにゃ?」
「ああ。オルガのところにいた孤児たちの養育費に充ててくれにゃ」
「それにしても多過ぎるわ?」
「古くにやった修道院の修繕費に充てるといいにゃ」
「まあ⋯⋯。ノックス、いつもありがとうね。あにゃたにはとても返せにゃいほどの恩があるにゃ」
「マリアさん、それは俺の方にゃ。俺はここがあるから頑張れる。兄貴が意識を取り戻したので実家で所帯を持つにゃろう。兄貴や義姉さんはいつでも帰って来い、部屋は開けておくと言ってくれてはいるにゃが、そんなわけにはいかにゃーにゃ。そしたら俺の帰る場所はここだけにゃよ」
ぎゅ。
「いいわ。私たちはあなたの家族も同然。いつでも帰って来てくださいにゃ」
ぎゅ。ぎゅ。ぎゅ⋯⋯へちゃ。
リリーさんや孤児たちも集まってくっついてくる。ここの習わしのようにゃものにゃが、にゃんだかくすぐったいにゃ。
「今日は泊まって行くのでしょう?」
「そうにゃね。今日は色々あって疲れた、にゃ⋯⋯あれ?」
ドサ。
情けにゃーにゃね。もう限界にゃ。
「テンテ!?」
「ふふ、大丈夫よ。疲れただけだから。この子はいつもこうなのよ。動けなくなるまで動いちゃうの。困った子にゃね。クリスちゃん、部屋まで運ぶの手伝ってくれるかしら?」
「はいにゃ!」
「俺がやろう」
「オルガさん、ボクがやりますにゃ!」
「⋯⋯そうか、なら、そっちを頼む」
「⋯⋯わかったにゃ」
意識が遠退く。
⋯⋯。
◇ ◇ ◇
夜が深まる。
深い眠りに就くノックス。月明かりが部屋に差し込み、彼の柔和な寝顔を照らす。
それを見つめる瞳がふたつ。パチリと瞬く大きな瞳は、まだ少し青みを残したうら若きクリスのものだ。
「はぁ⋯⋯」
既にいくつも吐き出してきたが、尽きることのない、ため息。クリスの胸につかえているものが、呼吸すらままならなくする。
「テンテ、ボクはテンテに黙っていることがあります」
⋯⋯返事はない。
「けっして嘘をつくつもりにゃどはにゃいのですが、それを言葉にしてしまうと、一緒にいられにゃくにゃるのではにゃいかと、怖くにゃってしまうのです」
漏れ出すため息。胸のつかえはひどくなるばかり。
「ボクは強くにゃりたい」
クリスは両手を握りしめた。
「にゃんとしても強くにゃりたいのです! 例えテンテに嘘をつくことで、嫌われたとしても、ボクは⋯⋯強くにゃらにゃくてはいけにゃいのです⋯⋯強く」
クリスの目頭が熱くなる。だが、グッとこらえるクリス。
◇ ◇ ◇ 【クリス視点・過去】
『ニャプシー』
それは歌や踊りなど大道芸の興行で地方を転々と渡り歩く、移動型民族にゃ。
ボクのお母さんは、そんなニャプシーの歌姫で、花形スターだったにゃ。
「お母さん、ボクもおおきくにゃったらお母さんみたいにゃ歌手ににゃれるかにゃ?」
「そうねメア、きっとあなたも素敵な歌手になれるわ。だってあにゃたは私の自慢の娘にゃんですもの」
お母さんの名前はミア・クリス、その娘のボクの名前はメア・クリス。この頃のボクはまだ、お母さんのようにゃ歌姫ににゃることを夢見ていた。あの夜までは。
そう、あの夜。
ドカン王国とローニャ帝国の狭間、ニャールブルク城砦に、我々ニャプシーが激励の宴に呼ばれた時のことにゃ。
大陸中央に位置するローニャ帝国の力は強大にゃ。四方に列強国と隣接しているにもかかわらず、ドカン王国は接戦を敷いられていたにゃ。しかし、今から一年前、両国の兵も疲弊していたので、三年間の休戦協定が結ばれた。その間、両国の緊張は解けにゃいものの、ドラ王の計らいで砦の兵士への慰労の意も込めて、三日間だけの宴が催されたのにゃ。
にゃが、その様子を遠巻きに観ていたローニャ帝国の兵士が、ニャプシーの歌姫・ボクのお母さんの噂をニャロ皇帝の前でしたそうにゃ。ニャロ皇帝は噂の歌姫を一目見ようと砦までやって来て、子どもが駄々をこねるようにボクのお母さんを欲しがったらしいにゃ。
そしてあの夜、悲劇は起きたにゃ。
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