二十五夜 魔物は食べニャイト

 グツグツ⋯⋯


「そろそろいけるにゃ、食べるといいにゃ」

「⋯⋯」

「⋯⋯」

「ん? 食べにゃーにゃか? 魔物にゃんて魔素を抜けばたいてい食材にゃ。こいつらにいたってはエビとタコにゃ。塩茹でしただけで美味ゃーにゃが。このあとは洞窟で食べてる余裕はにゃいかもにゃ」


 グランリバーオクトは水棲生物の名残りとは言え空気に晒されているので外皮は硬い。にゃので剥けば筋肉質にゃ旨味の強い白身にゃ。キャニオンロブスターはやはり外殻が硬いので食べやすいように削いで食べるにゃ。頭胸甲の中に詰まった味噌に身を浸して食べると絶品にゃ。


「もっちゃもっちゃもっちゃもっちゃもっちゃもっちゃもっちゃもっちゃもっちゃもっちゃもっちゃ⋯⋯ん〜♪」

「美味そうにゃ⋯⋯」

「ですにゃ⋯⋯」

「たくさんあるんにゃ。食べればいいにゃ。いいかげん魔物食にも慣れろにゃ」

「「にゃ!」」


 もっちゃりもっちゃり食べ始めるふたり。


「どうにゃ?」

「っまい! まさかこんなに美味いとは!? 見た目とはあてににゃらにゃいもんですにゃ」

「⋯⋯♡」


 クリスは旨すぎて言葉ににゃらにゃいみたいにゃ。目をキラキラさせてこっちを見てくる。


「魔物の味を知ると、それがモチベーションににゃって討伐するのにも気合がはいるにゃよ。このあとはおそらくにゃにも口に出来んにゃ。たくさん食べておけにゃ」


 黙々と食べることに夢中にゃふたり。


 この先は洞窟と思われているにゃがダンジョンらしい。俺も未踏のダンジョンにゃ。どんにゃ魔物がいるとも知れにゃい。


 ⋯⋯はあ。


「にゃあお前、さみしいにゃね?」


 俺の頭の横で巨大な首をフンフンと縦に振るサーペント。顔をさするとうれしそうにバシバシ尻尾を地面に打ちつけて鳴らす。

 離れたあとから俺たちについてきているのは知っていたにゃ。薄々感じてはいたにゃが、ワンコ属性が強めにゃね。


「お前、名前あるにゃか?」


 俺が名前を聞くと、体を大きく持ち上げて胸の辺りを見せてくる。

 仔猫キティが書いたような文字で『ココル』と書いている。何故か自慢気にゃ。


「ココルにゃ?」


 フンフン縦振り。


「にゃあココル、この先の洞窟は知ってるかにゃ?」


 フンフン縦振り。


「にゃあココル、このあと奥まで案内出来るかにゃ?」


 フンフン縦振り。嬉しそうにゃ。本当に猫懐っこいにゃね。間違いにゃい、ワンコ属性持ちにゃ。


 ん?


 ココルの視線の先にタコの頭。舌がチロチロと、うん、舐めてるにゃね。


「これ、欲しいにゃか?」


 フンフン縦振り。


「俺とお前は友だちにゃ。その証としてくれてやるにゃ。余ったタコ足もエビも食べるといいにゃ」


 ココルは俺の頬に自分の巨大な頬を擦りつけると、ノソリと身を乗り出し、大きくアギトを拡げてタコを丸呑みにしてゆく。

 さっき四体もカトブレパス食べたとこにゃに、もう消化したにゃ? 魔物は魔物を食べて体内でマナに変換すると言う。ココルのマナは相当なものににゃっていると思われ。単純にココルが敵だった場合、とても勝てる気がしにゃいにゃ。


「テンテは凄いにゃ」

「へ?」

「サーペントまで懐柔させるにゃんてびっくりですにゃ」

「本当ですぜ、ノックスの兄貴」

「誰が兄貴だにゃ! こんな厳つい弟分知らにゃーにゃ!」

「つれねーですにゃ。これから危険なダンジョン共にするんですから、兄貴とくれぇ呼ばせてくださいにゃ」

「勝手にするにゃ。それからこいつは俺のダチにゃ。名前もココルという立派にゃ名前があるにゃ。俺はココルを懐柔とかしない、仲間にゃ! それを忘れたら先生も兄貴も降りるからにゃ?」

「「わかりましたにゃ!」」

「ココル〜、これも食べるにゃ〜♪ テンテの仲間にゃらボクの仲間でもあるにゃ! ボクたちは友だちにゃよ!」


 クリスがココルにエビの足をやっているが、そのまま呑まれてしまいそうでハラハラするにゃ。でもココルも嬉しそうにゃので見守っている。オルガは少しビビっているようにゃ。

 ココルがいればたいていの魔物は怖くにゃいだろう。しかしここは下層。油断は出来にゃいにゃ。

 そして洞窟からは異様にゃほどの魔素が流出しているにゃ。

 ダンジョンと言うからには魔物が生まれる場所にゃ。この魔素濃度。このヒリつく空気には覚えがあるにゃ⋯⋯。


 俺はココルの首を撫でて洞窟の入口に視線を向けた⋯⋯、、、?


 洞窟入口横に小さにゃ横穴があるにゃ。そしてそれは横穴と言うよりも──


 ──玄関!?





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