二十四夜 俺がやらニャイト

 目的地は下層のその奥、洞窟の奥だと言うことにゃが、あのミャスリル銀を持って帰ったヤツはどんなヤツにゃんだ?


「オルガ、お前は右を頼む、俺は中央から左、クリス、殺り損ねたやつにトドメを刺せにゃ!」

「「にゃ!」」


 スカラベ山の渓谷は洞窟に近づくにつれ峡谷となっており、山肌が左右から迫り、水無川(水のない、あるいは地下水となっている川)とにゃっている。その昔、川だった名残りで水生生物を思わせる魔物が棲んでいる。

 今目の前にいるキャニオンロブスターはその一種だ。一見大きなサソリに見えにゃくにゃいが、クソデカいザリガニで毒はにゃい。とにかく数が多いにゃ。


「いいか? 急所は頭胸甲の後端のすき間に爪を立てれば死ぬが、脅威はあの巨大なハサミにゃ。見ろ? ハサミの付け根は細くにゃってるのがわかるにゃ?」

「「にゃ!」」

「トドメは後からでもいいから、ハサミを落として無力化するのが先決にゃ。アレに挟まれるとひとたまりもにゃいにゃよ!?」

「「にゃ!」」


 俺は爪、オルガはハルバードに持ち替えてキャニオンロブスターの無力化にあたる。無力化されたキャニオンロブスターたちをクリスがトドメを刺す流れにゃ。


 ザシュ!ザシュ!ザシュ!ザシュ!

 ザック!ザック!ザック!ガイン!


「オルガ、ハルバードは別に切らにゃくてもいいんにゃ。奴らはハサミや脚に強い衝撃が加わると自切する習性があるにゃ。鈍器としてぶん回せにゃ!」

「なゃるほど、了解にゃ!」

「テンテの爪さばきが凄いにゃ! あんにゃ硬そうにゃハサミをいとも簡単に落としていくにゃ!?」

「甲殻と言えど継ぎ目の可動部は比較的柔らかにゃ素材にゃ。まあ、俺の爪の前に硬さは意味を為さんがにゃ? 見てろ?」

「にゃ?」


 スパパパパパパパン!

 バラバラバラバラ⋯⋯


「⋯⋯生殺しの爪ってにゃんですにゃ?」

「ああ、これか? を簡単に生殺しに出来る爪にゃ。それ以外は見ての通りの斬れ味にゃ」

「猫を殺さにゃい⋯⋯テンテーらしい爪にゃ」

「どんな生き物でも殺さにゃーで済むにゃらそれに越したことはにゃーにゃ」


 スパパパパパパパン!

 バラバラバラバラ⋯⋯


「殺生にゃんざするもんじゃにゃーにゃよ」


 俺ひとりにゃらこいつらとて殺さずに進めるにゃ。が、クリスの安全を考えると一掃せざるを得にゃーにゃ。帰り道も確保しにゃければにゃらにゃーし。

 そしてキャニオンロブスターがいると言うことは、それを捕食するモンスターもいるということにゃよね。


 グランリバーオクト。


「クリス下がれ! オルガ、クリスを頼む!」

「「にゃ!」」


 まだ距離はある。しかし逃げ場はにゃい。切り刻むには質量がケタ違いにゃ。さっきのサーペントと良い勝負じゃにゃーか? 俺にこいつがやれるにゃか? 


 くそ、迷うにゃよ俺!


「やれる!」


 跳躍。岩肌を駆け。爪をかけて回転。更に登り。グランリバーオクトの頭上に位置する。


 大量のキャニオンロブスターを一瞬で完食。狙いはオルガたちへ。


 ズリズリとうねる足を壁に張り付かせて浮き上がり、オルガへ覆い被さろうとするグランオクト。


「させるか! 虎刈一閃ティガー・スラッシュ!」


 ズバン! 特大の斬撃が壁に張り付くグランリバーオクトの足四本を断裂!!

 ズルリ、体制を崩し、ズドン、片側が滑り落ちる。ヌラヌラと残った四本の足でオルガたちを狙う。


「お前の相手は俺だろにゃ! 嵐猫牙ファング・ストーム!」


 ズババババン! 俺はヤツのうごめく足の間に飛び込み、斬撃を乱舞させ千々に切り刻む。


 シュタ、オルガたちを背後に着地。


 短くにゃった足で体を浮かそうとするも、その重みで何度も崩れ落ちるグランリバーオクト。足がにゃくなったタコなどタダの肉塊にゃ。已む無くトドメを刺し、グランリバーオクトを討伐完了にゃ。


「し、死ぬかと思いましたにゃ⋯⋯」

「にゃに言ってるにゃ。まだ洞窟の外にゃよ」


 身震いするオルガとクリス。


「お前たち、ここにいるかにゃ?」

「いや、置き去りにされる方が怖いですにゃ。ここまで来たらついて行きますにゃ」

「テンテ、ボクは足手まといじゃにゃければ、テンテについて行きたいですにゃ」

「そうか、にゃあ、とりま飯でも食おうにゃ」


 ⋯⋯。


「「へ?」」

「腹が減っては戦はできにゃーにゃよ」




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