6-7
深夜〇時。
ベッドルームのドアが開く。リビングルームで作業中の職員の視線が集中してしまい、気まずそうに会釈を返す新人。クラッシュは笑いを堪えきれず、自分の腕で口元を隠して震えた。
「おはよう」
洗面台で気持ちばかり髪と顔を整え戻ってきた新人に言う。
「おはようございます。すみません、自分でもびっくりするほど寝てしまいました」
クラッシュはまた笑った。
「良いことじゃないか。嫌味じゃない、本心だ。この場にいる全員のな。すっきりしたか?」
「とっても! ありがとうございます!」
彼女の表情を見てクラッシュも満足げに頷く。そして彼女も疑問に思っているであろうことをNSB職員の一人を捕まえて尋ねた。
「防犯カメラの追跡状況を聞いてもいいか? レディの居場所は掴めそうか」
「……正直、芳しくないですね。下水道管理局の前でレディが数名の男に襲撃され、パソコンを投げ捨てていった瞬間を捉えた映像はあるんです。男たちの顔は隠されているのでこの映像からの判別は難しいですが。その後、彼女は車に連れ込まれています。ナンバーを調べましたが盗難車でした。
それから今までずっと我々で手分けして街に設置された防犯カメラで車の行方を追っているのですが、彼らは防犯カメラの位置をきちんと把握して犯行に及んでいたようで。防犯カメラの死角で繰り返し車を乗り換えられてしまい、レディを車から下ろした場所を見つけられていない状況です。随分と用意周到な連中のようです。申し訳ありません」
「『チーム』は俺たちもずっと探してたのに一向に尻尾を掴めなかった組織だからな。仕方ないさ。カメラでの捜索は続けてくれ。君たちの分析力はいつもとんでもなく優秀だからな。頼りにしてる」
クラッシュは職員の肩を叩き、作業に帰す。新人を連れてソファに掛けた。
「聞いての通りだ。レディはまだ見つからない。どういう訳か犯人からの要求も送られてこないしな。レディが粘ってるからだといいんだが」
「何かしらの抵抗をしてるってことですか?」
「人を動かす才能はピカイチだからなあ。人質を取ってるのに引き換えの要求が届かないのは、あのアディールを説得してこっちに都合のいい要求を飲ませようとして揉めてるからだといいなという俺の願望だ」
クラッシュは自嘲する。新人は唇を引き結んで繰り返し頷いた。
「そこでだ。俺たちは今から現場に戻ろうと思う。『チーム』が待ち伏せしてるリスクもゼロじゃないが、どんな手掛かりでもほしい。爆破された俺たちの職場を調べ上げるぞ」
「了解!」
「返事が様になってきたな!」
クラッシュは親指を立てた。
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