6-4

 残ったクラッシュはソファにひっくり返ってテレビで爆破事件のニュースを見たりスマホを眺めたりしていたが、三十分ほど経ってベッドルームをそっと覗くと音もなく出てくる。

「寝たのか」

 銃の手入れをしながらそれを見ていたスナイプが尋ねた。

「ああ寝た。とんだ大物だ。このままだと呼び名は『寝坊助』だな」

 クラッシュはどかりとソファに腰掛ける。

「泣いてあったかい飯を食って血糖値が上がったらすやすやだ。俺の仕事に子守りが入ってた覚えはないぜ」

 背もたれにしなだれかかり、ぐぐっと首を伸ばして天井を見上げた。

「ケチ臭いこと言うな。後輩育成も仕事のうちだろう。お前の給料にその分も含まれてる」

「ケチ臭いだって?! それは俺とは真逆の言葉だぜ。後輩育成はするが、あんたと違ってあんなでかい娘を持った覚えはないね」

 クラッシュはテーブルに乗っていたスナック菓子を開け、バリバリと噛みしめる。

「よくこの状況で寝られるよな。流石に俺でも寝ない」

「お前が言ったからだろう。守ってやるから寝ろと」

 クラッシュは一人で喋り続けていたが、スナイプが呆れたように口を挟んだ。クラッシュはコーラの底に残っていた氷を噛んで答えない。

「良いことじゃないか。あの子の平和ボケは俺たちが国民の安寧を守れていたって証拠だ」

 クラッシュはこれには頷いた。

「ああ。新人くんが俺たちの行動原理を全く理解できないように、俺にも新人くんが分からないから想像してみたんだ。新人くんが今までニューハンプシャーの田舎でどんな生活をしてきたのかって。

 地平線には緑豊かな山が見えて、この時期には観光客が紅葉なんかも見にくる。近所の人間は皆知り合いで、ハロウィンには子供たちが家々を回るんだろう。新人くんは広い庭のある一軒家で育って、優しい両親が揃っていて、兄弟なんかもいるかもしれない。『自分の街が好き』って言って警官になろうとしていた新人くんはきっと家族や親戚の自慢だっただろう。

 そんな新人くんがニューヨークへ来ていきなり上司が攫われて職場が爆破されたら、まあ泣きもするかと思った」

「想像力豊かだなお前」

「観察力があると言ってくれないか。大体当たりだと思うぜ」

 クラッシュは氷が溶けてほとんど水になっているコーラの底をストローで吸って音を立てる。

「だって泣くと思わなかったんだ。レディもUXも泣かないから。あれには参った」

「どっちも特殊な例だろう」

「そうなんだよな」

 二人は顔を見合わせ、低く抑えた声で笑った。

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