5-6

「車で話そう」

「賛成ね」

 クラッシュは新しく路上駐車されている車を拾い、新人、UX、スナイプを乗せて適当に走らせながら思案した。

「昨日の今日だ。このタイミングからして、ジョンソンが昨夜アディールと接触したときに俺たちの盗聴に気づかれ、支部の場所を逆探知された。

 いや……違うか。全てが繋がりすぎてる。今日、俺たちはジョンソンの予定外の行動に釣られて罠に嵌められた。あれは完全にやってきた俺と新人くんを捕らえるためだけに待ち構えていた。

 それなら、昨日のパーティーから仕掛けは始まっていたんじゃないか。武器の密輸なんて、俺たちの動きそうな情報を流してまんまと釣った。ジョンソンには利尿薬が効かなかった。パーティーの前からジョンソンと『チーム』は既に接触していて、あの爺さんにアディールが事前に入れ知恵したと考えるべきだ」

「なるほど。筋は通っているわ。それなら最初から狙いはNSBだったと」

「『チーム』はテロ行為が目的だからな。政府の一機関であるNSBを狙ってもおかしくはないさ」

「……予告なんてしなければ支部を壊滅できたのに、馬鹿にされてるわね」

 クラッシュはハンドルを指で叩いた。

「レディを人質に取って、これから何やら要求してくる気かもな。収監中のテロリストの釈放とか」

「そうね。政府の方針として、テロリストに屈する訳にはいかないけれど」

「そのために助けにいくんだろ」

 UXは腕を組んだ。

「優先順位を付けるために、目的をはっきりさせておく必要があるわ。NSBの役割はアメリカ国内のテロ対策と防諜。レディ・フローレスは今後の作戦において重要な存在であり、テロ組織に良いように使われる訳にもいかないので助けるのは課題の一つではある。

 武器の密輸については? 私たちをおびき寄せるためのただの餌だと思う?」

「ジョンソンが『チーム』に協力するメリットがないと取り引きは成立しないだろう。武器の密輸かどうかは分からないが、ジョンソンにとっても何かしらの利益が生まれる契約があると考えるべきだ」

「同感ね。そして『チーム』が絡んでいるとなれば、何にせよその内容も国家のために阻止した方がいい可能性が高い」

「楽しくなってきたなあ!」

 一体何がだ。クラッシュが突然声のトーンを上げたので、新人は後部座席で仰天する。

「結局何も捨てられない。総取りしなきゃいけないって訳だ。トロッコ問題なんてクソ喰らえだね」

 新人はシートベルトをしていなければひっくり返っているところだった。あの講義は何だったというのか。

「全員叩き潰してやる。地獄の果てまで追いつめて、気軽に俺たちを敵に回したことを後悔させてやろう」

 派手にやっていいよな? とクラッシュが好戦的に言う。

「今回はいいでしょう」

 UXは頷いた。

 許可出しちゃうんだあ……と新人は呆気に取られることしかできない。

「暴れてやろうな!」

 クラッシュが後部座席に同意を求めているのに気づく。

「レディが心配だ」

 スナイプは一言だけ呟き、新人もこくこくと頷いた。

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