5-3

 地上で悲鳴が上がり、誰もがビルを見上げる。窓ガラスが割れ、火が噴き上がる。

 待機していた消防隊員たちは途端に動きはじめた。

 ビルから距離を取ろうとする群衆に押され、クラッシュたちも入り口から遠ざかる。新人は揉みくちゃになりながら、窓の個数を下から数えていた。

 爆発が起きた。予告は本物だった。爆破されたのは一箇所だ。高いビルで、たった一箇所だけ。

 十五階。

 新人は何度か数え直して、唇をわななかせた。

「爆破予告を送ってきたのは誰だ」

 クラッシュがビルを睨み上げたまま声を絞り出す。サングラスに燃え盛る炎が反射していた。

「『チーム』」

 UXの返答に瞠目したクラッシュが踵を返す。

「止まれクラッシュ!」

 新人が追う前に、UXの声が鋭く響いた。クラッシュが振り返らず立ち止まる。新人はどうしていいか分からなかった。こんなときに、チョコレートを抱いてぱっと顔を綻ばせたレディの顔が頭に浮かんでいた。それを満足そうに眺めてすぐに部屋を出てしまったクラッシュの横顔も。

 彼女は立ち尽くして子供のようにわんわん泣いてしまいたくなった。彼を行かせればこのまま二度と会えなくなる気がした。昨日も今日も彼が自分をフォローし後から追ってくれたが、本気で置いていかれたらきっと追いつけない。

 それでも思考を放棄しなかったのは、彼が「いざ窮地に陥ったとき、君は足を竦ませない。無理矢理にでも状況を打開する大胆さと勇気がある」、そう言ったからだった。その言葉の似合う自分でありたかった。

「貴方が一人で行って何になるの。どこへ行くべきか分かっているの。人手はいつだって足りていないのよ。自殺行為は許さないわ」

 UXは淡々とクラッシュに言葉を投げかけた。

「任務に支障はないから助けにいくなって?」

 クラッシュが振り向き、ツカツカと数歩分の距離を戻ってくる。

「あんたはそう言うだろうな。あの非力が直前にパソコンへし折ってぶん投げていったんだ。十中八九、チームに攫われてる。捕まったってあいつは機密事項を喋らない。爪を剥がされたって犯されたって死ぬまで一言も漏らさない。そういう女だ。だから助けにいかなくとも国家にとって痛手じゃないって言うんだろう。

 いいや、痛手だね。あいつは逸材だ。そんじょそこらで見つかる才能じゃないってスカウトしたあんたなら分かってるだろう。俺の替えは利くがあいつの替えは利かない。一刻を争うんだ、俺が一人で出る。あんたが許可しないなら俺はここを辞める。俺はレディだったから従ってるんだ」

 一息に言ったクラッシュにUXはため息を吐いた。

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