第8話
ヤグラザカに会う前に協力者と待ち合わせの時間を決めて街に出る。小さな店舗の中に入り陶器を見ながらレンはひとつのコップを手にしてレジに並んだ。
「お会計が330円でございます。ちょうど330円頂戴いたします。レシートはご利用になりますか?」
「いえ、いりません」
「ありがとうございました!」
店外に出て、近くにある公園のそばでコップを思い切り割る。バラバラに散らばった破片のひとつを手にして、レンは公園から立ち去った。そして数時間後待ち合わせの場所に向かい協力者を待った。
「レン、あの公園にヤグラザカが来る」
突然背後から現れる協力者に驚きながらもレンは静かに頷き時間を待った。そしてスーツを着たハゲ頭の男が公園に現れ数分間スマホをチラチラと確認しながら男は待っていた。ヤグラザカだと確信した二人は男に近づく。
「ヤグラザカか」
「……レンくんではないか」
「……お前」
互いに顔を見合せた瞬間驚いていた。ヤグラザカと呼ばれる男は坂上櫓というレンやアスミの中学時代の担任教師だったからだ。
「テメェがアスミと中村の原因の発端か」
「へっ、何を」
「とぼけんなよ。全部わかってんだぞ」
「ユミもアスミも中村ちゃんも美しくて素晴らしかったよ」
「最低だな」
「お前がなっ!」
ヤグラザカはカバンからナイフを取りだしレンを突き刺そうとしたが、レンはすぐに交わして手に持っていたコップの破片でヤグラザカの眼をつく。
「アアアアアアアッッッ!!」
「……騒ぐなよ」
「こ、このガキィ!」
「おい、おっさん。頼むぞ」
レンはその場から離れ、すぐに消えた。それを追いかけようとしたヤグラザカだが近くにいた男に頸動脈を絞められ落ちた。
―――――――――――――――――――
「ここは……」
暗く寒い倉庫の中、目の前には黒いレインコートを着た二人が立っていた。厳重に装備された姿にヤグラザカは笑った。
「なんだお前らその格好は!」
「……質問だ」
「はぁ?」
「アスミはお前と付き合っていたのか?」
「当たり前だろう。俺はどんなものでも手に入れる。アスミは俺とのセックスが気持ちよかったみたいでな。直ぐに堕ちたよ!」
「……そうか。アスミを殺したのはお前か?」
「そんな訳ないだろうが!」
「じゃあ殺したヤツに心当たりは?」
ヤグラザカは思い切り首を横に振った。レンは顔に手を当てて、またハズレを引いてしまったことを残念がった。するとヤグラザカはニコニコと笑みを浮かべながら言い始めた。
「アスミの動画は高く売れたぜ。中村もな。俺の家には秘蔵リストがたっくさんある。それを売りまくってたらウハウハだぁ。中村もアスミもそれがバレりゃAV女優落ちだ!」
「とんだクズだな……」
「レン、お前は女一人喜ばせれねえクソガキだよ!」
「もういい…… なんの情報もないお前など価値はない」
レンは近くに置いていた色々な種類の包丁を手にした。
「な、何をするつもりだ?!」
「料理だよ」
「お、お前人を殺すのはダメだろう!」
「あ?」
「生命は法によって最も保護されるべきものだって授業で教えたよな。な? 頼むよ殺さないでよ」
「そんな生命を奪った一端を担っているお前が言うのか」
「え?」
レンはヤグラザカの足の指を切断し始める。とてつもない叫び声が響く。二本目を切断し始めた瞬間、二回目の断末魔が聞こえる。
「……叫ぶしか能がないのか」
「こ、このクソガキ……」
「さぁ、三本目いくぞ」
「殺してくれえええええ」
「……仕方ない。おっさんやってくれ」
「あぁ。わかった。レンお前これからどうするんだ。手がかりが無くなったぞ」
「……そうだな」
レンは倉庫をあとにした。倉庫の前には殺した証明として再びあの字を書いた。
『punishment for the sinner』
レンは黒いレインコートを燃やして倉庫から急いで消えた。息が切れフラフラと歩きながら足が勝手に向かっていた先はアスミの自宅だった。チャイムを何度も鳴らしたが誰も出なかった。すると通りがかりのおばさんがレンに声をかけて言った。
「そこのお宅、引越ししたわよ?」
「え……?」
「あれ、レンくん?」
「え、えぇ」
「アスミさんのこと本当にご愁傷さまでした……」
「……引っ越したんだ。そっか」
レンは力ない歩みのまま家に帰宅した。そしてベッドに飛び込み今後どうするべきか迷いながら寝についた。
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