第2話 初めまして!異世界!
真っ暗なところだった。どこを見ても暗くて何も見えない。そんなところに僕はいた。
どれぐらい経ったのか分からなかった。突然、光が見え始めた。僕の体がその光の方へ引き寄せられて行った。
そして、光に覆われた。僕の意識は途絶えた。
(ん?ま、眩しい!!)
僕は突然眩しい光に包まれ、意識を引き戻された。
(な、何があったの?)
僕は周りを見渡すために目を開けようとした。しかし、開けることができなかった。
(え?な、なんでーーー)
僕は不思議に思ったため、誰かに助けを求めようと声を出そうとした。すると……
「ううう……オギャアオギャアオギャア!!」
僕の口から出された声は、ありえないほど高く、オギャアという言葉しか出てこなかった。さらには、話したいのに話せず、ただオギャアと叫ぶことしかできなかった。
(え…どういうこと?それに、オギャアって…ま、まさか……)
僕は嫌な予感がした。
「わぁ!産まれましたよ!テア様!」
「はぁ…はぁ…はぁ…う、産まれた!わ、私の可愛い可愛い子」
「さぁ、抱っこしてください、テア様」
誰かの声が聞こえてきていた。
そして、僕の体がふわっと浮かぶと、ふわふわした何かの上に置かれた。
僕は必死に目を開けようとした。微妙に開けることができたけれど、視界がぼやけていた。
(ここ…どこ?なんか見えるんだけれど……)
僕は目を凝らそうとしたけれど、やっぱりぼやけたままだった。
「私の可愛い子、こんなに愛らしい!」
僕の顔に何かが触れた。よーく見ると手だった。
(人?………なんか大きいし、近いな)
僕は自分の手を前に突き出し、何かに触れようとした。すると、確かな感触があった。
(これは……)
「ふふふ、私が分かるかしら?」
声から察するに、多分女性だ。その人が僕にさらに近づいてきた。そして、僕の鼻と女性がぶつかった。その時に僕ははっきりと見ることができた。
(やっぱり女性だ!でも、やっぱり大きいような……)
「可愛いわ!こんなにも……」
その女性は僕の頭を優しく触ってきた。
(あ、あれ?なんだか眠たくなってきた……うう……ふにゃ)
僕はいつの間にか眠ってしまった。
(はっ…!!い、いつの間にか寝ていた。)
どれぐらい経ったか分からないけれど、目を開けると、どこかの部屋にいた。
(うーむ、まだ、はっきりとは見えないけれど…これは、柵?どこに置かれているんだ?僕)
周りを見渡すけれど、誰もいなかった。
(よし、動くか!)
僕は起きあがろうとした。
(あ、あれ?体が起き上がらない……な、なんで?)
自分の手を見てみた。
(え、なんでこんなに小さいの?手も足も…)
不安になった僕は話してみることにした。
「ううう……あうあ…うああ……えうあう…」
(う、嘘だろ!話せない…マジで?!)
めちゃくちゃ焦った僕はどうにかしようと必死に話し続けた。すると…コンコンコン
「ゼオ様…起きていらっしゃいますか?」
メイド服を着た女性が部屋に入ってきた。
(たーーすーーけーーてーー、ぼ、僕話せないー)
「あううああああ、う、あうあー」
「起きていらっしゃいましたか。おむつですか?それともミルクですか?おねむですかね?」
メイドさんが僕を抱っこしてくれた。そのおかげで僕は起き上がることができて、周りをよくみることができた。
(ぼ、僕がいた場所…あれ、ベビーベッドじゃね?ま、まさか、僕、赤ちゃんになったの?)
話せなかったり、手足が短かったり、体を自由に動かせなかったり、いろんな理由が重なって、結果、赤ちゃんなのでは?と思った。
(それに…ゼオ様って言ってたな、僕そんな名前じゃないし…でも、このメイドさんがそういうってことは、僕がゼオって名前なんだろう……うーんややこしい……これは転生ってやつなのかな?)
転生は向こうの世界でよく聞く言葉だったが…まさか、自分がなるとは思わなかった。
(アルデウスさんは僕の年齢のまま異世界に行くとは言ってなかったし。仕方ないことかなーはぁ…不便だな)
僕は自分の手を見た。とても小さくて、力もないような手だった。
(僕、これからどうしよう…)
頭を抱える問題だった。
「ゼーーオーー!パパでちゅよーー!!」
「あうああああ!!!!」
(いーーーやーーーだーーー!!!!)
パパと言ったこの男は、ラウド・リンクス
ウィスピア地方にあるリンクス邸の現当主で、僕のパパさんらしい。因みに僕は、ゼオ・リンクス、ママさんはテア・リンクスというらしい。
ウィスピア地方とは、この世界にある7つの地方の1つで、農業が盛んな地方らしい。
「テア!ゼオが俺を拒むんだが……パパ悲しい……」
このパパさん、ちょっと子供を溺愛しすぎだと思うんだけれど……自分のことをパパって言ってるのが……
「あらあら、ゼオはママがいいのかしら?おいで!ゼオ!」
ママさんもママさんで、僕に対して、甘い声で話してくる。可愛いからっていう理由なのは、分かるんだけれど、そんなふうに話されると、こっちも困るんだけれど…
「あうう……ぴゃーはうばう…」
「あらあら、可愛いわねーゼーオー」
すごくニコニコしているママさん、ちょっとしょんぼりしているパパさん、この2人が僕の新しい家族らしい…
(ふぅ、とりあえず、整理するかー)
僕はこの世界のこと、僕がやらなければならないこと、それらを思い出すことにした。
(魔法や能力が使えるようになってるんだよなーあと、未来視と…使えるのかな?)
魔法を使おうと手を前に出した。
「あうあら…うあう…うらう…」
(ファイヤー…ウォーター…スパーク…)
しかし、何も起こらなかった。
(魔法…使えねーじゃん!!ちゃんと話せなかったからか?それとも、呪文とかがあるのか?な、なら、未来視は……)
僕は目に力を込めた。
しかし、何も見えなかった。
(何でだよー!!未来視も使えないじゃん!!)
僕はテンションが下がりまくった。異世界の話が好きな僕は、ワクワクしていたのに、使えず、消沈していた。すると…
「フォッフォッフォッ!遊んでおるのか?」
「あ、あうあああらああたああああ!!」
(どういうことですかー、使えないじゃないですかー!!)
僕は必死に訴えた。話せてないけれど……
「フォッフォッフォッ、話さなくて良い、心の中で話すことができるぞい!…何言ってるか分からんからな」
(ひ、酷くないですか?僕はなりたくて赤ちゃんになってるんじゃないです!!)
「魔法はまだ使えんよ、赤ん坊が魔法や能力を使ったら、怖いじゃろう、未来視も魔力がない今は使えんよ」
(魔力って…やっぱりいるのかー)
「当然じゃ、魔法を使うにも、未来視を使うにも魔力がいる。ま、日が経つにつれて魔力量が増えるから、それまで待つんじゃな」
(ううう……使いたいのにー)
「フォッフォッフォッ、それはそうと何とか話せておるな、わしとお主」
(ですねー、助けてくださいよー、僕この世界のこと知らないんですから)
「うむ、任せるが良い!さて、わしは寝てくるかの」
(うぇぇええ!!もう帰るんですか?てか、寝るんだ…)
「神だって寝るぞい!……安心せい…………ほい!!」
ボフンッ
すごい音と共に煙が現れ、僕を覆った。
(な、なに?!)
「ミャーーオ……」
(え?)
煙が無くなって、声がしたため、その方向を見ると、真っ白な猫がいた。
「この猫をそばに居させると良い、この子はスノウキャットという種族の神獣でな。神に支えておる存在じゃ。お主のパートナーとして契約してあげて欲しいんじゃ」
(け、契約?!スノウキャットって……)
驚いていると……
『何だ…小さな子供だな…おい!アルデウス!こいつが俺が支える子供なのか?』
どこからか声が聞こえた。周りをキョロキョロと見るけれど、誰が話しているのか分からなかった。
「うむ、お主が支える子じゃ。必ず守るんじゃな、この子は優しい子じゃから」
『ふーん……おい!小僧!』
(ひゃ…ひゃい!)
『俺様がお前を守ってやる!名前は?』
(ゼオ……です)
『ふむ、ゼオか……いい名だ。おい!ゼオ!俺様に新しい名前をつけろ!それが契約になる』
(あ、新しい名前?つ、付ければいいの?)
『おうよ!』
(何でもいいの?)
『うーん…なるべくかっこいいやつにしてくれ!!』
(な、なら……カムイはどう?)
『カムイ……なるほどな……いいなその名前…カムイ、カムイ……うむ』
「気に入ったようじゃな!」
(じゃ、じゃあ!カムイ!よろしく!)
『へっ!おう!よろしく頼むぞ!小僧!』
(こ、小僧じゃなくて、ゼオだってばー)
「フォッフォッフォッいいコンビになりそうじゃ」
こうして僕に友達ができました。
◾️神々 視点
「おい!アルデウスはどうした?!」
大きな神殿にある一部屋に多くの神々が集まっていた。そのうちの1人、大地の神、イザグルは最高神で創造神のアルデウスが不在であることに苛立っていた。
「まあまあ、そう怒らないの、全く短気なのだから…」
「誰が短気だ!アズドラ!この鬼畜神め!」
「なっ…誰が鬼畜神ですって?!イザグル!」
アズドラと呼ばれた神は、森林の神で、エルフやドワーフが信仰している神様だ。そのアズドラが拳を握りしめて、今にもイザグルに襲い掛かろうとしていた。すると…
「静粛に…うるさいぞお前たち、遊びに来たわけじゃないんだ、黙っていろ」
「あああ?!」
「何ですって?!」
静かに口を開いた神は、海流の神、クルドだった。いつも冷静沈着で静かに物事を見守る彼が、少し怒ったように2人に言った。
「アルデウス様は今、人間に会っています。待っていれば、帰ってきますよ」
「けっ!人間だー?そんなもんにあって何になるんだよ」
「何でも、あの世界を救う救世主だとか」
「救世主?本当ですの?」
「……らしいですが…どうか分かりません」
クルドの言葉に他の神々も混乱していた。すると…
「うむ、遅くなってしまったすまない」
アルデウスがやってきた。
「おい!アルデウス!遅いぞ!みんな集まってるのによー」
「フォッフォッフォッすまんすまん」
「……人間に会っていたの?」
「!!……うむ、それについてみんなに聞いて欲しいのじゃ」
「あ?」
「………」
「へぇー」
他の神々もその話が気になって、アルデウスを見ていた。
「今、この神々の中から邪悪なものが現れてしまったのは知っておるな?その神が暴れていることも、世界を混乱に巻き込んでいることも」
「ああ…あのクソ野郎だな」
「ええ……」
「……」
他の神々も思うことがあるのか、怒りがあるのか、空気が重くなっていた。
「うむ、その神を止めるための鍵となる人物がいてな、その者に会っていたのじゃ」
「鍵?」
「うむ、奴をもう一度わしらとの縁で結ぶための鍵、奴を止めるための鍵じゃ、あの子がいれば、きっと止めてくれる、救ってくれると思っておる。」
「それで、そいつに会いに行ったっていうわけか」
「そうじゃ、死なれたりしたら全てが無駄じゃからな」
「ふーん、止めれるのかよその人間に」
「うむ、その子は、自分のことより他人を大切に思っている子でな、他人のために命を賭けた子じゃ、あの神の心に寄り添ってくれると思っておる、それに、あのスノウキャットが素直に支えたのじゃ」
「は?」
「嘘でしょ?!」
「……本当か?」
「うむ、本当じゃ、わしらにも心を開かなかったあの子がな、今はカムイという名前になっておる」
「マジか」
「さて、お主らに集まってもらったのはこの報告だけではない、あの神の対処について話したくてな、時間をとらせてすまないが、力を貸して欲しい」
アルデウスが頭を下げた。
他の神々はその姿に驚き、何も言えなくなっていた。
イザグルが口を開いた。
「お前らーあのアルデウスが頭下げたんだ!ちょいと手を貸そうぜ、あの世界は俺たちの願いだろ?」
「「うぉぉぉぉぉおおおお!!!」」
多くの神々が賛成した。
「ってことで、アルデウス!手伝うぞ、その人間がどんな人間なのか知りたいしよ!教えてくれ」
「みな、感謝するぞい…あの子はな……」
それから神々同士で話し合った。
※あとがき
うむ、みな初めましてじゃな!アルデウスじゃ!
あの子は元気にしとるかのー?まあ、大丈夫じゃろう
いつか、あの神に会ったら、救ってくれるじゃろうか……
次回じゃ、3年後……魔法発現!!
お楽しみにじゃ!!
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