第9話 夢のようなパラダイスな場所に変態現る? ……ごめんなさい
「か、かわいい!! ふわわわっ!!』
と思わず叫んでしまい、慌てて手で口を押さえる。ドウェインに静かにって言われてたのに、1分も経っていないうちに思い切り叫んじゃったよ。そして私の大きな声に、一斉にこちらを見てきた可愛い存在たち。
広場にいたのは、ルーファスよりも小さなグリフォンの赤ちゃんたちと、他にもたくさんの魔獣の赤ちゃんたちだったんだ。そしてそんな赤ちゃんたちの周りで、赤ちゃんと遊んであげたり、お世話をしてあげている小さな魔獣の子供たち。
こんな可愛いが詰まった、まるで天国みたいな場所がこの世にあるなんて。見間違いじゃないよね? 本当に、今、私の目の前にあるんだよね?
ふと我に返った私。もしかして私、本当は空から落ちて死んじゃってたとか? そしてそのまま、あっちの世界へ戻って、天国と呼ばれる場所に行ったのかな?
だって、こんな夢みたいな、天国のような場所が現実にあるなんて、普通は考えられないよね?
『リン、何をぶつぶつ言っているんだ。お前は死んでいないし、見間違いでもない。というか何だその顔は』
思っていただけのつもりだったけれど、どうやらところどころ口に出していたらしい。私は自分のほっぺを軽くつねってみた。……痛い。信じることができずつい、どんどん強くつねってしまう。
『だからお前は何をしているんだ。そんなにつねったら痛いだろうが。それに可愛い顔が腫れてしまうだろう!』
ドウェインが私を地面に降ろすと、つねるのをやめさせてきた。私はほっぺをすりすりする。やっぱり痛い……。ということは、やっぱり現実? 本当の本当に? 私はじっと赤ちゃんたちを見つめた。そして……。
『……またその顔か』
「ん? なに?」
『いや、何でもない。……後でミラで顔を見せてやるか』
少し後に分かった事実。実はこの時、私は何ともいえない顔をしていたんだ。いうあ、何とも言えないというより、恐怖の顔をしてしまっていたっていうか。
赤ちゃんや子供の魔獣たちに、悪いことをしちゃったよ。だからみんな、最初に私を見たとき、あんな何ともいえない表情で私を見ていたんだな。
どんな顔をしていたかって?
ドウェインにこの天国のような場所について、説明を受けている時だった。私のおトイレに付き合ってくれたグリフォンさんが、ルーファスを連れてきてくれたんだけど。2人も私を見てすぐに、何とも言えない表情になってね。
そうするとドウェインがちょうど良いと、ミラという物をもってくるようにグリフォンさん言い。すぐにそれを持ってきてくれたグリフォンさん。
よく見るとそれは、私の背くらいある大きな鏡のような物で、ドウェインは私に自分の顔を見てみろと言ってきたんだ。
だからすぐに確認してみれば……。この世界へきて、初めて自分の姿を見た私。そのあまりにも幼児な姿に、何となく分かっていたとはいえ、ちょっと衝撃受けたよね、本当に幼児になってる、しかも3歳児にって。
でもそれ以上に衝撃的な事があって、すぐに幼児のことなんてどこかにいってしまったんだ。
私の顔がさ……。いやぁ、赤ちゃんたちや他の魔獣たちに、本当の本当に申し訳ないことを。いや、申し訳ない物を見せてしまったよ。
私の顔は、自分の大好きなものを見つめてニヤァと笑う、変態みたいな気持ち悪い顔になっていたんだ。まさか自分が、そんな気味の悪い笑い方をしていたなんて。そりゃあ、みんな変な目で私を見ていたわけだ。完全に不審者じゃん。
急いで自分の顔を揉んだ私。……どう? なおった? なんて、ミラを何度も確認していると。
『リン、だいじょぶ? リン、かわいい、でもそのおかおは、やめたほがいいよ。なんかダメなかんじかするから』
ルーファスに真剣な顔でそう言われたよ。いや、本当すみませんでした。
そうして何とか普通の笑顔まで戻した私は、その後、ルーファスと一緒に周りを見て回りながら、ドウェインの説明を聞いたよ。
ただ、私が近づくと、何匹かの赤ちゃん魔獣たちが私から遠ざかって、何かの影に隠れ、私をチラチラ見てきながら、
『あにょかお、おかちい。ちかじゅかないほがい?』
『なんか。ちかじゅいちゃ、だめにゃきがしゅる』
『きけん、あぶにゃい』
そう言ってきてね。その言葉が私の胸に突き刺さり、何度も心の中で謝って。大きいミラじゃなく、小さなミラをグリフォンさんが持ってきてくれたから、それで自分の顔を確認するっていう作業もしながら、説明を受けたんだ。
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【あとがき】
お読みいただきありがとうございます。ありぽんです。
こちらの新作
『第1回GAウェブ小説コンテスト』
に参加させていただきました。
『おもしろい』『続きが気になる』と思っていただけたら、
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