あやかしチャンバラセイバーズ~半妖怪の若殿様、自分を追放した勇者パーティーよりも楽しく冒険して成り上がる~
ムネミツ
第一部 第一章:駆け出しの街編
第1話:手始めはゴブリン退治・前編
俺、ヨウタロー・アダシノは溜息を吐きながら冒険者ギルドの建物に入った。
俺の白い着物に青い袴で帯刀と、和風な姿を見ても誰も気にしない。
様々な見た目や個性の人材が集って、依頼を求めたりと騒がしい。
冒険者ギルドらしい、いつもの景色だった。
「すみません、パーティー追放されました!」
隣の酒場で他の冒険者達が楽しんでいた、羨ましい。
他の冒険者が並ぶ行列を越えて辿り着いたカウンターで、用件を告げる。
「あらあら、リーダーの方は頭が残念な方だったんですね♪」
「いや、笑顔で辛辣ですねミカンさん!」
「聖剣を持った少年の勇者なんて、ありふれてますから♪」
白ブラウスの上に黒ローブを着た受付の職員のミカンさんが笑う。
長いオレンジの髪で眼鏡をかけた、色白巨乳美人だ。
彼女自身も冒険者で、錬金術師である。
「追放、強制脱退の理由は先方からは性格の不一致と連絡が届いてますが?」
「まあ、あながち間違いないです」
「いえいえ、あちらの監視も兼ねて入ってもらいましたが如何でした?」
「まあ、仲間のお姉さん達が勇者をコントロールすればマシになるかと?」
「了解です、ではこちらが監視依頼の報酬です♪」
ミカンさんとやり取りをして、報酬の五百マネーの袋をもらう。
貰った報酬は、指を振るい虚空に穴を開けてしまいこみ閉じる。
俺が勇者パーティーから追放された一件はこれで片が付いた。
裏依頼、ギルドから見込みのある冒険者に任される特別ミッション。
俺が任されたのは、問題を起こしそうなパーティーへの潜入調査。
勇者が女性の仲間を優先で希望していた事を、ギルドが疑問視したのが切欠だ。
年の近い男の俺も入れて、問題の勇者の素行を探らせてみたと。
「俺みたいな新人を、問題を起こしそうな所へ割り振らないで下さいよ!」
俺はミカンさんに文句を言う。
「適任の方を、仕事に応じて割り振るのが私の仕事ですから♪」
ミカンさんは鋼鉄のメンタルと笑顔で、俺の文句を跳ね返した。
まあ、仕事を終えてフリーになったので隣の酒場へと向かう。
「おう、ヨウタロー♪ 追放おめでとう~♪」
「ウェ~~イ、次の仕事はパートで家に入らないか~♪」
「そうそう、あんたの東方の魔法は便利なんだよね~♪」
酒と食事を楽しんでいる顔見知りのパーティーから、お声が掛かる。
ドワーフの神官に人間の少女の魔法使いにハーフオークの女戦士だ。
「こっちが空いてたら、宜しくお願いします」
俺はそう挨拶をしてカウンター席に行く。
「おう、何にする♪」
金髪白人マッチョでイケメンなコックのお兄さんが尋ねる。
「トニーさん、コカトリス南蛮ライスでお願いします」
「あいよ、しっかりくって頑張りな♪」
コックのトニーさん、彼も高レベル冒険者。
物凄い速さでと鶏の魔物の唐揚げとチキンライスのセットを出して来た。
「うん、このタルタルソースが美味いです♪」
「はっはは、野菜も食えよ♪」
「じゃあ、マンドラゴラサラダも追加でおプ」
「あいよ、任せな♪」
俺はトニーさんの料理に舌鼓を打つ。
もう、俺と同じ東洋風の少年勇者から追放された事などどうでも良くなった。
ハーレムが欲しいなら勝手に頑張れ、俺は知らん。
美味い飯を食ったら、心が回復してゆとりが出て来た。
「ごちそうさまでした、また来ます♪」
「おう、おそまつさん♪」
俺は腰のベルトポーチから、ガマ口の財布を出して代金を支払いギルドを出た。
街の中心にある冒険者ギルドを出て、白い石畳の敷かれた中央広場を南へ歩く。
「さてと、誰もいないな? 開門!」
昼間の商店街の路地裏で異界へのゲートを開き、中へ入り閉じる。
周囲の景色は田んぼや林と東方の和風な世界。
俺は道を進み周りに竹林のある広い武家屋敷へ向かう。
「あ、ご主人♪ お帰りなさいっす♪」
「ああ、ただいまチカゲ」
屋敷の門が開き、黒い犬耳と尻尾を生やしたの美少女ことチカゲが出迎えた。
白い着物に黒袴と稽古着姿の彼女は、俺を見るなり抱き着いて来る。
うん、豊かな胸の美少女に懐かれるのは嬉しい。
犬神の式神であるチカゲに手を引かれ、屋敷へと入る。
取り敢えず、次はどんな依頼を受けるかは休んでから考えよう。
屋敷の中では、簡素な着物を着た器物の頭を持つ人型の妖怪達が俺を出迎えた。
「皆、ただいま~♪」
「「「若様、お帰りなさいませ~~~♪」」」
しゃもじや提灯や付喪神の式神達から挨拶が来る。
ここは異界である幽世にある俺の屋敷。
俺はここで暮らしつつ、外に出て冒険者をしていた。
「ご主人、ミカンさんの依頼とは言え追放って人聞きが悪いっすね?」
「気にしてないよ、ギルドじゃよくある事さ」
チカゲとちゃぶ台を囲み、付喪神の女中さんが運んで来たうどんを食べる。
「でも、これで私を連れて行ってくれるっすね♪」
「ああ、頼むぜチカゲ♪ まあ、腹が立たん事もないから俺は奴らより名を上げて行きたい」
「了解っす♪ ご主人と私で、最強チームに成り上がるっすよ♪」
俺とチカゲはハイタッチを交わし、成り上がりを誓った。
成り上がるには、依頼を受けて成果を出して行かないとな。
翌日、俺はチカゲと冒険者ギルドへとやって来た。
チカゲの格好は着物の上に赤の胴丸、武器は腰に差した太刀だ。
「それでは、お二人にはイースト村のゴブリン退治をお願いします♪」
「はい、了解っっす♪」
「チカゲと一緒に頑張ります」
俺達は受付でミカンさんから依頼書を受け取り、ギルドを出る。
「チカゲ、足に
俺は緑の旋風が描かれた、白い呪符を生み出す。
「ご主人? 相乗り荷車でのんびり行きませんか?」
「いや、期限と報酬を見ると交通費の方が高くなる」
「ご主人、ちょっとケチっすよ?」
「いや、当主としては家計も大事だぞ? まあ、私費で飯を驕るから♪」
「はい、なら了解っす♪」
俺達は足に呪符を張り、疾風の如く動き片道三時間の距離を三十分で到着した。
「うへえ! 何かこっちにゴブリン軍団が攻めて来たっす!」
「行くぞチカゲ! 突撃だ!」
「やるっすよ!」
俺は腰の刀、東洋の聖剣である
チカゲも太刀である、
光の刀と炎の刀を振るい、緑色の小鬼達を切り捨てて行く俺達。
「ご主人、これはもしかしてただの退治で終わりそうにない奴っすね?」
「ああ、三日間の片付けるにしては何かおかしい」
村の入り口に散らばるゴブリン達の死骸を見て思う。
これは、調べ事が必要だな。
「村の人達に聞き込みっすね」
「ああ、依頼主の家に行こう。 その前に、
俺は赤い呪符を生み出して飛ばし、ゴブリン達の死骸を灰も残らず火葬する。
現場を片付けてからチカゲと共に、村長の家を目指した。
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