序章から一気に読ませて頂きました。
火の魔女が治める王国――エフレイン。
そこでは、炎は力であり、誇りであり、血に刻まれた宿命そのもの。
蘭華荘に集う二人の女――冷静な指揮官カトレアと、誇り高い部下シャルロット。
彼女たちの間に交わされる一つひとつの言葉から、王国を覆う不穏な気配と、戦火の前夜に立つ女たちの決意が静かに滲み出す。
紅茶の香りの中に潜む緊張、優雅さの裏で進む諜報戦。
魔獣〈不死鳥ヴェルミオン〉の登場で、一気に広がる世界のスケールは圧巻です。
本作は、「女性たちの強さ」と「炎の象徴性」を美しく重ね合わせた本格ファンタジー。
緻密な描写と格調高い文体が、まるで古典の叙事詩を読むような没入感を生み出しています。
静と動、理と情――そのすべてを内包した“火の魔女”の物語。
戦場に燃えるのは炎か、それとも彼女たちの信念か。
壮麗で、そして静かに熱い序章です。