その男、神になる

【目覚め】

地獄の底へと堕ちたルシファーは、深い傷を癒すため、長い眠りについた。

折れた翼はゆっくりと再生し、かつての輝きを取り戻しつつある。

あと少しで、すべてが元に戻る。そう思ったその瞬間。

静寂を断ち切るように、その瞳が一瞬で開かれた。

「始まりの始まりだ」

目覚めと同時に、彼の内で “復讐” という名の炎が燃え上がる。

ルシファーは復讐を果たすため、眠りの中でさえ、幾百もの計画を組み上げていた。

天界、オリュンポスには、絶対的な力を誇るゼウスを頂点に、「十二柱」の神々が玉座を占めている。

彼らは 《オリュンポス十二神》 と呼ばれ、天界の秩序そのものを象徴する存在だ。

ゼウス。ヘラ。ポセイドン。アテナ。アポロン。アルテミス。アレス。ヘルメス。デメテル。アフロディーテ。ヘパイストス。ヘスティア。

さらに、大天使ミカエルをはじめとした、天界の守護者たちがその玉座を守護している。

正面から挑めば、分が悪いのは明らかだ。

「必ずしも、天界そのものを直接叩き潰す必要はない。」

復讐とは、形を選ばぬものだ。

天界に乗り込むのではなく、現世で、その復讐を果たせばいい。

ルシファーの瞳が、ゆらめく闇を映す。

現世では掟により、神の力は限定されている。

人間界は試練と選択の舞台であり、神が真の力を振るうことは固く禁じられているのだ。

もし神が本気を出せば、空間は歪み、時間すらねじれるだろう...

現生の世界ごと破滅させかねない行為であり、たとえ神であっても許されざる重罪に等しい。

それゆえの掟であり、万物の理として古より続いてきた絶対のルールなのである。

「ならば、その掟を逆手に取ればいい...」

「地上を我が城となし、そこで復讐を果たす場とすればよいのだ。」

そして何より、神は人間の信仰心によってその力を左右される。

これこそが、ルシファーの計画における重要な鍵である。

神にとって愛すべき存在、「地球」

彼にとって、この惑星そのものが、復讐のために最適な環境だったのだ。