小手川進警部の事件簿
UMA未確認党
不良学生殺人事件編
第1話 不良学生殺人事件①
県立白洋高校に通う学生である、新沢洋輝は先ほどまでテストの結果で教員にきつくそれはきつく絞られていた。
「全く、藤堂の野郎赤点だからって絞めやがって。お前の数学が難しすぎるんだよ」
全く高校生らしい根拠のない不満を並べる。
彼は挙句の果てに怒りに任せて、校舎の外壁を蹴りつける。すると、壁が崩れ落ちた。
「なんちゅう、ボロイ校舎だよ」
自分で蹴り壊しておきながら、洋輝がそんな無茶なことを思っていると、彼は壁の中にある衝撃のものに気付いた。
「お、おいこれって。まずくねえか?」
先ほどの威勢のいい様子はどこに行ってしまったのか、新沢の顔が一瞬で青ざめていく。すると、その後ろにとある人物が立つ。
「あ、ちょっとすみません。あのこれヤバくないですか?すぐ言ったほうが……」
新沢は指でその壁を指しながら後ろの人物に怯えた様子で言う。しかし、その言葉の返事としては、新沢がその言葉を言い終わらないまま腹に感じたことのない痛みを感じることだった。
「ちょ、アンタ何で……」
新崎の顔が前より青く、いや痛みでひきつって白くなっている。新沢は何故己が刺されることになったかもわからず、そのまま絶命してしまう結果となった。
翌朝、小手川進警部は県立白洋高校の校門をくぐった。死体はおよそ化学準備室の中にあるらしい。後者の中には関係者以外は入れないようになっているはずだが、すでに辺りには野次馬がわんさかと出来ていた。所轄の刑事は小手川が来たことを知ると、その群衆をかき分けてもらう。
遺体は化学準備室の中の床に横たわって放置されていた。背は普通よりも高いだろうか。腹にはナイフが突き刺さっている。こんなに若いのに命を奪われるとは。
「ああ、小手川さんいらっしゃいましたか。被害者は新沢洋輝、高校2年生です」
そう、遺体の近くに座っていた本多弘平巡査部長が手帳を見ながら報告する。
「そうか、まだ若いのに命を奪われることになるとは、本当にかわいそうに。死因は刺殺でよさそうだな」
「まあ、被害者は今刺さっているナイフで刺されたらしいですね。鑑識に回しておきます」
そう本多が報告した後、二人は遺体に向き直って手を合わせる。
「他の連中、榊原は目撃者探し、斯波さんはご家族に連絡を取っているようです」
自分で動けるとは感心な仲間たちだ。そう小手川が考えていると、その一人である、榊原美咲巡査部長がやって来た。
「小手川さん、第一発見者の男性が来ています」
そう言って、榊原が紹介した男は白髪交じりの老人だった。手には室内箒を持っている。
「用務員の旗谷賢介という者です」
どうやら、老齢の再就職で雇われているらしい。旗谷は小手川に深々と頭を下げる。
「では、死体発見の時の経緯を教えてください」
「あれは私がいつも通り、朝の戸締りをしていた時でございました。化学室の鍵が開いていて、中から変なにおいがします。気になって入ってみたら、私は彼の遺体を見つけたのでございます」
旗谷は化学室の奥を見ながら伝える。それから視線を戻すと、
「その時に何か変わったことは」
「別にございません。状況も死体発見時のままそっくりそのままでございます」
まあ、こんな空き教室に死体を放置されていると思う人がいるわけない。しかも、事件そのままにしておいてくれているところもありがたい。余分な手間が省ける。
「清掃には朝にしか行かれないのですか?」
「いいえ。毎日生徒の皆さんが帰った後にも部屋の戸締りをいたします。しかし、化学室は多くの薬品があるからと、勝手に入らないでくれと言われました。その部屋は化学教師本人が掃除しているのです」
旗谷は箒を杖代わりにしながら小手川に状況を事細かに説明する。
「あ、でも何かおかしいとは思いました。あるところが不自然なのです」
「で、具体的にはどこなのですかね」
本多か食い入って聞く。
「そんなのが分かったら、すぐ言っています。思い出せないんですなんせこの年ですから」
旗谷は少し怒りをにじませながら本多に言った。自分で年齢の話をしておきながら少しは傷ついたらしい。まあ、本多はまりそう言ったデリカシーという言葉から反対側にいる人間なのだから当然の反応かもしれないが。
「そうですか。何かわかったら教えてください」
小手川はそういって旗谷を帰した。
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