第4話 噂の人物

 その日、【かしら】は、手下達と共に盗んだものを拠点とする場所に持ち帰るため、馬を走らせていた時のことだ。


「【白銀の魔法使い】?」


「へい、ここ数年の間で噂になっていやして………。なんでもそいつは、どっからともなく突然現れ、とてつもない魔力で高度な魔法を使うんだそうです」


 それがどうした?と言う顔をしながら【頭】は、手下を見ながら聞く。


「そいつは、俺たちのような者達を次々と討伐していて…………この前聞いた噂じゃ、北に巣くっていた盗賊が【白銀の魔法使い】によって壊滅したと…………」


「何? あの最強と言われている盗賊団が?」


【頭】は一瞬、ピクッと眉を動かし目を見開いた——————が、


「デマじゃないのか? そんなもん、気にするなよ。———そもそも、あの盗賊団が最強と言われているのは強力な魔法を付与した武器———【魔剣】を数多く所有しているのと、それを扱うことが出来る者が何十人もいるって話だぞ。たった一人で立ち向かえるはずねぇだろ」


 と、手下にそう一蹴した。


「ですよねぇ~」


「………だが、特徴だけ———どんなヤツか聞いておこうか」


 噂の人物に少し興味が湧いたのか、【頭】は手下にそう口に出した。


「———へ?そ、 そうですねぇ…………確か、噂じゃあ、白銀の髪に真っ白な服を着ていて———魔法使いなのに異国の剣———刀と言う武器を使い、盗賊達を圧倒するようです」



 ◇◇◇

 そして、現在いま———【頭】は、目の前にいる彼女を見たのだった。


 白銀の髪に真っ白な服。そして、刀と言う武器を持ちながら魔法を使う———手下が話した噂の人物と合致していた。



 

 そして———突然、現れた。




「ま、まさか、あの噂は、ほ、本当に…………!」


【頭】は、さっきまで頭に血が上っていたのが——————今じゃ、サーッと顔が青ざめていた。

 いや、青ざめているのを通り越して———白くなっていた。


 だが、そんな状況になっているのを気にもせず———【白銀の魔法使い】は、【頭】の方へと一歩ずつ、ゆっくり近づく。


「ヒッ! お、おめぇら! こいつを———!」


 そう叫びながら、手下たちを呼んだが——————



 誰も、返事をしない。



【頭】は、バッと振り返って辺りを見渡すと—————そこには、手下達がバタバタと倒れている姿が目に入った。


「ウ、ウソだろ?」


 声を震わせながら、自分が置かれている今の状況をハッキリと把握したのだ。


 (に、逃げなくては!)


 本能がそう叫んでいた。【頭】はグッと体に力を入れようとしたが——————あしが、言うことを聞かない。


「な、なんで、動かな———— !」


 情けない声を出しながら、自分の足元を見るとそこには村に生えている木の根であろうか——————いつの間にか、【頭】の下半身をぎっちりと縛り上げていた。


「あなたで最後よ」


 その言葉を聞くと、【頭】はガチガチと歯を鳴らしながら、その声の主の方へと顔を向けようとした。


 だが、完全に振り向くことは叶わなかった。


【頭】の首元に何か強い衝撃を受け——————フッと意識が途絶とだえたのだった。

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