第5話 保護者の村と、知恵を欺く者たち
リーサが目を覚ましたのは、穏やかな雰囲気の診療所の中だった。そこは、深い森に隠された、かつてエリウス(大賢者イリアス)の知識と術式を守るために設立された『知識の保護者(プロテクター)の村』だった。
【リーサ】 「ここは...まるで、外界の混乱から隔絶された場所のよう。」
【エリウス(通信にて)】 「ここは私の最後の知識の防衛線の一つです。彼らは、失われた知識を『再構築』し、外界の混乱を防ぐ術を代々継いできました。彼らから『教団の魔力結界を看破する知識』を学ぶのです。」
リーサの前に現れたのは、村の長老であり、元はエリウスの助手を務めていた老賢者・グレン(70代)。
【グレン】 「ようこそ、若い司書殿。我々は賢者イリアス様...いや、エリウス様の命に従い、知識の復元を手伝おう。まずは、教団の急進派が使う『神聖結界』の原理を理解することからだ。」
グレンはリーサに対し、教団の結界の核心にあるのは、信仰心を利用して魔力を極端に単純化する『単純化の魔力回路』であり、これによって複雑な術式が通用しなくなることを教える。
【グレン】 「奴らの結界を看破するには、複雑な知識や力ではなく、『知識を単純化する知恵』が必要です。あらゆる術式を、最も原始的な『根源の力』まで分解し、その『知識の土台』から攻撃するのだ。」
リーサは、グレンから渡された古い文献と、エリウスが以前渡した『知識の欠片』を照らし合わせることで、その『単純化の知恵』を習得していく。
一方、王立学者団の騎士団長は、リーサが転移した痕跡を、古代都市の遺跡で発見していた。
【騎士団長】 「転移術式は、わずかではあるが魔力の残渣を残す...!やはり、あの司書の背後には、古代の強力な術式が存在している!」
彼らは、遺跡周辺の微細な魔力残渣を解析し、転移先が「外界から隔絶された場所」であることを割り出す。騎士団長は、物理的な力ではなく、情報戦でリーサを追い詰めることを決意した。
【騎士団長】 「教団とは違う。我々は力で知識を奪うのではない。知識と知恵で奴らの隠れ家を見つけ出す!過去の文献を全て洗い出せ。大賢者イリアスが、最も隠したがった場所こそが、その居場所だ!」
王立学者団は、アルカナスの創設者である大賢者イリアス(エリウス)の過去の記録や文献を徹底的に調べ上げ始める。
リーサはグレンの指導のもと、村の結界訓練場で『教団の神聖結界を看破する訓練』を行う。
【グレン】 「司書殿、敵の結界を破るのではない。敵が信じる『知識の単純さ』を逆手に取るのだ。彼らの魔力回路に、ほんのわずかな『複雑さ』を注入し、結界を内部から崩壊させる!」
リーサは幾度となく失敗を繰り返すが、ついに『単純化された知識への対抗術式』を完成させる。彼女の周りの空気が一瞬だけ歪み、訓練用の結界が静かに霧散した。
【リーサ】 「やりました...。力ではなく、知識の視点を変えるだけで、結界が破れた。」
【グレン】:「素晴らしい。これで、教団の追撃に対する有効な対抗手段を手に入れた。司書殿、あなたはもはや、単なる司書ではない。知識の戦士だ。」
グレンから対抗術式を習得したリーサに対し、エリウスから次の指令が下る。
【エリウス(通信にて)】 「リーサ。おめでとう。しかし、王立学者団の動きが速すぎます。彼らは私の過去の文献を調べ上げ、この『知識の保護者の村』に近づいている。」
【エリウス(通信にて)】「次の目的地は、王都に近い『学術都市の図書館』です。そこには、私が若い頃に、後の図書館(アルカナス)の基礎となる『古代文献の目録』を隠しました。その目録から、次の『聖典の欠落』の場所を特定します。」
エリウスは、最も危険な敵の近く、王立学者団の本拠地に最も近い場所を次の目的地に指定した。リーサは、学んだばかりの『単純化の知恵』と『防御結界術』を携え、追跡者たちの中枢へ向かうことになる。
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