第1話 亡り代わり 前編
「やばいやばいやばい遅刻だーーーーーーー!!!!」
私、普通の女子高生『
なんと二学期早々遅刻の危機!その原因はただ一つ.......
昨日のうちに準備してなかったからだよ!何やってんの私!!
まともに制服を着ることもできずにボタンを掛け違えたまま鞄を取り部屋を飛び出す。
ポケットをまさぐりながら靴を履きかけたその時、私は気づいてしまった。
「あっあれぇ?て、定期券どこ?......もしかして、部屋?」
私はその場に座り込み、脳内にちらつく『初日遅刻』の文字絶望しかけたその時だった。
テト...テト...
この可愛らしい音、間違いない。
私は音のする方を振り向くと、そこにいたのは動くテディベア、私の友達『しおん』だった。
しおんの手元には私が探していた定期券が握られていた。
「しおん!!!届けてくれたの!ありがとう!!!」
思いっきりしおんを抱きしめると、しおんは制服の胸ポケットに定期券をいれてくれた。
「うん、そうだね!遅刻しちゃうもんね!いってきます!」
私はしおんに手を振って、駅に走る。
そういえば、普通の私にも一つだけ普通じゃないことがあった。
小さい頃、偶然出会ったテディベア、しおんの存在だ。
しおんはどういうわけか自由に動く事ができる。
最初は私もお母さんもお父さんも驚いたけど、今となってはすっかり慣れ、受け入れている。
「それにしても、定期券持ってはしってきたしおん、可愛かったな~」
そうこうしているうちに、私は駅に着いた。
さ、3分前、危なかった...
駅には、私の友達の
不良っぽい子が莉沙ちゃん、言葉の最後が愉快なことになっているのが瑠美ちゃん。二人とも仲の良い友達だ。
「あ!ゆいちゃん!遅かったですけど大丈夫です?(・ω・`)」
「ごめん!定期券探してて~」
「ったく、しっかりしろよな、あーし達まで遅刻するかと思ったわ」
「まあまあ、まだ間に合うからいいじゃないですか~(´ω`*)」
このとき、私達は合流できた安心感からか肝心なことが抜けていた。
こんなにのんびりと駄弁っている余裕なんてなかったのだ。
私達が駅のホームに着いたタイミングで、電車は行ってしまった。
「えっと...遅刻確定?(´◦ω◦`)」
「結衣、1ptな、あと1ptで10pt達成だから、10行ったらあーしマジで1回シメ上げっからな」
「うぅ...ごめんなさい...」
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「はぁ~つっっかれたぁ~先公共話長すぎんだよ、これで終わりっつたんなら終われってんだよ」
「まぁまぁ、今日は私達遅刻してきたわけだしー」
「誰んせいだと思ってんだ」
「でもさすが初日ですね、始業式だけで終わりですよ٩( 'ω' )و」
「じゃあみんなで帰りどこか寄ろうよ」
「いいですねーカラオケとか行っちゃいます?(ㆁωㆁ*)」
瑠美ちゃんは私の提案に乗り気な様子だったが、莉沙ちゃんは少し腕時計をチラ見した後おもむろに席から立つと、一言「わりぃ、用事できちまった。」と言って、足早に教室を出て行った。
「大丈夫ですかね(´・ω・`)」
「また喧嘩かな?」
「どうでしょう...とりあえずカラオケは延期ですね(。•́ – •̀。)」
「あ、じゃあウチくる?」
「久しぶりですねぇ、いきます!o(。>ᴗ<。)o︎」
「よし、じゃあさっさといこ!」
さっき、何も考えずに瑠美ちゃん家に呼んじゃったけど...しおんどうしよう...
このとき、私が瑠美ちゃんを勢いで家に誘っていなければ、あんな惨劇は起こらなかったのだろうか...こんないつも通りの日常を送れていたのだろうか...
まさかあんな事になるなんて、この時の私は思ってもみなかった。
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