第2話 残存する力

「この世界に転移してきた理由がイヤホンが爆発……とお話しましたね」


 嫌な予感が……


「もしかして、今、あちらの世界で爆発してます?」


 もし、そうだとして火事なってたら……


「はい、今直接あちらに転移させると全身が炎に包まれます。ですが、僅かな時間であれば逆行が出来ますので爆発する前の時間に転移させます。何らかの方法で対処してください」


 対処……

 部屋の対面にトイレがあるから走ってぶち込めば何とかなるか?


「……何となくですが対処の方法は考えました」


「分かりました。もうこちらの世界には来ないでしょう。もう一度警告しますが、能力はできる限り使用せず悪用はしないようお願いしますね。では転移を始めます。よろしいでしょうか?」


「はい、お願いします」


 覚悟を決め、小さくうなずいた。

 神の手が頭に触れた瞬間、視界が暗くなり同時に布団の柔らかな感触が背中に伝う。

 視界が戻ると同時に反射的にイヤホンを引き抜き一直線にトイレへ駆け込み、便座を上げ目にも止まらぬ速さでイヤホンをぶち込む。

 次の瞬間、水の中で小さな爆発が起き波紋が広がる。

 

「……マジで爆発した……」


 幸いにもトイレへの被害はなかった。

 このイヤホン鑑定してみるか……


 ◇◇――――――

 ワイヤレスイヤホン(壊)

 ・電気信号を音に変換する小型の音響機器

 ・再度の爆発の危険性無

 ・利用不可

 ――――――◇◇


「……っ! 本当に出た!?」


 夢ではなかった……

【鑑定】――都合よく欲しい情報が載っているな。


「神や異世界、鑑定……全部夢じゃなかったんだな」


 さっきまでの世界が嘘みたいに、静かな夜。


「……もう寝よ」


 そうはいったものの、頭の中から【鑑定】の言葉が離れず布団の中でも目は冴えたままだった。

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