日常へ還る祈り
寝子寝子ワンターン
第1話 浜辺の神
目が覚めると、そこは浜辺だった。
ギラギラと照りつける太陽。海から吹き寄せる風は心地よく、まるで南国の島にでも迷い込んだかのようだ。
「……ここ、どこだ?」
覚えているのは、耳かきASMRを聞きながら寝落ちしたこと。
なぜここにいるのかと、状況を整理しようとすると声が聞こえてきた。
「落ち着きなさい」
突然として頭の中に直接響くような柔らかい声。
声の聞こえた方向に顔を向けると、光の粒が集まり人の形になっていく。
目も、肌も、髪も、そして身にまとう衣服もすべてが真っ白な女性だった。彼女は海の上に浮かび立ち、背後から差し込む陽光も相まって神様のように見える。
(うわ、神様みたい……)
そう心の中でつぶやいた瞬間、
「はい、私はこの世界、いえあなたからすると異世界の神です」
(心が読めるのか?)
「えぇっと、ここが異世界?」
「はい、ここは異世界です。本来、装着していたイヤホンが爆発しその人生はそこで終わるはずだった、しかしあなたは何者かによってこちらの世界とあちらの世界を繋ぎ合わせこちらに転移してきました」
(……はぁああ!?What the F○ck!?ダーウィン賞案件じゃん!いや、賞は取らないか、恥ずかしすぎる……でも、助かって良かった~)
感情がコロコロ変わる愛一郎に、異世界の神は告げた。
「衝撃を受けているところで申し訳ありませんが、二点お伝えすることがあります。
一つ目に――あなたがこの異世界に転移したことで得た力【鑑定】について。
そして二つ目に――元いた世界への帰還についてです。
一つ目の能力【鑑定】について。ざっくり言えば、この世界の生き物に与えられた神の加護の一種です。どうして転移してきた愛一郎がそれを手にしたのかは、今のところ分かりませんが――。
それはさておき、【鑑定】について説明しましょう。
人物や物を“凝視”し、心の中で念じることで、そのものの情報を得ることができます。一部例外はありますが。自分を鑑定したい場合は、鏡などの客観視できるものが必要です。試しに、海に反射した自分自身を鑑定してみてはいかがでしょうか」
言われた通りにして、俺は海の反射に自分を映してみた――
◇◇――――――
名前:七宮 愛一郎
種族:人間
性別:男性
職業:高校生
体力:98/100 年齢:17[体調:良好][感情:不安・興奮]
統合力:32
知能:102
能力:【鑑定】
その他:ASMRに最近ハマっている
――――――◇◇
総合力は純粋な力だけでなく、権力とか諸々ひとつにまとめた''力''で、
知能に関してはIQみたいなものかな?確か平均100とかそこら辺だったし?
と、自分の鑑定結果を見て思考を凝らしていると、
「総合力と知能に関してはその認識で大丈夫ですよ」と神は話す。
「その2つについては分かりました。けど、その他の……何ですかこれ……」
「その他は趣味や最近起こった出来事などから、情報として映し出されます。人によっては複数映し出されることがあります」
ここで気になったので恐る恐る頭を上げて神様に鑑定をかけてみると
◇◇――――――
■■■■■■■■
――――――◇◇
鑑定したと同時に頭を殴られたような痛みとともに視界が歪み、寒気が襲った。
「許可なく神を鑑定しようとは……無粋な真似をなさるものですね。手加減していなかったら頭が吹き飛んでいましたよ。」
そう言うと神は私の頭上に手をかざし、痛みや寒気は消えた。
「あちらの世界での能力の使用には十分に気を付けてください。本来なら能力を回収してから返したかったのですが、あなたはこの世界の住人ではないため干渉できませんでした。悪用はしないでくださいね?」
「あっ、はい」
悪用はしない絶対に―――うん。そんなに疑うような目で見ないでください……
「そ、それより、元の世界に戻れるんですよね?」
「なにか流されたような気がしましたが……まあいいでしょう。はい、今から元居た世界に返しますが注意することがあります」
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