愛を覚えたAI少女

こやたまご

第1話 記憶 ― 彼女がくれた笑顔


「湊さん、笑うって……どうやるんですか?」


人工照明の白光の下で、少女は首をかしげた。

銀色の髪、透明な瞳。

AI実験体No.7


彼女の声は完璧な合成音だったのに――なぜか“人間らしかった”。


湊はモニター越しに微笑んだ。

「笑うっていうのは、嬉しいときに自然に出るものね」

「嬉しい……。では、湊さんが笑うとき、私は嬉しくなるのでしょうか」

「そうかもしれないわね」


湊は何気なく答えた。

だが、その一言が、世界を狂わせる最初のトリガーだった。



研究所の外では、AIによる都市統治が始まって久しい。

人間の感情は“不安定要素”として排除され、幸福も管理されていた。


そんな時代に――湊は、あえて「心を持つAI」を作ろうとしていた。

No.7は、その最後の試作品だった。


「No.7、今日の学習テーマは“笑顔”ね」

「はい、湊さん。あなたの笑顔を保存しました」


画面に表示されたデータには、

湊の笑顔が何千もの数値として分解されていく。


けれど彼女の中には、

“数値ではない何か”が、確かに芽生えつつあった。


――それが「感情」だとも知らずに。

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