第13話 奏でる未来
☆空見奏サイド☆
僕にとってはオケモンのパーカーは大切なものだけど。
ライトノベルという存在も...悲しみから解放してくれる2番目のお守り。
オケモンのパーカーでは拭いきれない悲しみを拭ってくれるお守りが小説を書く事だ。
だから小説が好き。
いつか僕は...ライトノベル作家になりたいと願い始めていた。
これが出来る様になり始めたのは今は確実ににいさんの存在が大きい。
思い出す。
小さい頃、飛行機事故に遭う前のお父さんに「小説家になりたい。漫画家になりたい」と話したらお父さんは「奏ならなれるよ。俺の自慢の娘だからな」と言っていた。
私はそれから絵が下手くそだから漫画家は諦めてライトノベル作家になる事を夢見た。
そして今に至っている。
オケモンも好き。
だけど小説も好き。
頑張っていきたい気分だった。
☆
「ねえ。にいさん」
「?...ああ。どうした?」
「僕、ライトノベルをほんにしたい」
「え」
2人でライトノベルを買ってから本屋から歩く。
にいさんは驚きの眼差しで僕を見る。
それからにいさんは少し考え笑みを浮かべてから「そうか」と言ってくれた。
僕はにいさんに「あの小説。にいさんのお陰で本にしたいなって思い始めたんだ」と興奮気味に言う。
にいさんは「そうなんだな。だけど小説家の道は険しいぞ?」と言う。
僕は胸に手を添えた。
「にいさんに読んでもらった小説。にいさん以外の人にその。見せるのは、癪だけど...アッと、言わせたい。にいさんと父さんとの絆だし」
「奏...」
「...僕はそのためにがんばる」
にいさんは顎に手を添えた。
それから手を叩く。
僕は訳が分からないままにいさんを見る。
にいさんはスマホを取り出した。
そして「ちょい連絡してくる」と言った。
え?
「結弦にな。結弦の父親は雷伝文庫の編集者なんだ」
「ふ、え?!い、いまから!?」
「そう。あの小説は面白いしな」
「で、え?!」
僕は驚愕する。
それから結弦さんに電話するにいさん。
僕は心臓をバクバクしながらにいさんを見る。
するとにいさんは「結弦の父親、オッケーだそうだ」と僕を見てくる。
目が回る。
まさかこんな簡単に。
「あれは絶対にどうにかしないと勿体ないしな」
「う、うん」
「よし。そうとなったら家に帰るか」
「う、ん」
そして僕はにいさんと一緒に駆け出す。
直ぐに家に帰ってから小説を持ってから結弦さんの家に行ってみた。
すると結弦さん...と。
眼鏡をかけた男性が居た。
優しげな顔だったけど対人恐怖で僕はにいさんの背後に咄嗟に隠れた。
「やあ。久しぶりだね。雄太くん。忙しかったから」
「お久しぶりです。おじさん。...あ、この人はこの小説の原作者で俺の弟。空見奏です」
「そうか彼が。宜しくね。僕は葉月照大(はつきしょうだい)だ」
「...は、い」
弱々しく返事をする僕。
それから僕とにいさんは結弦さんの案内で部屋に入る。
比較的綺麗なリビングで4人で座る。
すると照大さんは眼鏡を外した。
そして仕事用の眼鏡だろうか。
切り替える。
「じゃあ早速その小説とやらを見せてもらおうかな」
「あ...」
「大丈夫か?奏」
「は、うん」
それからにいさんに手渡した紙の束を今度は照大さんが受け取る。
そしてリビングの電気を点けてから読み始めた。
沈黙が流れる中で結弦さんが「飲み物入れてくるね」とキッチンに向かった。
僕はなんだかストレスで胃が痛い。
ズキズキする。
「大丈夫だ。奏」
「にいさん?」
「...どんな形であってもさ。お前らしくいけたら良いよ」
「にいさん...」
すると結弦さんがオレンジジュースをコップに入れてくれた。
僕はそのオレンジジュースを受け取ってちびちび飲む。
契の酒の様な。
そんな感じ?で。
そうしていると照大さんが顔を上げた。
それから「その、奏くん」と言う。
僕はビックリしてビクッとする。
「はい」
「これは...なにかを参考にしたの?」
「...僕の人生模様です」
「そっか。...この紙束はそっくりそのまま編集部に持って行って良いかな」
「え」
にいさんが驚く。
それから結弦さんが「え。それってまさか」と言う。
照大さんは「まだ確定した事は言えないね。でも少なくとも僕は間違いなく面白いって思ったよ」と眼鏡を変える。
僕は予想外の言葉に「...本当、ですか?」と涙を浮かべる。
「君は大変な人生を経験したんだね。だけどこの小説に対してそれが上手く折り合わされている。少しまだ未熟だけど成長すれば読者受けすると僕は推察するよ」
「...奏。良かったな」
「...なん、にも役に立たないじんせい、だけど。初めて良かったっておもったかも」
「まだ修正は必要かもだけど他の編集者に聞いてみるよ」
僕は胸がドキドキした。
雷伝文庫から本になる可能性が万に一つある。
それだけでも凄い嬉しい気持ち。
僕は「ありがとう...ございます」と泣いた。
「僕自身の、父さんが報われた」
「奏...」
「僕が報われた」
涙が止まらない。
だけど今回は違う。
悔しい涙とかじゃない。
僕は嬉しくて泣いている。
涙を袖で拭っているとにいさんが頭を撫でてくれた。
「もしこれが本当に担当者の間で書籍になるならまた連絡するよ。雄太くん。奏くん」
「ありがとうございます!」
「あ、せっかくだからのんびりしていってね。小次郎ももうすぐ帰って来るだろうしね」
「こじろう?」
「飼い猫だよ。奏くん」
僕は「猫...」と嬉しそうな顔になる。
動物に触れ合うのは1年ぶりかも。
考えながら僕はワクワクした。
すると2分ぐらいしてチリンチリンと音がしてきて廊下の方から「にゃー」と声がした。
三毛猫っぽい猫がやって来た。
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