第10話 助け合いの恋
「...」
「...」
「...」
俺達は無言の状態でファミレスに居た。
なにか喋ろうにも言葉が出ない。
奏も沈黙し結弦も静かにしている。
なにか話すべきかと思い「あ」と言いかけた時。
結弦が口を開いた。
「雄太。奏ちゃんの男装には理由があるんだよね?」
「あ、ああ。奏の姿には理由がある」
「そっか」
それから結弦は顔を上げる。
そして奏を見た。
奏は居心地が悪そうな感じでモジモジしながら結弦の顔をチラチラ見る。
結弦は「奏ちゃん。私の事、怖い?」と奏に聞く。
すると奏は首を振ってから結弦を見た。
「怖いとかじゃないんです」
「?...じゃあ...」
「僕は...結弦さんに嫉妬しています」
その言葉に俺達は衝撃を受ける。
俺は「嫉妬って?」と聞いてみる。
すると奏は「...大切なにいさんが取られるから」と呟いた。
奏の言葉に俺は「...!」となる。
結弦が「...成程ね」と言いながら奏を見る。
「奏ちゃん。ありがとう。表に感情を表現してくれて」
「...」
「私は確かに雄太と絡み過ぎているかもしれない」
「...」
奏は唇を噛む。
それから俺をチラチラ見る奏。
「なにかを言ってほしい」とそう言っている様に見える。
俺は結弦を見る。
すると結弦は手を叩いた。
「じゃあそうなると。先ずは...雄太。どっか行って」
「ああ。...は?」
「めちゃくちゃ邪魔♡」
邪魔ってなんだよ。
そう思いながら結弦に慌てる。
結弦は「女子同士の話にザーコは邪魔♡」と満面の笑顔になってから俺を追い払う。
マジかよ。
なんの話をするか知らんが最悪だ!
☆空見奏サイド☆
にいさんは渋々な感じで立ち上がりスマホを持って去って行ってしまう。
僕は心細くなり後を追おうとした時。
結弦さんが「さて」と言った。
それから僕を見る。
「奏ちゃん」
「は、はい」
「...雄太の事、好き?」
そう言った結弦さんに目を見開く。
それから「え」とその足を止めて困惑した。
そしてオドオドする。
好きってなんだ?
「奏ちゃんは雄太を好いているんだよね?」
「す、好いているって、いうのは」
「言葉通りの意味かな」
「僕は...」
「私は好きだよ。雄太の事」
その言葉に燃え上がる感情。
なんとも言えない感情。
ぐちゃぐちゃな感情になった。
好き。
一言で世界が変わった。
嫉妬以上に気が狂いそうになる。
僕は椅子に座り直した。
「それはにいさんを愛しているという意味ですか」
そんな真剣な言葉に結弦さんは「間違いなく。私は彼を心から愛している」と認めた。
ただその言葉に唇を噛んだ。
それから「ぼ、僕は」と言う。
そして顔を上げた。
「すき。にいさんが好き」
そう話してから僕は俯く。
すると結弦さんは驚いた顔から柔和になり「分かった」と笑みを浮かべた。
それから「私達、ライバルだね」と言ってくる。
僕はまた唇を噛みながら顔を上げる。
「でもライバルとは言ってもね。私さ。争いたくないないんだよね」
「え?」
「私、奏ちゃんとは争いたくない。でも雄太を分割する訳にはいかない。だからさ。こうしない?」
結弦さんはそう言いながら「私は譲り合う事にしたいんだ」と僕を見てくる。
僕は「!」となりながら「それはつまり」と聞く。
すると結弦さんは胸に手を添えた。
それから僕を見る。
「私、奏ちゃんを助けるよ。サポートする。その代わり私は私なりに攻めるから」
その言葉に僕は「...」となってから結弦さんを見る。
結弦さんは「私は不戦勝なのは嫌い。だからどちらかが選ばれるまで戦うよ」と笑顔になる。
僕は「結弦...さん。ありがたいけどそれは...僕が有利になるんじゃ、ないかな」と言う。
すると結弦さんは「確かに私が負ける可能性はある」と笑みを浮かべた。
「でもね。ハンデだらけの君に負けるのはもっと嫌だから」
「...結弦さん...」
「私は彼を落とす。だけど君をサポートはする。約束するから一緒に頑張ろ」
その様に笑顔になりながら結弦さんは手を差し出す。
僕はその手をおずおず握る。
すると結弦さんは僕を見つめた。
僕は恥ずかしくなる。
「成程ね。君、可愛いね。本当にアイドルみたい」
「え、えっと」
「えへ。君には負けたくないな。絶対に」
「...僕も。僕も負けないです」
それから結弦さんを見る私。
すると結弦さんはニコッとして電話をかけた。
「え?」と思いながら結弦さんを見る。
結弦さんは「雄太。どこに居る?」と聞いた。
そして立ち上がってから去って行く。
1分後ににいさんと戻って来た。
☆空見雄太サイド☆
仕方が無く近所のコンビニに行ってから戻っていた時に電話がかかってきた。
それは結弦からだった。
俺は「はい?」と返事をすると「ザコさん今直ぐ戻って来て♡」とお達し。
何だコイツ。
さっき俺を追い払った癖に。
戻ると結弦と奏が居た。
「で?なんの話だったんだよ」
「教えない。女子同士にそれは禁句だよ」
「いや。知るぐらいの権利は...」
「いーから。それはそうと雄太。映画は奏ちゃん観れそう?」
「映画だ?なんで映画なんだよ」
「に、にいさん」
「奏?」
「わ、たし、と。映画、観て」
「は?」となりながら奏を見る。
映画はオケモンだった。
オケモンの映画...だとするとチケットが要る。
行くにせよ。
すると「あらまぁ」とかふざけた口調になる結弦。
なんだ?
「こんな所にぃ?映画のペア鑑賞券がぁ」
「なんで持ってんだよ...」
「自由なぁ。鑑賞券♡」
「いやだからなんで持ってんだ...」
すると「なんでも良いでしょうが」と怒る結弦。
なんで俺は怒られている?
意味が分からなすぎて。
そうしていると結弦は「今度行って来たら?私、用事があるし♡」と言う。
俺は「いや。お前な」と言う。
すると横に居た奏がクイッと俺の袖を引っ張った。
「行こ」
そう奏は小さく言う。
頬を朱に染めて行きたそうな感じだ。
なにか裏が有りそうなんだが...まあ仕方が無い。
ここは付き合う事にするか。
とはいっても大丈夫かなぁ...奏のやつ。
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