第9話 雄太、奏、結弦
☆葉月結弦サイド☆
私の名前は葉月結弦。
結弦という名前は弓から取られた。
よくあるお星様の星座の神々の使う弓の意味がある。
意味としては(弦の様にしなやかに生きてほしい)という意味がある。
私は結弦という名前が大好きだ。
だけどこの世界には更に好きなモノがある。
それは。
「おっは」
「よお。結弦」
「どしたの?朝から冴えない顔だね」
「まあなぁ。最近...ちょっと弟の扱いに苦戦している」
そう言葉を放ちながら溜息を吐いているのは空見雄太。
私の幼馴染の男性だ。
そんな彼に「弟さん?大変だねぇ。弟だけに♡」とニヤニヤしながら言う。
すると雄太は「うるせぇクソガキ」と言ってくる。
私はその言葉に「おねーちゃんも心配しているからなんかあったら相談ね」と言う。
雄太は「うるせぇ...」と顔をへの字にする。
でも私は実は既に弟に陥落している。
何故なら私は雄太が好きだから。
「にしても今日は面倒だな。数学のテストもあるしな」
「だね。雄太」
私はこの何気ない日常が大好きだ。
いつも雄太とふざけまくって歩く道。
いつか無くなるとしても。
私は誇りに思える。
雄太と一緒のこの道を、だ。
「なあ。結弦」
「うん?なにかね?弟くんや」
「うるせぇクソガキ。...まあ冗談は良いんだがさ。...最近、弟がよく俺に訳が分からん行動をする」
「え?そうなの?」
「お前に聞くのは癪だが。だがお前しか居ないから」
「そっか」
その言葉に相談内容を聴いた。
すると雄太が悩んでいるのはスキンシップの激しさ、感情の読めなさがあるという。
私は悩みながら「でも男同士だよね?」と聞く。
雄太は「まあな」と言いながら歩く。
うーん。男の子の感情...か。
「弟くんは距離感を詰めてきているの?それはそれでも良い様な気がする
「ああ。...まあそうなんだけどなぁ」
「?...なにが不満なの?」
「いや。まあいいや。すまん。この話はここで終わりで」
雄太はそう言いながら歩く。
私は溜息を吐きながら「分かった」と返事をした。
それから私達は歩く。
その途中で「あのさ。雄太」と立ち止まる。
そして少しだけ胸をドキドキさせながら見上げる。
「放課後、時間有る?」
「え?どうして?」
「あ、うん。駅前広場を散策しない?」
「え。あ、ああ。まあ良いけど」
「やった。ありがと!」
私はガッツポーズをする。
それから私は心臓をドキドキさせる。
雄太とデートだ。
そう考えながら、だ。
そして私は駆け出して行く。
「おいおい。ゆっくり行こうぜ」
「だって嬉しいから」
「何がだよ?」
「放課後の事」
それから私はニコニコしながら歩き出す。
そして雄太と一緒に学校に向かう。
放課後が楽しみで仕方が無い。
雄太とデート。
楽しみ。
☆空見奏サイド☆
(すまん。放課後に結弦と参考書買いに行く)
そのメッセージを部屋でスマホで見た時。
心ががっかりした。
がっかりというか...モヤモヤする。
僕のにいさんだから仕方が無いんだけどモヤモヤする。
「...嫌だな」
そう呟きながら僕は胸に手を添える。
不安だらけだった。
僕達の、にいさんじゃない。
僕だけの、にいさんであってほしいから。
「...よし」
私はパソコンをバタンと閉じた。
それから私はパーカーを着る。
ポーチを持つ。
そして私は目標地点を定めた。
それは駅前広場だ。
「...」
こんな真似をしたら僕はにいさんに怒られるかもしれない。
だけど僕は大切な人...を取られるのだけは。
モヤッとするし...良いよね。
そう考えながら僕は家から出た。
それから震えながら玄関に鍵をかけた。
☆空見雄太サイド☆
なんだってこんな事に?
そう考えながら俺は横に居る元気な結弦を見る。
結弦は俺と手を繋いでいる。
最近の女子はこういうのがブームなのか?
「雄太。お揃いのクリアファイル買おうよ」
「お、おう。なんでだよ」
「なんでも。良いでしょ?」
「まあ良いけどさ」
それから俺達はクリアファイルを買った。
青色の水玉が目立つクリアファイルだ。
俺はそのクリアファイルを見ながら苦笑する。
そういやアイツは。
奏は大丈夫だろうか?
「すまん。ちょっと父さんにメッセージ送るから」
「あ、うん。文房具見てるね」
そして俺は嘘を言いつつ表に出る。
それからスマホでメッセージを打った。
(奏。大丈夫か)という感じで、だ。
既読がつかない。
不安なんだが。
そう思っているとスマホが震えた。
(にいさん。助けて)
そう書かれていた。
青ざめる俺。
俺は直ぐに電話をかけた。
すると数秒後にコールが止み。
通話になった。
「なんだ!どうした!」
「え、えっと、外に、居るの」
「は!?」
「え、駅前に来たけど道が分からない」
その様に言われた。
なんで外に居るんだ。
俺は背後を見てから駆け出す。
それから人混みを探す。
すると人混みの中のベンチに奏は居た。
疲れている。
俺の顔を見てから涙を浮かべて泣き始めた。
そんな顔に俺は「なにをしてんだ。心配するじゃないか」と少しだけ声を荒げた。
「ごめん、にいさん」
「このバカ。本当に心配する真似をしやがって」
俺はゆっくり膝を曲げて奏を抱きしめる。
その勢いでフードが外れる。
それから「奏。心配させるな」と怒る。
奏は俺を抱き締めて「ごめん。道が分かるって思ったけど」と泣いた。
「まったく。外に出るだけでも息切れするのに」
「ごめんなさい。にいさん...」
そんな会話をしている時だった。
「雄太...?」と声がした。
俺はビクッとして背後を見る。
そこに驚いた顔をした結弦が居た。
俺と奏を見て相当にビックリしている。
その姿にハッとして奏を見る。
奏のフードが外れフードから長い髪の毛とクリッとした目。
それから疲れていたのもあり。
奏のその猛烈に可愛い女の子らしい顔が出ていた。
しまった...!
俺が抱きしめた勢いで!
「か、奏くん?」
「これは...」
「か、奏(ちゃん)だったの?」
そう言いながら結弦は愕然としていた。
俺は何も言えなくなる。
奏でも慌てたが。
時既に遅し、だった。
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