第3話 天国と天国
それからというもの。
奏はまたそのまま引きこもってしまった。
俺はそんな掴めない奏の行動に苦笑しながらも半ば嬉しい気持ちで翌日を迎えた。
なんで嬉しいかといえば簡単だ。
奏を見たからだ。
元気そうな顔だったしな。
「じゃあ奏。行ってくる」
そうドアに話しながら鞄を持つ。
それから離れた時。
願ってなかったドアがまた小さく開いた。
そして「にいさん。行ってらっしゃい」と挨拶された。
俺は少しだけ動揺しながら「お、おう」と返事する。
ドアはそれだけ言ってから直ぐに閉まった。
だがまあなんというか心がポカポカした。
☆
「おはよ」
「よお。おはようさん。結弦」
そんな会話をしながら俺は結弦を見る。
結弦は俺にニヤニヤしながら立っていた。
なんだってんだ。
「弟さん元気?」
そう聞いてくる結弦にドキッとしながらも。
「あ、ああ。まあな」と返事をする。
まさか、義妹でした、と言えないしそれに。
アイツは「黙っていてほしい」と言っていた。
「男同士、仲良く風呂にも入った」
「やるねぇ。私の弟さん♡」
「俺はお前の弟じゃない」
「でも可愛い子分だよ」
「誰が子分だ」
俺はそんな感じで話しながら歩く。
すると「そういやさ」と結弦が言う。
俺は「ああ。どうした?」と聞く。
結弦は「新刊ラブコメが出たんだ。今度、雄太の家で読まない?」と笑顔になって俺を見る。
その言葉に「あー...まあ良いぞ」と柔和に反応する。
「やった」
「お前本当にラブコメ好きだよな」
「うん。今嵌ってるのはなんかその。義弟がなんか女子だったっていう設定かな」
「...お、おう」
まさかの事にドキッとしてドン引きしながら結弦を見る。
それから歩いていると公園が見えてきた。
俺はその公園を見ていると結弦が「懐かしい公園だね」と言ってから俺に笑みを浮かべた。
その言葉に俺は「まあ確かにな」と言う。
「雄太に出逢ってから沢山の時間が流れた気がする」
「...そうだな。幼稚園からずっとだもんな」
「そうだね。...この公園でも沢山遊んだね」
「ああ。懐かしいな」
そんな感じで会話していると結弦が「ねぇ。キスしよっか」と言い出した。
キスか。
は?
「なにを!?」
「キスだよ。キス。私とキスしよっかって話」
「待て!?どういう事だ!恋人じゃないのに出来るわけないだろ!?」
「まあそう...かな」
「ジョークにしても良い加減に...」
「うぬ。果たしてジョークでしょうか?」
結弦はニヤッとする。
へ?
俺は絶句しながら結弦を見る。
結弦はクスクス笑いながら駆け出して行く。
ジョークじゃない?
まさかな。
「...ったく。ジョークにしては」
リアルすぎるジョークだったな。
そう感じながらはたと足を止める。
しかしジョークにしては...アイツ顔が一瞬赤かった様な?
まさかな。
☆
学校に来てから俺は4限目を迎える。
昼休みになってから俺はいつもの通り勝と飯を食う為に勝の下に向かう。
その際にスマホが鳴った。
俺はスマホを見る。
え?
「どしたお前。鳩が豆鉄砲食らった様な」
「あ、ああ。弟からメッセージが入ってな」
「ああ。奏君か」
「そうだな」
「珍しいな。奏君がメッセージって」
俺は「まあな」と言いながら弁当箱を置く。
それからメッセージをウキウキしながら読む。
まさか半年前に交換していたメッセージが役に立つとはな。
そこには(パッキー以外のお菓子で竹藪の里)とシンプルに記載があった。
俺はメッセージを飛ばす。
(了解した)
するとメッセージは直ぐに既読になり。
そのまままたメッセージが来た。
それは(何時に帰って来ますか)というメッセージ。
俺は(ああ。まあ16時30分ぐらいだな)と送る。
(そう)
(どうしたんだ?寂しいのか?)
(そんな訳ない)
だろうな。
俺は苦笑しながら(また後でな)とスマホを仕舞う。
そして顔を上げる。
ウザイ顔の猿が頬を吊り上げて居た。
なんだコイツ。
「まさに家族だな」
「キモいんだよオメェ」
それから俺は盛大に溜息を吐いた。
そして放課後を迎えた。
事件が発生した。
☆
俺は義弟?を押し倒した。
廊下で見つめ合う俺達。
赤くなる奏。
俺はその瞳を見ながら動けなくなる。
吸い込まれる様な眼差しだ。
さて何故こうなったか。
事件は3分前に遡る。
☆
「ただいま」
誰の返事も無い玄関に言いながら早速スーパーで買ってきたお菓子を持ってから2階に上がる。
それからノックした。
するとドアが勢い良く開いた。
「待ってました」と言わんばかりだが。
俺は押し倒された。
「に、にいさん」
恐怖に怯える奏。
なんだコイツいきなり!?
そう考えながら奏を見る。
すると奏は部屋を指差した。
馬鹿でかい蜘蛛がドアにくっついて居た。
「なんだ。蜘蛛かよ」
「ひ、ひい」
奏は気が付いてないのか擦り寄って来ており俺に小さな胸を押し当てている。
こ、これはこれでいかん。
そう考えながら俺は廊下の窓からアシダカグモを逃がす。
それから俺は奏を見る。
「大丈夫か」
「に、にいさんはよく手で持ってい、いけるね」
「まあこんなのに怯えていたら男じゃない」
そんな事を言いながら俺は窓を閉めてから歩いた時。
脚が靴下で滑った。
それから奏を押し倒した。
「きゃっ」
「奏...す、すまん」
それから立ち上がろうとした時。
目の前の手を挙げている所謂、いきなり押し倒されました感満載の少し長髪の少女と目が合った。
長髪、キャラものシャツ。
いつものパーカー。
つぶらな瞳に柔らかそうな唇。
「に、にいさん?」
「すまんっ!」
俺は真っ赤になって退いた。
なんだ今のは。
鎖骨が見えていたせいか。
なんだ今の...コイツに対する感じ。
いかんぞ...なにを性的な目で見ている。
しっかりしろ雄太。
「すまん。押し倒してしまって」
「い、いや。いい、よ。別に。僕が悪い」
少女の顔。
つまり背後を見れない。
しっかりしろ。
そうだあのクソガキの顔を思い浮かべるんだ。
そう、それで良いぞ俺。
よし落ち着いてきたな?俺。
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