第九章
第九章 誓いの日
ノットは クゥルの 寝顔を見る度に 胸が締め付けられ
そして自分の不甲斐なさに 涙した
「クゥル……」
ポツリ呟く
「クゥル……」
繰り返す
クゥルが 倒れて2日 ノットは部屋を出ず ずっと傍にいた
片時も 離れたくない!
「クゥル……」
自分が情けない子供にかえったようで ノットは 指を握りこむ
「クゥル……」
「ん……」
その時 クゥルが目を開けた
「……!……」
ノットが 駆け寄る
「目がさめたのか?」
「夢見てた」
ふわ……
クゥルが 笑いかける
ノットは 膝を折ると クゥルの手を握る
「あのね……夢の中で精霊達と過ごしてたの」
「うん」
そしてね……もう1人の私と会った
指輪を渡してくれてね
「彼を……ノットを 守れるのはあなただけって」
「君は 君をみたんだね」
「私?」
クゥルが 気怠げに 顔を傾ける
過去の君だ
「ねぇノット……過去の私に戻ったら私 死んじゃうのかな?」
「ん?」
「今の私の記憶なくなるのかな……なんかやだな……ノット好きなの私なのに……違うクゥルに取られるみたいで」
クゥルの頬を 涙がつたった
「やだな」
「クゥル……」
ノットは クゥルを 抱きしめる
「やだな……」
「ああ……そうだな……嫌だな 僕もクゥルが 消えるのは嫌だ」
「うん……」
ノットの 服を握ると クゥルが 泣いた
「やだな……」
「大丈夫……だ」
無責任だ ノットは自分を責めていた
「クゥルすまない……僕は」
「ノット……好き」
ポス……クゥルが 胸板に顔をうめる
「だぁい好き」
「僕もだクゥル……」
ふたりは 寄り添ったまま 時だけが 流れた
「ノット……」
「なんだ?」
「お嫁さんにして……」
ノットは 目を見開いた
「私が消える前に……お嫁さんにして」
「クゥル……」
ノットは そのままクゥルと唇を重ねる
「愛してる……」
2人は動かなかった……動けない
唇を互いに重ねあい 繰り返し 繰り返し
「式をあげよう……」
ノットが 言った
「式……」
「結婚式だよクゥル……」
「いいの?私と……だよ?」
クゥルが すがった
「君がいい……君がいいんだクゥル……」
ノットは クゥルの 背を 慈しむように撫でる
「僕じゃ嫌かい?」
「ううん!ノットじゃなきゃ……いやだ」
クゥルは 両手で ノットの 首にすがった
「ありがとう……クゥル」
立てるかい?
「ん……」
クゥルは 立ち上がった
「朝ごはんは?」
ノットが ウインクする
「いいの……式あげたい……今がいいの!」
ノットは ふ……と笑うと クゥルの手を握った
神殿へ行こう
2人は手に手を取ってイリアの 神殿を 目指す
朝はやけに優しかった
周りを パンの匂いが 漂い
家からは談笑が聞こえる
子供連れの母親 楽しそうな笑顔
「私……子供ほしいな……」
「ああ……」
ノットは 静かにクゥルに歩調を あわせる
それだけでもう良かった
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