第八章

 第八章 受諾の儀


 クゥルは 店を出るなり ノットに かみついた

「どうして教えてくれないの?信頼してないの?」

「君を倒れさせたくなかった」

 ノットが下をむいた

 クゥルは グイッとノットの外套を引く

「守るのは嘘なの?ノットが 倒れたら私何にもできないのに!ばか!」

 グイッとさらに引く

「私は大丈夫だから」

 ノットも まもるんだから!

 見損なわないで

 そして ノットに キスを した

「もう少し信頼して!」

 ぽす……ぽす と ノットの胸板をなぐる

 ノットは キスをされた唇を 撫でた

「クゥル」

「これからはいいなさい!」

 言い切って

 クゥルも自分の 唇を撫でた

「お願い言って……ね?」

 クゥルの 瞳に溜まる涙 ノットは そっとクゥルの 頭を抱いた

「すまない……」

「謝らなくていい!すまない……が聴きたい訳じゃないの!今度やったらゆるさないんだからね!」

 言った クゥルの 唇を ノットが唇でふさいだ

「分かった!分かったから泣かないでくれ」

 悲痛な叫び

「だったら隠し事しないで!いい?おねがいよ!」

「ああ……」

 と……周りに人だかり

 取り巻くように輪ができていた

「姉ちゃん もっとやれー」

「兄ちゃんなさけないぞー」

 やんやの声援

 2人は真っ赤になって離れた

 なんだい もうおわりかい?

 魔法具の 老婆まで

 見物していた

「わー……」

 クゥルと ノットが 同時に頭を下げた

 すみません お騒がせして

 クゥルが ぴょこぴょこ頭を下げた

「良いとこなのに終わりかい?」

 大工らしいおじさんが 豪快に 笑う

「やれ!やれ!ぶちゅーとまではみられたんだからよー」

 酔っ払いの男性が 応援した

「すみません通ります」

 2人は輪をかきわける

「ヒューヒュー見ものだったぜ」

「良い詩がかけますねー」

 詩人が 笑う

 2人は宿へと飛び込んだ

「おかえり」

 宿屋の女将が笑顔で迎える

「どうしたの?2人とも真っ赤だけど」

「いえあの!」

 クゥルが 慌てて打消した

「そう?」

 小首を傾げる女将だったが 鍵を 渡してくれる

「ありがとうございます」

 ノットが 頭をさげた

「行こう」

 クゥルは ノットを 外套ごとひったてる

「新婚なのに ツインでいいの?」

「ち……あの!ちがいますから」

 ノットを引っ張りながらクゥル

「ゆっくりね……」

 女将は ヒラヒラと手をふる

 2人は部屋に戻るなり

 へたりこんだ

「もう……」

 半泣きクゥル

 ノットは 頭をこりこりとかいた

「すまない」

「わかったけど!ノット また顔色がわるいわ!」

 ノットの 顔色が優れない

 クゥルは即座に受諾の儀の必要を感じた

「受諾せよ」

 ノットの 胸に手をあてる

「待てクゥル」

 しかし魔力は確実にノットを 満たしていく

 クゥル!

 クゥルの 顔色に ノットが 震えた

「もういいやめろ!」

「やめないわ!あと少し」

 待て

 ノットが 倒れるクゥルを ささえた

 ノットの瞳の虹彩に魔力は 満ち満ちていく

「クゥル!すまない……」

 クゥルは 重そうに瞼をあげた

 よかっ……た

 くたり……全身から力が抜ける

 ノットは クゥルの 身体を抱き込んだ

「クゥル……」

 声が苦鳴にみちる

「クゥル」

 ノットは クゥルを抱き上げると ベッドへと運ぶ

「愛してる……」

 ノットは 思いを唇にのせた

 くぅ……くぅ……

 寝息をたてるクゥル

 ノットは 静かに涙を拭った

 

 

 

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