2節1話 対抗戦当日 VSラルゴチーム
――かくして、一ヶ月後。対抗戦当日がやってきた。
一年A組は訓練場に集まり、各々チームごとに固まってステージを囲んでいる。ステージ中央からは訓練用ダミーが撤去され、その代わり今はメーア先生が立っていた。
「これよりクラス内チーム対抗戦を開催する!」
その宣言を生徒達は拍手して歓迎する。
「あらかじめいつどことどこが当たるかは、私のほうで組み合わせを決めておいた。さっき配った用紙を確認するように」
手元の用紙を確認すると、さっそく最初の相手はラルゴとビビのチームのようだ。恐らくメーア先生の計らいだろう。
「最初からビビ達と当たるなんて、先生も粋な真似するよね~」
自分のものではなく、リィナは横からヴァルカの用紙を覗き見た。
「ほんとにな。しかもいきなり第一試合だ」
ヴァルカは顔を上げ、ステージを挟んでちょうど向かいに集まるラルゴ達のチームを見た。彼らもこちらを意識しているのか、目が合った。彼らのチーム構成はラルゴとビビ、そして彼らと仲の良い男子生徒二人と女子生徒一人。
「事前調査ではラルゴはこの一ヶ月、〈ファイヤーボール〉特化で鍛えてきたって話だから警戒しないとね」
マヤさんがすぐ後ろでしたり顔で腕を組んでいる。この一ヶ月彼女は魔道の特訓や勉強より、情報収集や作戦立案に力を注いできた。別の切り口でこの対抗戦に臨んでいるのだ。
「か、彼を中心に周囲でサポートする人達も……私は怖い……です」
シーナさんはおどおどしながら発言した。というか、緊張しすぎてどこか青ざめているようにも見える。
「……大丈夫。私達がついてる」
そうボソッと勇気づけるのはミーシャさんだ。その言葉にほっとした顔でシーナさんは「うん」と頷いた。
「〝あの魔道〟、ちゃんと使えるよね?」
リィナがニンマリとした笑顔を向けてくる。不安からの確認というより、楽しみだといった具合の期待を感じさせる確認だった。
「もちろん。そのために練習しまくったからな」
その答えを聞いて満足したのか、リィナはこくりと一度頷く。
そのとき、
「どう? 魔道書、役に立ったかしら?」
背後から笑みを浮かべながら、トレーユ先生がやってきた。してやったりといった顔だ。
「トレーユ先生……」
結論から言おう。トレーユ先生から借りた魔道書は、ほとんど役に立たなかった。
というより、完全にしてやられたのだ。
(このセンコー……熟練魔道兵向けの魔道書なんか渡しやがって!)
載っていたものはどれも上級以上の魔道ばかり。これなら素直に市販の魔道書を買うか、図書室で王道に初級者用のを借りておけばよかった。
脅されたことへの意趣返しだろう。
――が、
数十個載っていた魔道。そのほとんどが試したものの一度も発動せず失敗したが、たったひとつだけ出会えたのだ。
ヴァルカでも使える魔道に。
それがリィナの言う〝あの魔道〟である。
きっとトレーユ先生は、ひとつも習得できないだろうと思って、あの一冊を貸したのだろう。しかし彼女自身が言っていたように、魔道は人を選ぶ。唯一ヴァルカの詠唱に応え、発動したものがあったのだ。
「ま、被弾したら治癒魔道の〈ヒール〉飛ばしてあげるから、がんばってね~」
と手をひらひらさせながら、彼女は事前の打ち合わせがあるのかメーア先生のほうに歩き去っていった。審判兼回復役は、メーア先生と彼女のふたりのようだ。
そんな彼女の背中に、べーっと舌を出しているのはリィナである。
「べーっだ! ヴァルくんを甘く見たこと、後悔させてあげるんだから!」
お金を借りた上に、嫌がらせ目的で上級者用の魔道書を貸したことを知った彼女は、トレーユ先生にご立腹だ。
ちなみにヴァルカは先生に魔道を習得したことは言っていない。ネタバレは禁止だ。
「これより第一試合を開始する! 両者、ステージに上がれ!」
メーア先生の声にヴァルカのチームとラルゴのチームが、脇にある階段からステージに上がる。両端にそれぞれ並んで立ち、中央に主審である先生が立った。
「制限時間は五分。使用魔道は無制限。ただし違法な魔道は禁ず。お互い、準備はいいか!」
「「はいっ!」」
ステージ上総勢十名の生徒が、大きな声で返事した。
合わせて先生が端まで後退する。
「よろしい! 第一試合、スタート!」
その宣言とともに、対抗戦が始まった。
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