第8話(ウブス降臨…日本人Hの眼前に)
「Hさ~ん。ウブスです。迎えに来ました。」
と言ってヒカリは研究室のドアをノックした。Hは、
「有難う御座います。行きましょう。」
と言いながらドアを開けて出てきた。早く早く行きましょう、とばかりに張り切っている。研究所の駐車スペースまで歩いている時、
「後でまた話しますが、イラクウの戦争について何かお考えが有りますか?」
とヒカリはHの世界観を聞いてみた。
「チープの強烈な脅迫観念から始まったんじゃないですか。サタンは、地獄の闇に光が差し込んできて己の隠れ場所の闇が消え去ってしまう、という脅迫観念にいつも囚われているんじゃないかな。チープはそのサタンの系譜に既に入ってしまった風に感じますね。ま、何となくですが。」
とHは事も無げに答えた。
「Hさんはバリバリの理系の方ですよね。サタンとか地獄とか実在していると考えますか?」
とヒカリは不思議そうな顔をして聞いた。
「ウブスさん。あの世、天国、地獄、天使、悪魔、幽霊などのようなものは科学的に見ると存在しない、と言う人や学者さんまでもいますよね。でも本当は、あの世のようなものは、今のところ科学では扱い切れないだけで、存在するとも存在しないとも断定出来ない、というのが正しいと思うんです。」
と答えた。するとヒカリは、
「私も同感です。」
と頷き、
「さて、この車です。」
と言って、Hに乗るようにドアを開けると、Hはさっと乗り込んだ。
「僕が今このように存在している、という事だって不思議でしようがないし、死んだら全てがゼロになる、と簡単に断定出来る人が多いのがもっと不思議ですよ。」
とHは走っている車の中で気楽にしゃべって、にこにこしている。
「なるほどね。予想どおり、理系の研究者さんには珍しい方ですな。」
とヒカリは嬉しそうに言った。
「僕の研究者仲間でも、僕から見ても優秀な人ほど同じように考えるみたいですよ。」
と応えた。しばらく走ると中央高速に入った。ヒカリは、
「混んでないようです。ちょっと急いでも平気ですか。お許しをいただければ、ウブスコーという私の双子の兄弟も拙宅で同席してもよろしいかな?」
「はい。全く構いません。」
とHはあくまで気楽で、何の頓着もない。軽いのか猜疑心がないのか。ヒカリがHの心をのぞいて見ても、何のこだわりもない淡い暖かい光しか見えない。ヒカリは〈Hさんは見っけもんだ。前世でも会ってるな。いや、所謂弟子だ。〉と宿明通で確認して嬉しくなった。ヒカリの自宅に到着するとコーが(原子体になっていて)Hを迎えた。
「いらっしゃい。お待ちしておりました。私はウブスコーといいます。ここはヒカリとの共同の持ち家なんですよ。」
と言って、Hを家の中に案内した。
三人はかなり広いリビングの大きなテーブルに座った。既に、ビールやワインやウィスキーなどが用意されていた。オードブルなのか酒の肴なのか、多目に用意してある。〈初対面だから、緊張を和ませてから、本題に入ろうという心遣いかな?僕は緊張する経験はないけどね。それとは関係なく、アルコールはかなり好きだから、ラッキーかもね〉とお気楽なもんだ。
ヒカリは、
「まず出会いの乾杯をしますか。」
とHを誘うと、
「いいですね。これも多生の縁ですかね。まずはビールからでいいですよね。」
と図々しくも、用意されていたコップに勝手に三人にビールをついだ。 ヒカリもコーも笑って、Hの言うとおりにした。三人そろって、
「カンパーイ!」
と祝杯を挙げた。これから、どんな展開になるだろうか。世界のカオスがどうなって行くのか…
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