彼氏より私!?




私は夢でも見ているんだろうか…?

いや、あれか、妄想の中か?

だって梨竹さんが私の家で、私の服を着て、無防備な姿で存在するなんてありえない…

妄想の中でならいっぱい見てきたから…そうだ、やっぱりこれは妄想の中なんだ。


こんな感じで思考回路がイカれてしまった私は、今、シャワー中である。

冷静を保つには、こう考えるしかなかった。

しかし、すぐに現実だということを思い知らされる―――




がちゃ……


シャワーを浴びただけなのに、何故か疲れ切っている私は、岩のように重く感じるドアをゆっくりと開く。


水が飲みたくて、そして現実逃避するかのように冷蔵庫に直行する。



「梨竹さん、水飲む?」




……返事がない。


「飲みたいです!」みたいな返事が返ってくると思ってたのに、部屋はやけに静かで――

耳を澄ますと、スー…スー…と、穏やかな寝息が聞こえてきた。



「…寝てる?」



ベッドの方に視線を向けると、スヤスヤと気持ちよさそうに梨竹さんが寝ていた。

掛け布団も掛けずに、寝落ちてしまったような姿だった。



「あぁ…もうだめかも」



私が弱音を吐くのも無理はない。

だって、腹チラしてるし、髪の毛乱れてるし、可愛いし、寝てるし、鎖骨綺麗だし、可愛いし…。

私の理性鋼だと思ってる?

ちがうよ?今にもちぎれそうな糸だよ?



(こんな無防備な姿で寝るのが悪いんだから…)


寝ている梨竹さんに近づく。



つんつん…


可愛い後輩のお腹を人差し指で触っています。


むぎゅ…


可愛い後輩のお腹を摘んでいます。


ぺち…


可愛い後輩のお腹を軽く叩いてま――



「…んっ、おなか、たたかないで」


「あ、起きちゃった…」



寝てるのをいいことに、梨竹さんのお腹で遊んでしまった。そして、起こしてしまった。

私はなんてことを…。



「みほさん、いっしょにねましょ〜」



何も気にしていないのか、寝ぼけているからあまり気に留めてないのか、お腹で遊んでたことを責められることもなく、ご褒美のような言葉が梨竹さんの口から出てきた。




―――シングルベッドに2人並ぶ。

当たり前に狭いし、近い。

わたしの心臓の音、聞こえてないかな…?



「みほさん」


「ん?」


「ぎゅーってして」


「………………、へ?」



この子は、わたしを殺そうとしてる?と思うくらいの破壊力。



「こ、こうですか?」


無意識に敬語になっていた。

そりゃあ、脳みそパニックだもんね。



「えへへ、みほさんにぎゅーってされたぁ」


「なっ…!はぁ…かわいすぎる…」


心の声が漏れる。


私の口からこぼれ落ちた本音が、聞こえてたのか聞こえてないのかはわからないが、梨竹さんがこちらに身体を向けてきた。

私と彼女は向かい合う状態になる。



「美穂さんの隣、おちつく」


「ぷにぷにかわいい〜」


「ずっとこうしてたいなー」


私の手を握ったり、ちらっと目を合わせたり、胸元に潜ってきたりしながら、ポツポツと独り言のように話す梨竹さん。


もう酔いは覚めてるような気がする。

なのに頬はピンク色のまま。



「私も…ずっとこうしてたいよ…」



溢れ出てくる感情。

止めないといけないのに―――





「彼氏より、美穂さんの方が好き」




ん?


この子、今なんて言った?


かれしより、みほさんのほうが、すき?


ん?


彼氏より?


好き?





彼氏より私!?



「そ、それってどういうこと?」

「ん?…いや、まぁ…冗談か」


「…スー…スー…スー…」


「え、寝たの…?」



私の胸元あたりに顔をうずめているから、表情とかわからないけど、規則正しい可愛い寝息が聞こえてくる。



「はぁ…」



幸せな状況なのにため息がでる。

この子に振り回され過ぎだよわたし…。







結局、寝てる彼女を起こすわけにもいかず…


私は、あの言葉の真意が気になって眠れるわけもなく…ひとり、意味もなく悶々と考えを巡らせる。

だが、眠気の限界が来たようで、いつの間にか眠りについていた―――















貴女の好きは、私と同じですか…?









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