セクター07は痺れてる

[スキル〈射手〉を獲得しました]

[スキル〈刃閃〉を獲得しました]


 セクター07に足を運ぶ道中、何度もラストハウンドが出現したが何の苦労無く倒す事が出来ている。

 それどころか、順調に狩りを続けているお陰なのか、〈射手〉や〈刃閃〉とスキルを二つも獲得した。


 しかし、一向にが上がる気配が無い。


「もしや、このゲームレベルの概念無いのか?」


 視界に浮かぶUIを総当たりしていると、なんとか自身のステータスを閲覧する事が出来た。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


名前 ハク

武器 ブレードガン

防具 (頭)なし

   (胴)市民の服

   (足)サンダル

基礎スキル 〈挑発者〉〈射手〉

技術スキル 〈刃閃〉

体力 20

エナジー 10

銃弾攻撃力 5

切断攻撃力 10

打撃防御力 3


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


ブレードガン

銃弾攻撃力 5

切断攻撃力 10

消費エナジー 1

概要 銃とナイフが合わさった銃剣、エネルギー弾なので実弾と違いエナジーを消費する。


市民の服

打撃防御力 2

概要 ごく普通の服、身を守るのには心許ない。


サンダル

打撃防御力1

概要 ごく普通のサンダル、身を守るのには心許ない。


〈射手〉

分類 基礎スキル

概要 銃弾を放つ武器で攻撃する時、銃弾攻撃力を+10%上昇する。


〈刃閃〉

分類 技術スキル

消費エナジー 2

概要 刃を持つ武器を所持時にのみ使用可能、相手に刃を突き刺し攻撃して切断攻撃力の130%を与える。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 この銃弾攻撃力や切断攻撃力はブレードガンのもので、打撃防御力は市民の服とサンダルの合計値となっている。

 基礎のステータス上昇は装備でしか上がらないが、スキルを獲得する事で更に上乗せでバフを乗せる事が出来たり、新たな技を獲得する事が出来る……と言った所か。


 この”基礎スキル”と”技術スキル”の違いは、多分パッシブかアクティブかの違いなんだろうな。

 基礎スキルには無かった消費エナジーの表記が技術スキルの〈刃閃〉にはある。

 

 余談だが、詳細を調べてみれば、エナジーは1秒に1回復するポイントで、技術スキルや特殊な武器に使用する行動エネルギーっぽい。

 後々数々の技術スキルを獲得するとしても、エナジーの強化は必須なのかもしれないな。

 

 ……と、ここまでステータスを見てきても、キャラ自体のレベルの数値が全く無い。

 ただ雑魚狩りすれば強くなるってだけじゃなくて、いかに装備を強くスキルを獲得するかが強くなる秘訣と見た。


 この育成システムは一部のプレイヤーだけの”俺強eeee”を抑制すると同時に構成次第でどんな相手にも勝つ事が可能になる良い塩梅だと俺は思うな。

 装備やスキルの質が上がれば誰でも強くなるし、それらの重要性が更に高まるだろう。

 ただプレイヤーの強化を抑制する影響で”強くなった感”が薄いのは賛否両論の原因となるかもな。


「なんて、考察してたら着いたな」


 ――――――目的の場所、《セクター07》へ。


「……にしても、どれだけ雷降ってるんだ? 自然現象にしちゃ落雷が起きすぎてるぞ」


 《セクター07》は塔のような建造物であるが、その遥か上空からように雷を降らせ続けている。

 確かに遠目でも稲妻が迸っていたが、まさかここまで雷鳴轟く場所とは思いもよらなかった。


「私のような昔のロボットは《セクター07》と呼んでいるが、人間は別の名前で呼んでいた――――――《電導塔エレクトタワー》と」


「そりゃ痺れそうな名前だな。見れば分かる」


 入口の前に立った瞬間、足元にまで響く重低音が鳴り響き、金属の床がビリビリと震えていた。

 塔の外壁は黒鉄色で、表面を這うように無数の青白い稲妻が走っている。

 見上げても頂上は見えず、雲の中に吸い込まれていた。


 塔の扉は閉ざされていない。

 まるで招き入れるように、入口の隙間から内部の光がちらついている。


 俺は戦闘モードを起動してブレードガンを構える。

 一歩、また一歩と中へ足を踏み入れるが、内部は予想以上に静かだった。


 だが、床のあちこちに焼け焦げた痕があり、壁面には焦げ付いた機械の残骸が無数に転がっている。


「当然ちゃ当然だが……何か居るな」


 静寂の中で、不意に羽音がする。

 だが、風を切るというよりは――――――機械の羽ばたきと形容した方が良いだろう。

 次の瞬間、天井近くで青白い光が爆ぜた。


 暗闇の中に浮かび上がったのは、鋼鉄の翼を広げた巨大なフクロウだった。

 両目は発光し、雷を溜め込んだように瞬いている。

 羽毛の代わりに金属片のようなプレートが重なり、飛び立つたびに電磁の火花を散らしていた。


SM-Owlストームオウルが出現しました]

[警告:《電導塔》の電磁干渉により、エナジー回復速度が低下します]


「電磁干渉だと? 制限付きエリアって訳か」


フクロウは静かに首を傾げた――――まるで観察するかのように。


 その視線が合った瞬間、両翼が閃光を放つ。


 轟音と共に雷光が床を焼いた。

 反射的に横へ跳び、転がる。

 髪が焦げる匂いが鼻を掠める。


「容赦ねぇな」


 俺はブレードガンを構え、照準を合わせる。

 しかし、ストームフクロウの動きはあまりに速い。

 音もなく滑空し、再び頭上を取る。


「〈射手〉の補正アリでどこまで削れるか……」


 引き金を引いて狙い撃つ。

 エネルギー弾はフクロウの翼を掠め、青い光を散らした。

 その瞬間、電撃が逆流して銃身が痺れる。


「……っ?!」

 

 ダメージは無いものの、その影響か一瞬だけでも動きを止めてしまう。


 高所から、金属の鳴き声――――――ガァァ、という機械的な咆哮を響かせる。

 続けざまに放たれる雷弾が床を穿ち、硬直した俺を的確に狙って来る。


「〈グラヴィティ障壁〉」


 ケロスは俺の前に立ち、球状のフィールドを展開する。

 その雷の攻撃を弾き身を守ってくれた。


「有り難い!」

 

 俺は短く感謝を伝えつつ、再び距離を取る。

 

 避けながら、タイミングを見計らう。

 ――――今だ。


「〈刃閃〉ッ!」


 エナジーが減り、刃が閃光を纏う。

 飛び込んだ瞬間、翼の下を潜り抜け、胴体へ突きを叩き込んだ。

 金属の外殻を貫き、炸裂する火花を散らす。


 ストームオウルが悲鳴を上げ、激しく羽ばたいた。

 しかし、辛うじて動きを止めず再び攻撃しようと体勢を立て直そうとする。


 そんな暇与えないがな。


「〈グラヴィティ砲〉」


 ケロスはその変形した右腕の砲口から紫色の銃弾を放ち、 その着弾点の空間を抉り取る。

 重力によってストームオウルの身体を歪ませ、弱った機体を更にグシャグシャに凹ませた。


 ストームオウルは声にならない程の金切り声を上げながら放電しつつ自爆する。


「うおっ……!」


 咄嗟に身を低くし、飛び散る破片を避ける。

 煙の向こう、ストームオウルは既にストームオウルでは無くなっていた。


[ストームオウルを撃破しました]

[素材アイテム:鋼鉄の翼×10、電線×5]

[スキル〈雷抗体〉を獲得しました]


「その弾無茶苦茶強いな……そりゃ、こんな荒廃した惑星でも生きていける訳だ」


「いや、これでも心許ない」


 え?

 ………聞かなかった事にしよう。


「そ、そうか。それで……新しいスキルだな」 



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


〈雷抗体〉

分類 基礎スキル

概要 雷属性攻撃によるダメージを20%軽減し、電磁エリアでのエナジー回復速度低下を半減する。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「ここじゃ必須スキルじゃねぇか! 有り難い」


 フクロウの残骸が静かに火花を散らしながら崩れていく。

 羽のような金属片が、まるで光の粉となって消えていく様子は、どこか幻想的だった。


 このドロップした電線は有り難く頂戴しよう。


「《セクター07》――――いや、《電導塔》か。ここはただの建造物じゃなさそうだな」


 俺はブレードガンを再装填し、静寂の満ちた内部へと足を踏み入れる。 

 床は格子状の鉄板で、歩くたびに青い光が足元を走る。

 

 まるで、誰かに監視されているような錯覚に陥るが――――気の所為だと思いたいな。


 塔の構造は外見以上に入り組んでいて、縦軸を中心に何層にも重なっているようだ。

 壁を這うケーブルは心臓の血管のように脈動し、稲妻が時折内部を走る。

 天井から一筋の雷が落ち、床に穿たれた焦げ跡が煙を上げた。


「雷そのものが防衛システムって訳か。えげつねぇ」


 落雷の直前、地面に予兆となる円形の光が帯びるのを確認出来た。

 それさえ分かれば、落雷を予測して通る事も容易い。


「へっ、楽勝」


「安堵するにはまだ早い」


「分かってるって」

 

 塔の中心部には巨大な昇降機があった。

 だが、エネルギー供給が止まっているのか、全く動作していない。

 俺とケロスは脇にある階段を見つけ、上層へ向かう事にした。


 登るごとに空気が薄く、金属臭が強くなる。

 階段の途中、壁のスリットから外の雷光が漏れ、暗闇を断続的に照らすが―――――その度に浮かび上がる影が、まるで動いているように見えた。


「……いや、気のせいじゃねぇな」

 

 俺がそう呟くと同時に、金属音が耳を打つ。

 階段の上方から、何かが滑るように降りてきた。

 

 その姿は蜘蛛にも似ていたが、脚の一本一本が金属のアームで、節々からは火花が散っている。

 中央のコアには赤いセンサーライトが灯り、俺を正確に捉えていたのだ。


SP-Spiderスパークスパイダーが出現しました]


「クモか……嫌な見た目してんな!」


 ブレードガンを構え、引き金を引く。

 エネルギー弾が金属の脚を貫くが、火花と共に弾かれた。


「硬っ……!?」


「外殻の装甲板は絶縁素材だ。銃撃は効果が薄い」


「なら近接で!」


 俺は懐に飛び込み、〈刃閃〉を発動する。

 光の残滓を引きながら突きを放つ――――――だが、蜘蛛の腹部から電撃が逆流し、迎撃されてしまう。


「――――っ! があぁっ!」


 全身が痺れ、膝を突く。

 一発の電撃を喰らっただけでも、体力の大部分を削り取られてしまった。

 その隙を逃さず、スパークスパイダーは天井へ跳び上がり、圧倒的な速度で金属の脚が空気を裂くように再び降下してきた。


「ケロス!」


「〈グラヴィティ砲〉」


 ケロスの右腕の砲口が閃光を放ち、空間を歪ませる。

 そのお陰か蜘蛛の降下軌道が僅かにずれる。

 俺はその隙を見逃さず、再度ブレードガンを構えた。


「落ちろッ!」


 俺は連射する。

 銃口から迸る青弾が脆くなった脚部を削り取り、バランスを崩させる事に成功した。

 床に激突した瞬間、俺はその懐へと跳び込む。


「〈刃閃〉ッ!」


 光刃が腹部を貫通、スパークスパイダーが内部から爆ぜ青白い閃光を撒き散らして崩れ落ちた。


[スパークスパイダーを撃破しました]

[素材アイテム:装甲板×3、焦げた回路×2]


「こいつも中々厄介だったな……」


「回復を」


[低級体力回復ポーションを譲渡されました]


 ケロスは怪我を負った俺の様子を見たのか、回復ポーションを受け渡してくれる。

 何やら何まで頼もしいし、きっとケロスが居なかったら今頃やられていただろう。


「サンキュー」


 それでも目的の素材はゲット出来た。

 残りはエネルギーコアだけだが――――――


「残りのエネルギーコアは、実は誰が持っているか予想が付いている。だが……」


「だが?」


 ケロスが壁に腕を当て、内部データをスキャンする。

 青い光が彼の視界に走り、しばらくして淡々と告げた。


「中枢に”コントロールユニット”の反応。塔全体を制御するAIの存在がある」

 

「って事は、そいつが持ってるのか」


「その可能性が高い。そして反応は二つ。ひとつは塔の最上部、もうひとつは……地下層だ」


 二つ……分岐ルートだと有り難かったが、その様子だと――――――どっちも持ってそうだな。

 上と下で一つずつ、どうやらここの制作者は簡単にクリアさせる気は無いらしい。


 どちらも明らかに簡単じゃ無いエリアなのは目に見えて分かっている。

 そして結局はどっちも攻略しなければならない。

 

「上は雷が集中してるだろうな。落雷だの電磁障壁だの空中戦だの……もう嫌な予感しかしねぇ」

 

「地下は通信遮断と暗闇、当然だが敵の感知も制限されるだろう。どちらも危険だ」

 

 選択肢が地獄か地獄ってのはどうにかならないのかと冗談でも言いたくなる状況だが、胸の奥は妙に高鳴っていた。

 単なるゲームのはずの“Multi Horizons”で、こうして決断を迫られる瞬間が、たまらなく楽しい。

 

「……まずは地下だな」

 

「理由は?」

 

「単純に、上に行くほど雷が増すだろうから後回しにしたい。あと俺の経験上、こういう塔は下に重要ながある可能性が高いんだよな」


 ケロスは一瞬だけ沈黙し、何処からか取り出したランプを光らせた。

 

「了解。地下層へのアクセスルートを検索――――非常階段を発見。電力は落ちているが、物理的な通行は可能だ」


「よし、なら行こう」 


 俺達は雷鳴が遠ざかる方――――――塔の地下へと足を進めるのだった。

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