第23話 小さな光

 翌朝、亮はベッドの中で携帯を握りしめていた。


 昨夜の真司との会話を思い出すたび、どうしようもなく胸が熱くなる。


「……本当に大丈夫かな、俺たち」


 いろいろな漠然とした不安は完全には消えていない。けれど、それ以上に「離れない」という約束が力になっていた。



 一方、真司はレッスンスタジオで汗を流していた。


 鏡越しに自分を見つめると、疲れ切った顔の奥に、昨日までとは違う光が確かに宿っている気がした。


(あいつが俺を信じてくれるなら……俺も、自分を信じなきゃ)



 その夜、二人は久しぶりにビデオ通話を繋いだ。


 画面越しに見える真司の笑顔はぎこちないけれど、どこか柔らかかった。


「……なんか、少し痩せた?」


 亮が心配そうに言うと、真司は苦笑した。


「いや……頑張ってるだけ。お前に胸張れるように」


 その言葉に、亮の目頭がぐっと熱くなる。


「無理しなくてもいいって、何度も言ったのに……」


「でも、無理してでも前に進みたいんだ。お前と一緒にいるために」


 言葉は少し不器用だったが、その真っ直ぐな眼差しに嘘はなかった。


 亮は画面に手を伸ばし、まるで触れられるかのように指先を重ねた。


「……俺も、頑張る。お前と一緒にいるために」


 二人の間に流れる沈黙は、もう以前のように苦しいものではなかった。


 それは、互いの存在を確かめ合うための優しい時間だった。


 窓の外には街灯が滲み、暗闇の中に小さな光が灯っている。


 まるで二人の未来を象徴するように。


 ――その光はまだ弱い。けれど、確かにそこにある。



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